方言51個を取り上げただけのサイトからスタートしたのが1998年でした。最初の5年間程はまったく更新しませんでしたが、それ以後は毎年更新を続け、取り上げた方言を徐々に充実させてまいりました。

岡山弁の動詞絡みの規則性を調べていると岡山弁の一番の特徴が動詞の語尾にあるのではないだろうかと思うようになりました。現在形は元より現在進行形、過去形、完了形、未来形、がありますので。そのあたりの事は岡山弁の特徴と題して別に記述しています。

また当サイト立ち上げ時のページを調べてみますと方言と民俗のページが別々にあったようなのですが、いつの間にか民俗のページを取りこぼしていたようなので、岡山の民俗と題してこちらに再掲してみました。

さて、方言は、時代によって解釈も違っています。江戸時代に書かれた方言辞典の物類称呼では、京都言葉が標準語で東国言葉は方言の扱いでした。残念ながら岡山県が都になった事はありませんので、いつの時代も岡山言葉は方言でした。

岡山言葉と言っても、岡山県は江戸時代まで、備前(南東部)・美作(北東部)・備中(西部一帯)の三国に分かれていましたので、 これらの地域により言葉にかなりの違いがありました。集まった方言を並べてみますと南北に連なる備前・美作・鳥取の方言はかなり類似があるような気がしますし、東の播州方言と西の備中方言はそれなりの違いを持った言葉になります。だから備前からすれば備中弁より鳥取弁や出雲弁の方が分かり易かったりする事があります。

岡山の方言と申しましても、ここでは備前方面で昭和初期から昭和三十年代に使われていた言葉を中心に取り上げています。 昭和三十年代はテレビが登場していましたが、まだまだ高価で一般に普及していませんでした。 やがて昭和四十年代になるとテレビの普及に伴い、言葉の興廃の速度が速くなり、覚える先から消えてゆくようになりました。ですから、そのような言葉は多少の例外を除いては取り上げていません。

備前の方言も歴史と無関係では無いようで、明治時代の半ば岡山まで鉄道が通り山陽鉄道から山陽本線へとなるにつれ、それまで活発だった海運が衰えてきます。海運の中継地であった吉井川河口の西大寺や備前南東の港町牛窓は古い形の方言が残っていたりしますが、鉄道が通った備前北部の方では東西の物流の影響か関西方面の言葉が結構入っていたりします。

備前以外の地域、備中や美作につきましては原則、その地域出身者の話を元にするようにしていますが、それが無理な場合にはなるべく出典を明らかにするようにしています。備前と申しましても、邑久から和気にかけてを標準としています。場所について言及していない場合には備前の方言で、それ以外の地域につきましては場所を記載するように心懸けたつもりです。記載は私の記憶(一人称)が最優先で、次が人から聞いた場合(三人称)、書物などの記述は最下位の取り上げ方しかしていません。

旧仮名遣いの「わ」行に「わ・ゐ・う・ゑ・を」があります。これを学校では「わ・い・う・え・お」と発音すると教えられます。しかし現実には「い」と「ゐ」、「え」と「ゑ」は別の音でした。「ゐ」の音は「う」と「い」を同時に発音し、「ゑ」の音は「う」と「え」を同時に発音するような音になります。そういう理由から本文では「ゐ・ゑ」についてある程度言及している箇所があります。

辞書にあるから方言では無い、辞書に無いから方言だ、というような取り上げ方の基準はありません。ただ、いったんここに登場させた言葉の一割強は、その後見直しの際に各種の理由により削除しています。また、語彙は「五十音順」に並べていますが例外もあります。もしもお探しの語彙が見当たらない場合にはブラウザーのページ内検索の機能を使って調べると見つかるかもしれません。

方言
意味
用例
あおのけ あおむけ(仰向け)の意。 ****
あかん 駄目だ、の意。

使用頻度は「おえん」ほど高くないと思われる。
あかんがや(駄目じゃないか)。
あくち 口角炎の事。
アクセントは無いか、「ち」にある。

体力の低下とは無関係である。
シモヤケの一種と考えた方がいい。
くちゅーねぶるばーしょーるけーあくちが切れるんじゃ(口をなめるばかりしているから口角炎を起こして口角が切れるんだ)。
あーさん 正式には「あんさん」。訛って「あーさん」となる。あまり親しくない男性に使う二人称「あなた」の意。親しい男性に使う2人称は「おまえ(おめー)」。少し若い男性の二人称としては「にーさん(にいさん)」を使う。

この辺りの表現は全国区かと思うが一応挙げておく。
人称には、男性・子供・親しさで使われる言葉が違う。

女性用2人称にはそれぞれ「ねーさん」、「あんた」。 子供用2人称には「僕(男児用)」「じょうちゃん(女児用)」。
あげる 嘔吐する事。
あるいは「げーがでる」とも言う。
アクセントは「げる」にある。

●「えずく(吐く)」とは昭和40年代に「めばちこ」よりやや遅れて関西方面から岡山に到着した言葉。
いたんだもんをくやーあげるねぇー(腐りかけた物を食べれば嘔吐するだろう)。
あしたり 明日、の意。
アクセントは無し、あるいは「り」にある。

ちなみに、昨日は「きにょー」、一昨日は「おとつぃー」と読む。

この言葉は今日を起点にしているが、今日でない特定の日を起点にする場合は「あけのひ」と云う。
●あしたりゃー雨がうだろーぜー(明日は雨が降るだろう)。

●おおみずがあったあけのひにがけがくずれた(洪水の翌日に崖崩れ)。
あずる (1) 眠ったままあちこちに転げ廻る事。

(2) 苦労するの意。

アクセントは「ず」にある。
(1) わりー夢をみてあずりもーた(悪夢をみて【眠ったまま】輾転反側した) 。

(2) 旅行の途中でさいふーおてーてあずりもーた(旅行の最中に財布を落として苦労した)。
あたり 体の突出部の一部が赤く腫れたり、痛むようになったりする事。足では靴ズレなどの場合が多いが、腸骨などでは褥創の前触れだったりする。

アクセントは「り」にある。
きにょーなごーありーたけー、足がいとーてなぁ(昨日長く歩いていたので、足が痛くなったよ)。

あんた、そりゃーあたりができたんぞな。
あたりがけ 何かに腹をたてて意地悪する事。
備前方言との事(*1および*2)だが、未確認。
備中方面では老人語としてわずかに残るよう。
夜這いで複数の男が行き会った場合、事が成就しなかった男の方では娘の家の井戸に籾殻や油を投げ込んで意地悪をしたが、これを「あたりがけ」と云った(*3)。
「仕返し」「八つ当たり」「逆切れ」といった意味。
あて 酒の肴。
アクセントは「て」にある。
「酒のあて」とも云う。
あてをなんにしょーかの(酒の肴を何にするかな)。
あてっぽこ あてずっぽう。
アクセントは「てっぽ」にある。
あてっぽこばーゆーめーに、ちーたぁ勉強ぅせー(いいかげんな事ばかり言わないで、少しは勉強しろよ)。
あのけんだまーとる 仰向けにひっくり返る、あるいはひっくり返って手足をジタバタさせている状態。

乳幼児がひっくり返った時によく使われた。

仰向けになる事を「あおのけ」と云うから、本来は「あおのけだま」なのでしょう。これから二番目の「お」が抜け落ちて「あのけだま」になったのでしょう。
亀さんがあのけんだまーとっとる。
あまる 腐る、という意味との説が多いが、厳密にはそうでは無い。

備中〜備前南部(児島方言 *2)の方言。
備中の中国山地でも使われる。
備前では児島以北では「すえる」を使う。

アクセントは「る」にある。
●リンゴがあまる。
●飯があまる。
*板があまる。
*柱があまる。

これらの内●印とは云うが、*印とは云わないとの事。
つまり「あまる」とは「醗酵する」という意味が正解のようだ。
あやくる 操る事。
「あやつる」と言っても猫をじゃらしたりする事。
アクセントは「く」にある。

関西方面でも使われていたようだ。
●うめーげに、えてこーを、あやくりょーらぁ(上手にサルをあやつっているなぁ)。

●あかごが毛玉をあやくりょーる(赤ちゃんが毛玉とじゃれている)。
あらから 最初から。
「はなから」を使うようになる前は「あらから」を使っていたかと。
アクセントは前の方の「ら」。
あらからうそばーつきょーたんか(最初から嘘ばかり言ってたのか)?
あらつか 物事を乱暴に扱うという意味の形容動詞
アクセントは「ら」にある。
犬をあらつかにしょーりゃーかぶられるんじゃーけ(犬を乱暴に扱っていると咬まれるんだから)。
ありんご 蟻、の意。「ありんこ」とも。
アクセントは「ご」にある。
昆虫
あわす 渋柿の渋抜きをする事。
アクセントは「わ」にある。
この柿ゃまだあうぇーてねーけー食べられん(この柿はまだ渋抜きしてないから食べられない)。

あんき

気楽。

 

あんごぅ
あんごう

●阿呆、の意。
●一説によれば山椒魚の事。口を開けたまま、ボーとしている状態。

●かなり強い意味で使われていました。関西における「馬鹿」と同じ感覚かな。
そのため意味を弱めるように、あんごさく【あんごうさく】・あんごたれ【あんごうたれ】などとして用いられました。
これも「ばか」より「ばかもん・ばかたれ」の方が使いやすい事と同じでしょう。

【類語】あほう・あほーだま ・あほーたれ。

谷啓主演の「図々しい奴」という映画の続編の中で「あんごたれ」が使われています。

あんさん

「あなた」の意。「あーさん」を参照の事。関西方面でも使う。

 

あんじょう

元気、健康。

●あんじょうやってーよ(元 気でね【別れの言葉】)。

あんばよう
あんばよー

●すっかり。
アクセントは「よう」にある。
●【参照】「ほどよう

●あんばよー、銭ねーなった(すっかり銭が無くなった)。

●【遊びほーけていたら】あんばよー、夜ん、なってしもーた(すっかり夜になった)。

いがいが・
いごいご

稲刈りした後「いが」が服の中に入ってかゆい様。その他「いが」のために出来たと思われる 赤いミミズ腫れを「いがいがが出来た」と云う。「いごいご」はかゆみのために体をくねらせる様。転じて体をゴソゴソ動かす事。

いがいがするけー風呂へへーらぁ(かゆいから風呂へ入るよ)。いごいご動くなぁ。

いかる

埋まる、の意。
アクセントは「か」にある。

【注意】「埋める」では無い。その場合は普通に「いける」と言う。
「いける」が他動詞で「いかる」は自動詞。

● はたきょーあるきょーったらじるーて足がいかってしもーた(畠を歩いていたら、地面がぬかるんでいたので足が地面に埋まってしまった)。

●ここで崖がくずれてきて人がいかってしもーた。

いがる

●叫ぶ、わめく。
アクセントは「が」にある。
●【参照】おらぶ
大人では「おらぶ」、子供では「いがる」を使っていたかと。
思うに、「いがる」には意地を言う(駄々をこねる)意味も込められていたかと。

いがるな(わめくな)。

なにもそねーにはぶしゅーむぃーていがらーでもえーが(何もそうやって歯茎をむき出してわめかなくてもいいだろ)。

いがやる

作物がうまく育たない事。いがやって育つ、などと言う。まったく育たないのではない。病害虫のために矮小な成育をする場合が典型。
アクセントは「る」にある。
転じて、子供が親の言う事を聞かない・不良になる場合などにも使用されるようになった。

●ムギの穂が黒くなってすっかりいがやってしもーた(昔々、麦穂が黒いカビのような物質に侵されて結実不能になっていた)。
---- 黒くなるからこれを「からすむぎ」と呼ぶのは方言なのだそう。
●あそこの息子は、ほどよう、いがやってしもーたねぇ(あそこの息子はすっかり不良になってしまったねぇ)。

いきのう・
いきのー

直後、の意。
アクセントは「きのー」にある。

●くぅーたいきのーに寝ると牛になるんじゃ(食べた直後に寝ると牛になる)。
●焼いたいきのーじゃけーうめーわ(焼いたばかりだからおいしい)。

「ばー」で置き換えても同じ。

いしなご・
いしやり

女児の遊びで、複数の石を地面にばらまき、その中の一つを投げ上げて、落ちてくる石をつかみ取る間に、同じ手で地面の石を出来るだけ多く拾って、順に拾い尽くす遊び。落ちてくる石をつかみ損ねると、拾った石は元に戻さなければいけない。
アクセントはそれぞれ「なご」と「やり」にある。

女児の遊びとは云え、結構面白いので男児も遊んでいた。

いじましい

怖いわけでも無いのに、背筋がゾクッ、あるいは体がジーンとした時に発する言葉(1),(2)。適当な標準語は無い。
アクセントは無し、あるいは「しい」にある。

手・脚・体がむずむずするようなイライラ(3)。

(4) は近年になって関西方面から伝わってきた言い方。

(1) 曇り硝子を爪で引っ掻く音を聞かされて。いじましい音をたてなー(背筋がゾクッとするような音をたてるな)。

(2)-a ゴミ箱を開けて一面のゴキブリを見て。いじましい程のゴキブリじゃ(背筋がゾクッとする程たくさんゴキブリがいる)。

この意味で「気色悪い」だけを取り上げると「気色良い」という意味の場合は説明不能な事態になる。

(2)-b 【赤ん坊を見ながら】いじましー(頬ずりしたい程かわいい)。

上記の例は、多分女性でないとわからない感覚のようなので、男性用の例文を一つ。

(2)-c 【すごい美人を見ながら】いじましゅーなるほどのべっぴんじゃー(ぞくっとするような美人だ)。

(3) 釣り場に着いて準備していると、いつもと違って何故か荷物の紐がほどけなくなっている。釣友はすでに何か釣り上げている様子。でも荷物がほどけない。手がむずむずして来た。こういう時に「いじましー!」と言う。苛々してもむずむずを感じない人は使いません。

(4) もちろん人の性質を表現する「こせこせした・ちまちました」という意味でも使う。

いたば いかにも関西弁のようだが、料理店の仕事場という意味では無く、一般家庭の台所という意味。板場にはカマドや水瓶が土間に置かれ、その一隅には食事などをするための板ばりの床を持つ空間があった。土間のカマドの消滅とともに本来の意味での「いたば」は無くなった。その後、台所の事を「しょたいば」と言うようになる。東国方言では「勝手」と言ったりする。

 

いたむ

●傷が痛むのでは無く「新鮮な食物が古くなる・腐る」事を言う。
「いたむ」を「腐る」意味に使うと標準語の「痛む」と紛らわしいと思われるかもしれないが、心配無い。
アクセントは「た」にある。

●傷が痛む -> 傷が「はしる
●頭が痛む -> 頭が「わるい
●腹が痛む -> 腹が「にがる
●足が痛む -> 足が「たがう

などと「いたむ」を「痛い」意味で使う事はほとんど無かった。

●「いたんだ」食べ物は、まだ食べられるかもしれないが「すえた」食べ物は食べられない。
【参照】すえる

梅雨時ゃ食い物がいたみやすい(腐りやすい)。

いちにちはだめ

一日おきに。当然ながら「ふつかはだめ」は二日おき、「みっかはだめ」は三日おき、という意味。「はだめ」の最初の「は」にアクセントを置く。

薬の服用は一日はだめ。
オリンピックは四年はだめ。

いっこも

「少しも〜で無い」という文脈で使う。
少しも、の意。

いっこもこうぇーねえ(少しも怖く無い)。

いつもこつも

いつでも、毎回。
「いつでもこつでも」とも言う。

いつもこつも、お達者なことで(いつもお元気ですなぁ)。

いっちゃん

最初、一番。
アクセントは「いっ」にある。

わしがいっちゃんや(私が一番だ)。

いなげ

変・異の意。
「いなげな」は備前では古い言い方で「ひょんなげな」という言い方の方が一般的。

よーさり墓のそばーとおりょったらーいなげなめにおうてな(夜、墓の側を通っていたら異様な事態に遭遇してね)。

いぬ・
いぬる

帰る、の意 。古語

いんだ(帰った) 。いねー(帰れ)。いぬるまで待ってーて(帰るまで待っておいて)。

いばる

●(1) 体の一部が腫れる。例えば傷が化膿して腫れる【必ずしも化膿していなくてもいい】。
アクセントは「ば」にある。標準語のアクセントは「る」になる。

●(2) 単に「りきむ」事。例えば便秘のためトイレで。
*「りきむ」の意味の場合は「へばる」ともいう。

備前の東方面では(1), (2)の意味で「きんばる」と言う。
備中の北部では(1)の意味で「ほぉちゃくする」と言った(*4)。

●(1) でものがいばって困っとんじゃ(おできが化膿して痛くて困っています)。
●足がいばるんじゃ(足がむくんでいます)。

●(2) トイレでいばらゃーりゅぃとったんじゃーねーか(トイレでふんばり続けていたのでないかい)?
「いばる」=「へばる」#「いきむ」

いまごろ

最近。アクセントは「いま」。アクセントを「ごろ」にすると標準語になる。

いまごろこゑ事件がおゐ(最近怖い事件が多い)。

いやし・
いやしい

(1)食いしん坊。名詞。
アクセントは「やし」にある。

(2)食意地が張っている。語尾に「い」を接続して、形容詞。

【身分が】いやしい、という意味はまったくない。
また「いやらしい」という意味もまったくない。

(1)めしの支度ができてねーのに、いやしじゃのー、よだればーうだりょーる(食事の支度が出来ていないのに、涎ばかり流して食いしん坊だなぁ)。

(2)いやしー奴(食意地が張っている奴)。
太っている人を指している場合が多々あった。

いよいよ

まったく。
さっぱり。
ほとほと。

アクセントは二個の「い」にあるが、後の「い」の方を二倍くらい強く言う。

いよいよ銭にならん(さっぱり儲けにならない)。

いら

(1) 古語で棘(トゲ)の事。もっぱら刺す主体が正体不明の場合に使う。だからその主体は小さな虫だったりする場合が多く、海などでは毒クラゲなどでも使う。
毒針を持つ毛虫の意味で使う場合は「いらさんきち」、毒針を持つくらげの意味で使う場合は「いらくらげ」のごとく限定詞となる言葉が後置されるか「いら」の後の限定詞を省略して使われた。「さんきち」を参照の事。

(2) いつも苛々している人の事。「いらち」とも。

アクセントはいずれも「い」にある。

ぼにゅー過ぎて海ぃへーっとりゃーいらがでるんぞな(お盆過ぎに海で泳ぐと毒クラゲに刺されるぞ)。

いらさんきち

刺されると痛い毒毛虫の意。詳しくいうと、毒針を持つ毛虫。

アクセントは「さんきち」にある。

 

いらまかす

●冷やかす・からかう、の意。
アクセントは「らまか」あるいは「らまかす」にある。

岡山県では地域により「えどーかす・よどーかす・ひょーたくる・ひやかす」と云う言葉が使われた。
個人的には「よどーかす」と「ひょーたくる」は聞いた覚えがない。

「えどーかす」はちょっとしゃれた大人の言葉で「いらまかす」は子供を中心に広く使用された。

●男性と会話していた女性が友人にからかわれて「えどーかされなー(冷やかさないで下さい)。」

●友達にからかわれた子供「いらまかすばーすなー(からかうばかりするな)。」

いる

(1) 果実の実がよく熟し実がしっかりつまっている事。アクセントは「る」。

(2) 根菜類の根にしっかり実がついている事。

(3) 居る(標準語)。備前では「ゐる」では無く「おる」と読む。アクセントは前の方。

●すいかのみがよーいっとるようなけーちぎっとくわ(スイカの実がしっかりつまっているようだからもぎ取っておきます)。

●芋がよーいっとるようなけーほぜっとこーえ(芋がしっかり実っているようだから掘ってみましょうよ)。

いろう

●「いらう」が訛ったもの。
「触る」の意。
「せせる」・「ひねくる」も同様に「触る・いじる」という意味だが、使い方に違いがある。各項目を参照。「いろう」は「いじっている人が物を壊しそうだとか、直しそうだ」などという判断は含まれていない。
アクセントは「ろう」か「う」にある。

*備前で「さわる」のはお化けと相場が決まっている。

*「さわる」を参照。

●いろよーりゃーなんかわかるねぇ(いじっていれば何か分かるかもしれない)。

いろはにコンペイトウ

と云うのでしたか。一種のわらべ歌だとは思っていましたけれど。
●日本わらべ歌全集なる書物の中にいろんな替え歌があるそうな。
●備前では確か右のような歌詞でした。
こんな歌を歌いながら手鞠をついていました。

●今ならこの歌詞を手鞠をつきながらラップで歌うのが似合うような気がします。

三角四角、
四角は豆腐、
豆腐は白い、
白いはウサギ、
ウサギは跳ねる、
跳ねるはカエル、
カエルは青い、
青いは幽霊、
幽霊は消える、
消えるは電気、
電気は光る、
光るは親父のはげ頭

いんけつ

「べっとこ」・「びりけつ」と同じ意味で使われた。最下位の事。

アクセントは「い」にある。
「べっとこ」「びりけつ」「いんけつ」の順に新しい言葉になる。

「タコ」や「ゲス」と同じような使い方。「最低だな」という意味で「いんけつやなー」と言う。

いんべやき

漢字で書くと忌部焼、ではなくて伊部焼になる。

となり村で焼いている焼き物くらいに思っていたが、備前焼の事、だとは、ずっと後年になって知った。

 

うがす

剥ぐ、の意。
アクセントは、「が」にある。

テープぅうがすんを忘れてしもーた(テープを剥がすのを忘れてしまった)。

うげる

剥げる、の意(もげる、を参照)。
アクセントは、備前では「げ」におき、備中の人は「る」にアクセントをおくようだ。

他動詞は「うがす(アクセントは「が」)」あるいは「うぐ(アクセントは「う」)」。

壁紙うげとるぞな(剥げているよ) 。指でへずるばーするからじゃ(指でけずるばかりするからだ)。

この「うげとる」のアクセントは「う」にある。

うずないー

窮屈だという違和感・体にピッタリと合わない違和感。手足や頭などが靴や手袋や帽子のために窮屈だと感じた場合や、服が小さくて気持ち悪く感じた時などに使う言葉。備中から備後の中国山地で使われる。恐らく標準語には意味の似た言葉は無いだろう。

アクセントは「いー」にある。
●備前では聞いた覚えが無い。備前で窮屈な表現は「きちきち」。

【小さな服を着て】こりゃーうずないー(こりゃー窮屈だ)。
靴ぅ変えたんでうずないー(靴が新しくなったので変な感じだ)。

現在では岡山県南に広がるも、各地で勝手に意味が変えられてしまい意味不明な言葉になっている。
県南への進出に伴い「難しい」の意味が加えられた事などはその一例にすぎない。

うだる

●単に「液体が垂れる」の意。
●自動詞だけで他動詞は無い。
●アクセントは「だ」にある。

「うだるような暑さ」の場合、何が「うだる」のかと問われれば、やはり汗だろうなぁ。
だから意味は、汗がダラダラと滴り落ちるような暑さ、となります。
「うだる」には「暑い」という意味は無いので「ような」という比喩表現が「暑い」の前に不可欠。
単に「うだるような天気」と言われると「雨が降りそうな天気」と解釈しがち(50%)。その場合には誤解を避けるために「うだりそうな天気」とでも言うと「雨が降りそうな天気」の意味になる(100%)。

「暑さがうだる」と言うと「暑さが空からでも降って来る」という意味に解釈され、怪訝な顔をされるでしょう。

●よだれがうだりょーるが(【お前】よだれが垂れているよ【どうにかしろよ】)。

●汗がうだって目も開けられんがー(目の中に入ってくる程の汗が出るよ)。

●天井から雨がうだりょーらぁ(天井から雨漏りしているよ)。

うだれ

●庇 --- 軒につける『ひさし』の事。

標準語(関西弁)では「をだれ(おだれ)」という。
庇は主として縁側を構成する屋根。
岡山ではほとんどの家の縁側が外縁で、母屋が茅葺き、庇が瓦葺きだった時代がある。

 

うち

(1) 大抵は自分の家・時として他人の家。
自分の家だとはっきり言う場合には「うちほー・うちほう」「うちかた」と表現する事もある。
一方「おまえ」の家だとはっきり言う場合は「おめーんち」「おめーかた」と言う事もある。
アクセントは「ち」にある。

(2) 女性の一人称。もしも私と云う意味で使われたとすれば、私がどこかのお姫さまであるか、よほど強い意志を表明する場合。つまり、滅多に使われない。普通、女性が自分の事を指して云うには、これを複数形にして「うちらぁ」と云った。これが「私などは」ほどの意味になる。
男性一人称は「わい・わし・おれ・ぼく」
アクセントは「ち」にある。ただ強調表現では「う」にアクセントが移る。

(1) うちーけーやー(わが家に来てよ)。
りっぱなうちが建ったなぁ(立派な家が建ったな)。

(2) うちらぁそんなこたー言わん(私はそんな事を言った覚えは無いですよ)。

うったて 書道の用語で、例えば漢字の一を書く時の最初の点。 今だに使われているようで、、、

うまえる

差し水をする、の意。
「うめる」「まえる」「うるめる」と同じ。各項目を参照の事。

 

うみる

蒸し上がる、の意。
アクセントはそれぞれ「み」・「ま」にある。

●めしぃうみたんじゃねーか(ご飯が炊き上がったのでは)?

うむす
うます

蒸す、の意。
アクセントはそれぞれ「む」・「ま」にある。

●「蒸す」という料理操作には「かんす」の上に「こしき」や「せいろ」を乗せ、くどの中に薪をくべておかないといけない。

●飯ごうでめしぃうむすにゃーこつがあるんぞな(飯ごうでご飯を炊くにはコツがあるのよ)。

うめーげに

上手に。
「おいしい」という意味では無い。
アクセントは「め」にある。

例文は「あやくる」を参照の事。

うめる

「埋める」のでは無くて「水を入れて湯の温度を下げる・差し水をする」事。
アクセントは「める」にある。
「埋める」という動詞は普通は使わず、その意味では「いける」という動詞を使った。
【参照】「いかる

備前では「うめる」よりも「まえる」を使っていたかと。
【参照】まえる

辞書に載せられている場合もあるようなので、全国区の言葉かもしれない。

昔は五右衛門風呂が普通だったので、湯を熱くして適温になるまで水を入れて温度を下げた
。湯ぅうめてー(お湯の温度を下げて)。

うるめる

「うめる(差し水をする)」と同じ。
アクセントは「るめる」にある。
埋める、と勘違いされた場合に使う言葉。

いやいや、土にうめるんじゃのーて、うるめるんじゃ(いえいえ、土に埋めるのでは無くて、差し水をするんです)。

うんのびる

●「気絶する」・時として「気絶のフリをする」の意。
重篤な病で意識障害をきたしている場合にも使うので注意が必要な言葉。

●時として省略して「のびる」とも言う。
この場合は「疲れる・ばてる」という意味の「のびる」と混同される事がある。

●アクセントは最初の「うん」。

きゃーるがとびっぃーてきたんでうんのびてしもーたぞな(蛙が飛びついてきたので【飛びつかれた女性が】気絶した)。

うんま

ご飯、の意。

幼児語。大人が赤ん坊に対して使う。

うんま、うんま(ご飯だよ)。

えー

良い。

えー湯じゃ(いい湯だな)。

えーげに

うまく、好きなように、いずれの意味でも使う。

「うまく」の意味を明確に伝えたい場合は「うめーげに」を使う。
アクセントは「えー」。

えーげにせられー(うまくやりなさい・好きなようにしなさい)。

えーこ 合い、の意。
アクセントは「えー」にある。発音は「ゑこ」になる。

「えーこ」の「え」は「や」と「え」の中間音なので、どちらとも取れる音になる。
「やーこ」「ええ」「あい」とも。
たたきえーこ(叩き合い)。
なぐりえーこ(殴り合い)。
いーえーこ(口争い)。
えーこしー ややこしい、の意。
アクセントは「えーこし」にある。「えーこーしー」とも言った。

関西の子には「ブリッ子しているずるい子」のような意味に受け取られたので、自然と使わなくなった。同じ意味で「やえぐるしい」という言葉も聞いたが、これは播州方面の言葉らしい。
 

えーま

あいま(合間)。

えーまぐい(間食をする事)

ーえ

文章の最後につけて勧誘を表す。

きょうはのもーえ(今日は飲みましょう)。

えしき

本来は「会式」なのでしょうが、備前で「えしき」といえば、西大寺観音院の裸祭り後に二週間行われる後祭りの事。

 

えぞる

すでに書かれている文字や図形を辿るという意味の「なぞる」と同じ。単なる訛りなのか方言なのか、今一つ不明。
アクセントは「ぞ」。

【写経は】えぞってかきょーっても、なかなかうもーかけん(文字をなぞって書いても、なかなか上手に書けない)。

えっと

たくさん、の意。
アクセントは「え」にある。
普通、子供に対して使う。

同じ意味で一般的な言葉は「よーけぇ」がある。

こずかいえっともろーたか(おこずかいを沢山もらったか)?

えっとこ

母親が子供に対して使う言葉。幼児語。腰をかける、の意。
アクセントは「え」。

歩くのが唯一の移動手段だった時代、「えっとこしょーえ(一休みしようか)。」はほっとする言葉でした。

えっぷ

げっぷ。幼児語。

アクセントは「え」にある事もあるが「ぷ」にある場合もある。

 

えっぽど

よほど、の意。単なる訛りだろう。

アクセントは「え」にある。

えっぽどどしゃーげたんじゃろ(よほどひどくぶつかったんだだろう)。

えどーかす

●冷やかす・からかう、の意。

アクセントは「どー」にある。

「いらまかす」を参照。

えぼ

●(1) 餌

●(2) 棒の端
あくまで「棒」の端なので「橋のえぼ(端)」と言うと丸木橋でないと意味不明になる。

アクセントは(1)と(2)いずれも「ぼ」にある。

(1) 鳥にえぼをやってー(鶏に餌を上げてちょうだい)。

(2) 豆殻をたたくにゃー棒ーのえぼぉ使わにゃーおえんぞな(豆殻から豆を叩いて出すには棒の端っこで叩かないと)。

えらい

(1) 偉い。全国共通。

(2) たいそう・大変に。「えらい、えろう、えれー」といった変化がある。
「えらい」は英語の「more」、「えろう」は英語の「less」に相当する(否定語を 付加する必要はあるものの)。

(3) 疲れた・だるい・体がきつい。【類】しんどい

(2) 今日はえれーおとなしぃのー(今日はたいそう静かにしているなぁ)。
えろうせかーでもえーじゃろ(そんなに急がなくてもいいだろ)。

(3) 今日は体がえれーけー、休ませて(風邪で熱があったりした時の言葉)。
【長距離を走って】えれー。

えらっそー

「自慢ぶる・高慢な態度」の事。

一部の備中方面で使われているらしい「のふうぞ」と同じ意味。
アクセントは「らっ」にある。

通常「えらっそー(に)する」と使って「傲慢な態度をとる」という意味。

えらっそーしょーると人に嫌われるよ(傲慢な態度は他人に嫌われますよ)。

えんだ・えんや

「えんがわ」の事。

縁台の事を「えんでー」と訛るので「えんだ」と紛らわしい。
古くは「えんや」とも言った。
アクセントは「えんだ」は「え」に、「えんや」は「んや」にある。

 

えんたつ

煙突。

 

おいぐ

泳ぐ。これを「おゐぐ」と発音する。

おいぎーいきょーてんか(水泳に行ってるのですか)?

おーきに・おおきに

ありがとう。
「おー」あるいは「き」にアクセント。

備中の方でも当然「おーきに」と言うのだろうと思っていたが、 備中では「ごねんにいりまして」と言うらしい。

 

おいでんせぇ・おいでんさい

いらっしゃい。

 

おうどう
おーどー

●横着な。面倒くさがって、いいかげんな事をして危ない目をみる。

●アクセントは「おう」にある。

●おーどーな事をするけーけっぱんずくんじゃ(【例えば:面倒くさがって、近道をしようとしたりする】からつまずくんだ)。

●おーどーもん(横着者)。

おーこ・おおこ・おうこ

天秤棒の意。

かつては全国区の言葉だったよう。
水道が無かった頃は毎朝おーこを担いで近所の井戸まで水汲みに。

おーげん・おおげん

おおぐち・口だけは達者の意。
左記のように使う。

名詞化すると
「おーげんたれ」

●おーげんをたれる(大口をたたく ・大言壮語する)。
言う事だけは大きいのだが、やっている事は大したこと無い。

おえ

座敷 。
アクセントは「え」にある。

おえへあがってー(座敷に上がって下さい)

おえん

アクセントは不定。真ん中の「え」にアクセントがかかりがち。

●(1) 英語の must に相当。しなければならない、の意。

●(2) 英語の impossible 。無理だ、の意。

●(3) 我慢できない。

●(4) 英語の It does not work。うまく行かない、の意。

●(5) 禁止を表す。

●(6) 死ぬ。

●(7) 運に恵まれない、の意 。

(1) 変えんとおえん(変えないといけない)。

(2) おえるもんか(そりゃ無理)。
おえまー(駄目だろう)。

(3) つめとーておえん(冷たくて我慢できない)。

(4) 「きこなう」の例文を参照。

(5) そねーなことしたらおえん(そんな事をしたらいけない)。

(6) おえんよーになってしもーた(死んでしまった)。

(7) おえりゃーせん(さっぱり駄目だ)。

おかやまべん(岡山弁)

岡山駅で売り子が売っていた駅弁の事。

以前は「岡山弁」という言い方が珍しく「おかやまべん」とは「岡山のうんこ」という意味に理解する人もいたので、上記のように説明した。右記のような会話は冗談では無く、よくあった事です。

岡山弁はきしゃのーておえん(岡山のうんこは汚くて駄目だ -- 岡山の方言は汚くて駄目だ -- どちらの意味にも受け取れる)。」

「ひょんなげな事をいうのー(妙な事を言いますね)。うんこがきしゃねーなぁあたりめーじゃろーが(ウンコが汚いのは【全国どこでも】当然でしょう)。」

「いやいや、わしのゆーた岡山弁は岡山駅で売っとる駅弁のことじゃがな。」

おけんたい
けんたい

発音は通常「おけんてー」。

意味は「特に理由も無いのに、当然のように振る舞う事」。

最初の「お」は丁寧語

【おとうやの席で】XXちゃんは、おけんてー様じゃなー(【お頭屋の集まりで】XXちゃんは、堂々としているなー)。男の子に対する褒め言葉で、この場合は母親が側にいない事を指している。

おこし

(1) 腰巻き

(2) 雷おこし、というお菓子の名前

アクセントはいずれも「こ」にある。

腰巻は古くは「いもじ」とも。

おこよ

小便

 

おごり

ふるえ・全身性の痙攣。 多分「おこり」から変化してきた言葉だろう。

これを動詞風に使うには「おごりがつく」といい「おごる」とは云わない。

熱をでぇーておごりがつぃーて困った(発熱してふるえが出て困った)。

おごる

「ごそ」になる事。

方言を説明するのに方言を使ってはいけないかもしれませんが「ごそ」の意味は草木の繁った有様、です。備前南部の方言。

夏になりゃー庭の木がおごってくる(木の葉が繁ってくる)。

おしきり

(1) 飼葉切り、の事。
「けーばきり」と発音する。
アクセントは「しきり」にある。

(2) ズボンの皺を延ばすため、寝る前に布団の下にズボンを入れる事。
【死語】

アクセントは「しき」にある。

【農業】

おしげらに

惜しげも無く、の正反対の意味。
アクセントは「おし」にある。

そねーに、おしげらに物をやるんなら、やめぇ(そんなに人に物を与えるのが勿体ないのなら、止めてしまえ)。

おしこみ

押し入れ。
アクセントは無し。

おしこみにてんまるをとらげてーてぇ(押し入れに鞠をしまっておいて下さい)。

おせ

おとな 。
アクセントは「お」にある。

●おせらぁ・・・おせの複数形。
おせらぁ、嘘ばーじゃぁ(大人は嘘ばかりつく)。

●人称代名詞として。
【子供が近所のおとなに向かって】おせは何しょん(おじさん・おばさんは何をしているの)?

おせらかす・
せーらかす

おどかす、の意。恐喝したりを意味する、おどす、とはまったく違う。怪談を語って「おせらかす」と云う使い方が典型的。多分「おそらかす」が訛ったもの。

アクセントは「せら」にある。

一人で夜道をいなにゃーおえんのに、おせらかすばーして(一人で夜道を帰らないといけないのに、おどかすばかりして)。

おせーかす

古い言い方だが、一応記しておく。「教える」の意。
アクセントは「せーか」にある。

おせーかしてつけぇ(【勉強を】教えて下さい)。

おだおだ

水中に溶けきれない物質が漂っている物、の意。

アクセントは無し。これは今でも現役の言葉でしょう。
例えばドブ掃除をすると、水中をヘドロが漂うが、そのヘドロの事を「おだおだ」と言う。

【珈琲に粉クリームを入れて】おだおだがのーなるまでかきまぜてーよ(水中の粉が無くなるまでかき混ぜて下さい)。

おつ

みそ汁 ・吸い物・汁物一般
アクセントは「お」にある。

さー、おつぅいただこぅ(さて、みそ汁をいただきましょう)。

おっちん

●座る。
アクセントは「ちん」にある。

●あくまで、大人が子供に対して使う言葉。大人に対して用いられる言葉では無い。

● 備中方言では「ちゃんこ」と云う。

●そこにおっちんしんせぇ(そこに座りなさい)。

●(飼い犬に)ちん!(おすわり!)

おとこ

床の間の事。
アクセントは無い。

 

おどし

農家で「おどし(名詞)」といえば「かかし」の事でした。
「鳥おどし」の省略。

 

おとでぇ・おとでー・おとどい

兄弟の意。

備前北部から備中南部、備後南部にかけての言い方かと。

おとと・とと

幼児言葉で「魚」の意。
アクセントは無し。

 

おどりこ

大泉門
アクセントは無し。

 

おやじ・おとやん

方言とは思えないのですが、一応。

父親 --> おやじ・おとやん
母親 --> おかあ・おかやん
祖父 --> おじい・じーやん
祖母 --> おばあ・ばーやん

 

おとんぼ

末っ子
アクセントは無し。
岡山県ほぼ全域で使用されている。

 

おなご

単に女性の意。
女性であれば、子供から老人までOK。
それから吾妻の意味でも使う。

人間では無く動物の雄雌を言う場合には、おんた(雄)/めんた(雌)。

女性の卑称は、おなごだつ・おなごばし。

おーばん

広い場所、の意で「おーばんを取る」という使い方をした。

古い言い方で現在では耳にする機会はまず無い。

(子供の遊び場で男子が遊び場を広く取って女子の遊び場が狭い場合に)「あんたらーおーばん取り過ぎじゃわ。もちーとうちらにゆずりーや。」

おーばんし・
おうばんし

模造紙のこと。

 

おめこ

女性器の意。
「おめんこ」とも云う。
むしろ、この方が普通だったので、厚紙の紙片を地面に打ち付けて相手の紙片を裏返しにして遊ぶ「ぱっちん」の事を、どうしても「めんこ」とは言えない。

動物の雄のことを「おん」、雌の事を「めん」と言うが、これからすれば「おめんこ」の方が先にあったのかもしれない。

 

おめく

わめく・大声を出す、の意。
ずいぶんと古い言い方になる。

アクセントは「め」にある。

おめーてもかわんもんはかわん(わめいても買ってやらん)。

おめる

恥ずかしい・恥ずかしがる、の意。
ずいぶんと古い言い方のような。よく「おめく」と勘違いしてしまう言葉だった。

アクセントは「め」あるいは「める」にある。

おめるわー(はずかしいわ)。

おらぶ

●叫ぶ、泣く、わめく。
アクセントは「ら」にある。
悲しみ・怒りの表現。
古語。
【参照】いがる

おらびまくっとるがー。

おり

おりあい、の省略形。人と人との仲。

よっぽど、おりが悪かったんじゃろ(仲が悪かったんだろう)。

(1) 「まばら」という意味。
「空虚・木の空洞」を意味する「うろ」と親戚かも。

(2) 痛みが和らぐ場合にも使用された。

(3) 名詞の前に接続し、意味を弱める。

アクセントは「ろ」にある。

●髪がおろーなったなー(意味は各自考えて下さい)。

●頭がわりーのがでぇしょうおろーなった(頭痛が少し楽になった)。

●おろぶり(小雨)。

おん?

(1) 「えっ?」と物事を聞き返す言葉。

語尾を上げる。これ以外に「ほん?・ふん?・うん?」も使います。後二者は標準語かと。また標準語の「えっ?」という表現はあまりにもお上品すぎで使えない。

「はっ?」は不良言葉なので使えない。「あぁ?・あん?」となると喧嘩の時くらいでしょう。

(2) 語尾を揚げずに「おん」と使うと「はい」英語の"Yes"という意味になる。この辺りは「ほんふんうん」と同じ。

「ほん」を参照の事。

おんどれー・おどれー

●こんちくしょう、の意。
貴様、程度の意味もある。
しかし、あまりにも品が悪いのであまり使わない。
この他にも「おんどりゃー・おどりゃー」とも言う。

 

おんびん

●臆病・弱虫、の意。
腰抜けを「おんびんくそ」と云う。
おんびんたれとも云う。
アクセントは「おん」にある。

おんびんくそー(弱虫)

かーやんご

カヤ(萱)の事で、イネ科の植物全般を指す。
個人的には「すすき」に代表され、草部分で皮膚を切ったりする植物の事かと。
アクセントは「かー」にある。

【植物】

がいだ・ガイダ

美作(作州/津山)の方言でカメムシの事。
備中では「はっとーじ」と言う。

昆虫

かえこと

方言と云うまでも無く、以下のような訛りの三段活用で出来た言葉かと。
読んで字のごとく、交換する、と云う意味。
かえっこ(換えっこ)---> かえこと ---> けーこと

この柿のたねょーむすびとけーことしてつけー(この柿の種とにぎりめしを交換して下さい)。

かがむ

牢屋へ入る。

標準語の「かがむ」の意味では「かごむ・こごむ」を使っていました。

悪さぁしょーりゃーかがまにゃーおえんよーになるねぇー(悪い事をし ていると牢屋へ入ないといけなくなるんだから)。

がきのくび

八月十六日の事。
仕事をしない日。

 

かく

(1) 二人以上で「担ぐ・持つ」事。

●余談だが、「担ぐ」は、関西方面では「かたぐ」、関東方面では「かつぐ」と読 むのだそうだ。
●「かたぐ」という言葉が一人で「担ぐ」場合に用いられたのに対し「かく」は、 二人以上で一緒に物を持つ場合に使われた。
【古語】

(2) 物を前後に動かすこと。
アクセントは(1),(2) ともに「か」にある。(2) は標準語でしょう。

●「かく」の名詞形「かき」を使った言葉「駕籠かき」。

「かく」は訛って「けー」と言う。

(1) トオミ(唐箕)ゅーけーてくんせー(トオミを持つのを手伝って下さい)。

(2)【 高瀬舟の中に入った水を】はよーかいてくれ(早く【水取り桶で】かき出してくれ)

かげる

(1) 欠ける、の意。 アクセントは「る」にある。
名詞形は「かげ」。
「かげる」は新しい言い方。「欠ける」という意味では旧来の「こげる」という言葉を使った。

(2) むしろ「かげる」は「日が陰る(かげる)」と使う事の方が一般的だった。この場合のアクセントは「げ」にある。

【参照】こげる

●かげが出来てしもーた・かげてしもーた(一部が欠けてしまった)。
●おひさんが【山に】かげったなぁ(太陽が山に隠れたよ)。

かごむ

かがむ・しゃがむ、の意。

たうえゃーかごんでばーじゃけーえれーわ(田植えはしゃがんでばかりだから疲れるわい)。

かざ 匂い、の意。

アクセントは「ざ」にある。
 
かざむ 匂いを嗅ぐ、の意。

アクセントは「ざむ」にある。
「かざをかむ(匂いをかぐ)」の省略形かと。「かむ」を参照の事。
瓜をかざんでみりゃー、うれたんがわかる(瓜の匂いを嗅いでみれば、熟れているかどうかが判る)。

火事

火事になる事を
「火事をだす」
「火事がいく」と言う。

 

かじこまる

かじかむ、の意。

アクセントは「こまる」にある。

備前では各種の言い方がある。代表的な言葉を東の兵庫県境から西の岡山市方面へ向かって挙げていけば
「まじこる」「まじこまる」「かじこまる」「かじこる」「かじける」「こじける」
という風に変わってゆくようだ。

ただ、備中へ入ると「かじかむ」を表現する方言が聞かれなくなるようだ。

手がかじこまるのぅ(【寒くて】手がかじかむなぁ)。

かしわ

鶏肉、の事。
アクセントは「し」

 

かしわのき

柏餅を包む葉を持つ木。
サルトリイバラの事。
つる草に近い低木で葉はハート型。
でもこれは「柏の木」では無いのだそう。

「柏の木」の葉は手を拡げたようなギザギザがあって、樹高も高くなる木だとは最近になって知りました。

がしん

飢餓・飢饉

備前でも使っていたが備中北部(*4)でも使っていたというのだから、古くは広範囲に使われた言葉なのでしょう。

関西弁の「がしんたれ(弱虫・腰抜け)」を初めて聞いた時には「喰い意地の張った奴」という意味だと思った。

がしんのとし(飢餓のあった年)

かす

●粕でも無く、貸すでもない。
*浙す(かす):水にひたす。
*米果す(かす):水で米を洗う。
●アクセントは「貸す」と同じで「す」にある。

古語。他サ四。

洗濯物を水にかしてーて(洗濯物を水に浸けておいて)。

かぜ

●さくらごち(サクラの花が咲く3-4月の東風)

●さーらごち(サワラが捕れる4-5月の東風)

●ながせ(夏の東風)

この項、その内容は誤ってると思うが(*1)を参考にしました。

かたえる

腹がかたえる、と使う。便秘する事。
アクセントは「える」か「たえる」にある。

 

かたくま

肩車。

「さかくま」「てんぐるま・でんぐるま」とも云う。

「かたくま」は備前、「さかくま」は備前南部の一部地域の言い方。「てんぐるま」は西部方面の言い方になる。
子供が大人にしてもらうものだが、高い場所が苦手な子供では、かたくまと云う言葉は恐怖の対象になる。

アクセントは「かたくま・さかくま」ともに「くま」にある。「てんぐるま」は「ま」を弱く云う以外は平坦

かたくまはきょうてーなー。

かたぐ

●かつぐ、の意。
●アクセントは「た」にある。

かますをかてーでくんせー(米袋を担いで下さい)。

かたげる

●傾ける、の意。
●自動詞は「かやぶく」。
●アクセントは「たげる」か「たげ」にある。

自動詞として「かたぐ」がありそうなのだが、「かたぐ」は「担ぐ」という意味で常用されているため使われないのでしょう。

ひょんなげな事ぉゆーたんでもねーのにくびゅーかたげるかのぅ(妙な事を言ったわけでも無いのに首をかしげるかなぁ)。

かたがる

●肩の上に乗る、の意。
適用範囲の狭い動詞なのであまり使われる事がなかった。

【子供に対して】まーたかたがりょーらぁ(また【甘えて】肩の上に乗ろうとするー)
あるいは(また【甘えて】肩の上に乗せてもらってる)。

●【注意】これは能動態と受動態が同じ言葉になってしまった例です。
正確には「かたがろうとしょうーらぁ」を省略して ---> かたがりょーらぁ
「かたがれていることだなぁ」の訛りで ---> かたがりょーらぁ
となっているものです。

かたたがい ・
かたたがえ

●方向違い、の意。
アクセントは「たがい」

●この「たがい」は間違い、という意味で常用された。

(1)「岡山駅へ行くにはこの方向でいいですか?」

「ありゃーあんた、かたたがいじゃが(あれまぁーあなた、方向違いですがな)。」

(2) たごーたことばーいよーちゃーおえまぁ(常識はずれな事ばかり言っては駄目じゃないか)。

かたひら

●片一方、の意。

かたちん、かたちんば、とも。

くつぅーかたひらぁどけぇやったけぇーのう(靴の片一方をどこに置いたかなぁ)?

かたびら

クマゼミの事。本来はミンミンゼミの事かもしれないが、ミンミンゼミはすばしこrく、聲はすれども姿は見えずで捕まえた記憶が無い。同じように羽が透明なクマゼミの事を意味するようになった可能性が高い。「ごろー」との名称は「かたびら」のメス。

【昆虫】

かちくりあう・かちあう

●「ごっつんこ」する、事。
例えば頭と頭がぶつかる事。

アクセントは「ちくり」にある。

●くるうばーしょーるけー、頭かちくりあうんじゃ(ふざけて暴れるから頭どうしがぶつかるんだ)。

かつえど・かつゑど

●腹をひどく空かせた人(方言というよりも仏教用語だったかと)。
漢字で書けば「餓穢土」かな(穢土は浄土の逆の場所の事)。
徳川家康の旗指物にもある「欣求浄土(ごんぐじょうど) 厭離穢土(おんりえど)」の穢土。
発音は「かつゑど」

●かつえどみてーにくうの(餓鬼みたいに食べるなぁ) 。

かつえる

●かつえる - 餓える・空腹だ。古語。

●岡山の北部から山陰にかけては同じ意味で「ひだるい」が使われる。

●かつえとるのー(ひどく空腹だったんだなー)。

がっそ

●草木がひどく密生した様子。
映画「マタンゴ」が棲息するような密林が典型例。
アクセントは「がっ」にある。 「ごそ・ごそっぱち」とも云う。
これらの言葉は「ごんご」と似たような変化を示す。
【参照】ごんご

●がっそ >> ごそ
従って「がっそ」に妖怪は棲んでも「ごそ」には蛇くらいしか住めない。
もっと具体的にいうと「がっそ」は人が滅多に行かない深山幽谷の事。「ごそ」は冬場になると枯れるが、夏場になると草木が生い茂る場所で、夏場の草木の勢いを指す。

●「がっそ・ごそ」は髪や髭が伸び放題の状態をも意味するように転用される。
その場合は主語「髪や髭」を明記して使う。
「髪ががっそ」と云うと無人島在住で10年以上散髪をしていないような有様が想起されてしまう。
それゆえ、通常は「髪がごそ」という使い方をしました。
「がっそ」は髪が伸びた状態であり、ボサボサに乱れた状態を意味するわけではりません。乱髪には「てんばさー」という言葉を使いました。

●擬音語の「がさごそ」とは「がっそ」や「ごそ」の中を進む時の音でしょう。

●雨ばーふりゃ庭ぁがっそじゃ(雨ばかり降ると庭は雑草だらけ)。

●ごそっぱち、歩くにゃ、はみに気ーつけんとおえんよ(雑草の中を歩く時にはマムシに気をつけないといけないよ)。

●髪がごそになったけーつんでくらぁ(髪が伸びたから散髪に行ってくるよ)。

●がっそをこいでもてーしたことにゃーならんが、ごそをこいじゃーなんものこらん(密林に分け入っても大した事にはならないが、草原を削ってしまうと何も残らない)。

がったんびっこん

物の左右がうまく合わない時の表現。

●からかみががったんびっこんじゃ(ふすまの左右がうまく合わない)。

●【服のボタンをかけ間違えて】服ががったんびっこんじゃが。

学校用物品

(標準)---(ローカル)
物差し --- さし
消しゴム --- けっちん
画鋲 --- 押しピン
ゴミ箱 --- (ゴミ入れ)かな

 

農家の庭 。
【参照】せど

うすーかしてぇ。かどにあらぁ。(臼を貸して。庭にあるよ。)

がな・
がぁ・
がん

(1) 三人称で使った場合には相手に「なんとかしろ」、

(2) 二人称で使った場合には軽い命令形 。

(3) 一人称では感動文。

一人称〜三人称いずれも文章の意味を強める働きがある。

(1) バスが来てしもーたがん(バスが来たよ --- 乗り遅れている人がいるのでなんとかならんか)。

(2) 遊んでばーじゃ、おえんがな(遊んではかりでは駄目だよな) 。
【「遊ぶばーせられなー」より柔らかく説得力ある表現】

(3) このふーまんうめーがぁ(この今川焼きおいしい!)。

かなぐる

●かきむしる・ひっかく、の意 。

古語との事らしいが。他ラ四。

●かいーけぇ、かなぐりまくった(痒いので掻きまくった)。

●カンバスをパレットナイフでかなぐっても絵がかきょーが(ひっかいても絵がかけるだろ)。

かばち 口答え、の意。

本来は広島の方言のようだが、かなり伝染力の強い言葉らしく、近年、瀬戸内海の港経由で、その勢力を拡大してきた。
播磨から備前南部(児島方言 *2)〜備中〜備後にかけて使われる。
昭和50年代に入り備前北部まで一部侵入したようだ。
***

がぶ

●野葡萄
アクセントは「が」にある。

●「ノブドウ」と「ヤマブドウ」は前者が食べられないけれど、後者は食べられるという点で異なる植物。

【植物】

がぶはにごーてくえん(野ぶどうは苦くて食べられない)。

かぶうち

●同族、という意味。
アクセントは無いか、「うち」にある。
昭和50年頃の調査報告を見る限り、県北県南にかかわらず岡山県全域で使われていた。

 

かぶる

(1) 【犬や猫や蛇が】咬む・噛む。

(2) 【虫が】刺す。百足・蚊・等。蜂は「かぶる」とは言わない。

(3) 被る。これは標準語。

●むかし、かぶる猫がおっての(昔、人を咬む猫がおってな)。

●蚊ぁーにかぶられてしもーた(蚊に刺されてしまった)。

かむ

「鼻をクンクンさせる」、英語の"sniff"という意味。

アクセントは「む」にある。
【注意】「噛む」という場合のアクセントは「か」にある。

「かざをかむ」---「かざかむ」----「かざむ」と変化したものだろう(これらはいずれも同じ意味)。
用例は右記のような場合に限られる。

かざをかんでもはらぁくちくなるまぁ(匂いを嗅いでも満腹する事はないでしょう)。

がめる

(1)盗む。
(2) 欲張って集める・がめつく集める。
(3) 病状が悪い・やつれている。

これらの内、(1) は全国区の表現らしい。
(2) の意味も比較的全国的と思われるが麻雀でしか聞かない。
(3) 相手の表情等から判断して使う言葉。 どちらかと云えば備中方面の言葉で、備前の東方面になると聞かれなくなる。

(1) えーんか、ええもんもって(いいなぁ、いい物持っていて)。どっかでがめたんやろ(どこかで盗んだんだろ)?

(2) こーつばーがめて、さてはちーといか(博徒専用)。

(3) あいつぁえろーがめたなぁ(あいつはひどくやつれたなぁ)。

かめんたー・かめんた

淡水魚の「たなご」の意。
「かめんたー」の場合、アクセントは「か」にある。
「かめんた」の場合、アクセントは「め」にある。

【魚類】

かやす

倒す・ひっくり返す、と云う意味。

アクセントは「や」にある。
後に入ってきた「こかす」と同居している。
よく似た言葉に液体をこぼれさすという意味の「まかす」がある。
【参照】まける

お茶ーまかすばーすなー(お茶をこぼすばかりするな)。

かやぶく

傾く、の意。

アクセントは「やぶ」か「ぶ」にある。

●柱の土台が崩れて屋根がかやぶぃーとる(屋根が傾いている)。

●しんでぇーがかやぶきょーるんでねーか(商売が左前になっているのでないかい)。

かやぶける

傾ける、の意。

アクセントは「やぶけ」か「ぶけ」にある。

●水のへーったバケツをかやぶきょーると水がまけるよ(水の入ったバケツを傾けると水がこぼれるよ)。

かやる

倒れる・ひっくり返る、の意。

アクセントは「や」にある。
後に入ってきた「こける」と同居している。

くらりかやる」にはこの言葉が使われている。

●ちばけてかやるばーしょると頭ぶつけるんじゃ(ふざけて転んでばかりいると頭を【床などに】ぶつけるんだから)。

から

も、の意。アクセントは「か」
数字を大袈裟にいう場合に使います。

●この背広、えーやろー、十万円からしたんやでー(十万円もしたんだぞ)。

●ふたよーさからねんで、どねーしたんなら(二晩も寝ないで、どうかしたのか)?

●【コンビニ店で】1000円からお預かりします(1000円も預からせてもらいます)。
これが100円なら馬鹿にされたと思うが、1万円なら何の問題も無い。
これは冗談。

から

体格。

●人だけでなく動物にも使った。アクセントは「ら」

●からがおおけーからのぅ(体格が大きい --- 偉丈夫だからなぁ)。

●うさぎも一貫目を越えて、からがおーきょーなったぞな(ウサギの体重が4kg 近くに成長した)。

からかす

植物などを「枯らす」という意。

はっきりとしたアクセントは無い。

●花ーからかしてしもーて(花を枯らしてしまって)。

かわなり

漢字で書くと「皮なり」で「皮と一緒に・皮ごと」の意。はっきりとしたアクセントは無い。

柿はかわなり食べらりょーが(柿は皮ごと食べられるのでないかい)。うんにゃ、近頃ぁ農薬が危のぅてかわなりぁおえん。

がんがら

蝉の一種。確かアブラゼミの事。アクセントは語頭の「が」にある。

【昆虫】

かんかん

よく冷えたという意味。

このバクダンキャンディーはかんかんに冷えとるけー気ーつけて食ってのー。

かんじょうより

「【七夕の短冊を結ぶ】こより」の事。はっきりとしたアクセントは無い。
「かんじょり」と発音する人もいるよう。

昭和40年以後はあまり聞かなくなり、個人的にも「こより」しか使わなくなった。

がんつ

●カニの事。アクセントは語頭の「が」にある。

がんつばーつかめーて、あそぶばーすな(蟹ばかり捕まえて遊ぶな)。
【動物】

がんどう

●生木を切るノコギリ。アクセントは語頭の「が」
がんどうのこ。

山での作業には必要だったけれど、チェーンソーが普及しましたから。

ぎーぎー

カミキリムシ、の事。

アクセントは無い。

これを短く「ギギ(ぎぎ)」と云うと「あかざ」という魚の事になる。

【昆虫】

きこなう

●聞き耳をたてる。じっと聞く。
アクセントは無い、あるいは「な」にある。

●きこねぇーてもおえるもんか(聞き耳をたてても無駄だよ)。

●きこねぇーてみー(耳をすましてごらん)。

ぎすい

●きつい、強い、の意。

●アクセントは「す」にある。
●通常訛って「ぎしー」と発音する。
●備前ではあまり聞かない。備中が本場の言葉。備前で似たような言葉は「さかい」になるか。

●あんたぁ、ぎしー事を言うのぉ(あなたは厳しい事を言いますね)。

●【激しい労働の際に】ぎしーのう(体にこたえるなぁ)。

ぎせ

●山裾や畑の端(その土地本来の意味を成さない場所)を示す言葉。草刈りをしたり、肥料をやったりといった手入れをする場所では無い。

●アクセントは「せ」にある。
●備中から備後にかけての中国山地で使われる。
備前の方言では無い。

ぎせにゃ、肥料なぞ、いっこも撒くこたぁねぇ(たんぼの端には肥料なんか少しも撒く必要は無い)。

きちきちばった・
キチキチバッタ
ショウリョウバッタの事。

キチキチと啼くのはオスなのだそう。
【昆虫】
きつねばな 彼岸花 毒花なので決して食べてはいけないと云われていた。【植物】

きっぽ

(1)「きっぽになる」と云う風に使う。
意味は「硬直する・ひきつる・直立不動・凍結などのため曲げられない状態」。
アクセントは「き」にある。

スラング的な意味になるが、次のような意味もある。
「おめーが、やらしー事ばーゆーけー、きっぽになってしもーた。」
主語を言わない「きっぽになった」を聞くと、この意味に理解してしまう。まあ、実際驚きました。すぐにきっぽになるという意味で「きっぽ君」とは「童貞君」あるいは「新人君」ほどの意味になります。

(2) 岡山市以西の備中方面では「強情」という意味で使われるようだ。アクセントや発音は(1)と同じ。

(I) なごー歩いたんで、足がきっぽになってしもーた(長く歩いたので足が硬直したよ)。

(II) そねーに、きっぽになって緊張せんでもえーが(そんなに、ひきつけたように緊張しなくてもいいのに)。

(III) 寒かったけーでーこんの葉がきっぽになっとった(寒かったので大根の葉が凍り付いていた)。

(2) あの娘ぁきっぽじゃけー(備中では、あの子は強情だから、備前では、あの子ははずかしがりだから、融通が利かないから)。

きびし

踵(かかと)のこと。
アクセントは「き」にある。

●「かがと」を「きびし」の意味で使う事はほとんど無い。「かがと」は香登という地名で使うので誤解を避けるため。

きびしがしびれて足がもとおらんがぁ(足の裏がしびれて足がうまく動かないよ)。一般的な「踵(きびす)」から訛ったものか

きみず

酸っぱいゲップ、あるいは胃液。
黄水と書くのかな。
アクセントは「み」あるいは「みず」にある。

腹がにがりょーるときにきみずがあがらんかのぅ(腹が痛い時に酸っぱいゲップ が出ないかな)?

きやきや

チクチクする痛み。

●頭がきやきやする(頭がチクチク痛む)。

●腹がきやきやする。

きゃーくそ

「きゃーくそが悪い」と使って、「胸くそが悪い・ムカつく」という意味になる。腹をたてている表現ではあるが、時として気持ちの悪い物を見て吐気を催した時にも使う。

 

ぎょうぎ 体罰に近いしつけをする事。
かなり古い言い方で備前では「やいとーすえる」という言い方の方が一般的。
てんごーばーしょうりゃーぎょうぎゅするねぇー(いたずらばかりしていると尻たたきするぞ)

ぎょうさん・
ぎょーさん・
よーさん

普通「ぎょーさん」と前の方にアクセントを置いて間を伸ばす。「たくさん・多く」の意。

雨がぎょーさん降っておおみずになったぞな(大雨が降って洪水になった)。

ぎょうせん

水飴。
一斗缶で買っていたものだった。
アクセントは無し。

 

きょうてえ

怖い、恐ろしい、の意 。
「けふとい」と表記される場合があるようだ。
「きょうとい」と云う言い方は備前では聞かない。これは県北で使われていたかと。
アクセントは「きょう」にある。

●ぼっけーきょうてかった(大変に怖かった) 。
●いっこもきょうてぇことぁなかった(少しも怖くなかった)。

ぎり・
ぎりぎり

頭の旋毛。
アクセントは「ぎ」にある。

ひょんなげなとけーぎりがあるのー(妙な場所に旋毛があるなぁ)。

きんうり

まくわうり。
アクセントは「き」と「う」にある。「んう」をほとんど同時に発音する。「ん」は聞き取りにくいので、慣れない人には「きうり」と聞こえる。

【農業】

きんかいも

じゃがいも。

【農業】

きんかぼーず

国旗掲揚の際に旗先に付ける金の丸い玉。
アクセントは「ぼー」にある。

標準語ではどう言うのだろう?

きんきん

非常に膨らんだ状態、例えば便秘などでお腹が膨れている状態。
最後に「だま」を付加して「きんきんだま」あるいは「きんきんばり」とも云う。

よく冷えたという意味なら「かんかん」と云う。

(1) 便秘で腹がきんきんじゃぁ。

(2) 風船がきんきんで今にも割れそうじゃぁ。

きんばる

いばる」と同じ意味。

 

くい

次のような慣用句として使われた。

くいがたつ(【足でクギを踏んで】踏み抜きをする)。

ぐい

トゲを持つ植物のトゲ。
例えばバラなどの棘。
より正確には、鉄条網にも「ぐい」はある。
アクセントは「い」にある。

きれーなバラにゃーぐいがあるけーきーつけんせー(奇麗なバラには棘があるから気をつけなさい)。

ぐいび

赤くて丸長い実のなるグミ、の事。
アクセントは「いび」にある。

【植物】

くぎる
くがす

それぞれ「焦げる・焦がす」の意。
アクセントはそれぞれ「ぎ」・「が」にある。

【参照】こげる

魚を焼くのに、こねんくがすやつがおるか(魚を焼くにしても、こんなに焦がしてはいけない)。

くじ 「くじをくる」あるいは「くじを言う」と云い「だだをこねる」「文句を云う」の意。

備中の北部で使われる事は確認。備前では聞いた覚えが無い。

備前で「いじを言う」とは、子供がだだをこねる、という意味になる。
 

ぐしい・
ぐしー・
ぐすい

(1) ゆるい。帯などが緩い場合に。
(2) にぶい・のろい。備前では「にびー・のれー」と直接表現される事もある。

●縄、ぐすくしといて(縄の【結び】を緩くしておいて)。
●ぐしー、やっちゃ(手際の悪いお人だ) 。

ぐす

竜のひげ。
確か、リュウノヒゲの実の事を「ぐすだま」と呼んでいたかと。

【植物】

くすべる

煙を出す事に意味があった時代の言葉。「煙をたてる」事。
自動詞は「くすぼる」。
これは標準語です。

備前では自動詞として「ふすもる」「くすもる」を使った。
「ふすもる」の方が古い言い方。
他動詞として「ふすべる」も使ったが、発音しにくいので「くすべる」をよく使った。

例えば、狼煙を上げる時には使っただろうし、煙を使って蚊を追い払う時にも使った。

くすべるようにしてー(火を立てないように --- 煙を出すために)。

くそがえる

土蛙

【動物】

くちなわ

蛇、の意 。
ちょっと古めの標準語。

くちなわは、きょうてぇなー(蛇は怖いな)

くちへんじ

「口返事」と書くのかな 。
なまへんじ、の事。
適当にいい加減な返事をする事。

備中方面では「くちごたえ」するという意味になる。

【備前】くちへんじばーでちーともものをきいとらん(適当な返事ばかりで少しも人の言う事を聞いていない)。

【備中】えーとしゅーしてくちへんじばー(いい齢なのに「くちごたえ」ばかり)する。

くちる

(1) 「朽ちる」のでは無く、青痣が出来る事。

(2) それ以外にも皮膚が青くなる場合に使う。

(3) おなかがいっぱいになった状態。

(1) ほーだまがくちとるのぉー (ほっぺたに青アザが出来てるなぁ)。よーさりけっぱんずいてなぁ(夜中につまずいてなぁ)。

(2) なごーみずんなけーぇはいとったけぇくちびるがくちてしもーたぞな(長時間水泳をしたから唇が青くなったよ)。

(3) ぎょーさんおよばれしたけぇはらがくちてしもーたぞな(たくさん御馳走してもらったので満腹になったよ)。

●くつわす・
●くつわかす・
●くつわいー

「くすぐる・くすぐる・くすぐったい 」の意。

こそばす、の項を参照。

くつわすばーすな(くすぐるばかりするな)。

くど カマドの焚き口。

●カマド神の事を、一般的には「おくど様」というが、岡山では「おどくうさま(オドクウ様)」の方が有名。

●雨が降らないと、山の上で火を焚いて、雨乞いをしたというが、これを「おどくーさい(オドクウサイ)」と言ったそうな。

●日蓮宗の家では「オフゲン様」を台所に祭るようだ。
くどの中へ薪ぅくべてぇ(カマドの中へ薪を入れて)。
くらりかやる 【のけぞって】後ろ向きに倒れる事。

●必ずしも驚く必要は無いのだが、驚いて尻餅をついた場合によく使われた表現なので。「くらり」は「ひっくり」で、「かやる」は「倒れる」という意味。
「けっぱんずく」が前のめりに倒れそうになるのに対して「くらりかやる」は【のけぞって】後ろ向きに倒れそうになる事。
備前南部の下津井では「さでくりかえる」と言うらしい。
●アクセントは「くらり」の中でも特に「ら」にある。
(1) 上ばー見て歩きょーたらくらりかやるでー(上ばかり見て歩いていたら後ろ向きにひっくり返るぞ)。

(2) いっ、今、そこで、ノッペラボーにおーてくらりかやってしもーたんじゃ。【ノッペラボーに出くわして尻餅をついてしまった。】
ぐり 皮下にできる「しこり」の意。

●触って判る物なのでリンパ節やら腫瘍やら。
●アクセントは「ぐ」にある。
ぐりができてしもーた(しこりができてしまった)。
ぐりいし 手拳大以下の大きさの石。

●石垣に使う大石の下に轢いて大石の位置を整えるために使われるような石。
●時として省略して「ぐり」とも云った。
●アクセントは「ぐり」にある。
そねーなおーいしはぐりじゃーねぇ(そんな大石はぐり石では無い)。
体の中から思わず外に出て「くる」の「くる」。

左記の二つの場合しか使わないと思われる。
アクセントは「く」にある。
へをくるばーせんで(屁をひらないよーに)。
●よだれをくりょーるが(涎を流しているよ)。

【「屁」の場合は人称に関わらず使うが、「涎」の場合は主に三人称だけで使う。一人称と二人称は「うだる」という動詞を使う。】

くるう

ふざける・じゃれる事。
犬や猫がじゃれている場合、子供同士がふざけて遊んでいる場合に使う。

●犬がくるーとるぞな(犬が【例えば鞠などと】じゃれているよ)。

●くるうばーしょーるとけがーするで(【子供に対して】ふざけて遊んでばかりいるとケガをするよ)。

げー

げーがでる、と使う。嘔吐するの意。
「あげる」とも言う。参照の事。

 

げいさりませー

おじゃまします、という挨拶。

備中方言。解説は「ごめんせえ」の項を参照の事。「げえさりませえ」とも。

 

けー・けぇ

(1) 理由・原因を説明する接続詞。「〜ので、だから」の意。

(2) ある種の接続詞や代名詞の中の「これ」の意。「けーから」--->「これから」、「けーで」--->「これで」、「けーでも」--->「これでも」等など

(1) いんでくるけーまちょーって(戻ってくるから待っていて)。

(2) けーでおしめーじゃ(これで終わりだ)。

げた

シタビラメの事。

アクセントは「げ」にある。これを「た」にアクセントを置くと「下駄」の意になる。

【魚類】

げっちょ

「タイム」の事。「たんま」とも言った。ソフトボール中に「タイム」とは云わず「げっちょ」と言って試合を中断した。

 

けっぱんずく(けっぱんづく)

けつまずく、の意 。「つまづく」では無くて「つまずく」なので、「けっぱんずく」と書くのが正しいのだろう。

もっとでけっぱんずきょーった(もう少しでつまずくところだった)

けなりー ・
けなりい・
けなるい

羨ましい。

●森繁久弥主演の昭和の初期の大阪を舞台にした映画【夫婦善哉】の中で「羨ましい話」を聞かされた女性が、今ならば「ごちそうさん」とでもいいそうな場面で「けなりいけなりい」と言っています。
つまりこの言葉は関西弁でもあるという事なのでしょう。

あそこのうちぁぼっこー分限者じゃけぇけなりーわ(あそこの家はすごい金持ちだから羨ましい)。

げん

縁起。

げんが悪い(縁起が悪い)。

けんびき

肩甲骨よりおよそ内側3cm -- 8cm の範囲で、肩甲骨とほぼ同様の上下幅を持った場所。

肩凝りの場所の表現に使われる。日本(備前)語の「肩」は範囲が広く、上下では後頭部から背中の上部(肩甲骨下縁)、左右は両側の肩関節(肩関節を含めて)の間すべてを指す。

けんびきが凝った(けんびきの場所が凝った)。

ごーがわく

腹が立つ、の意。
古くは中国地方一縁で使われていたとか。

 

こーこ・
こうこ

大根の漬け物の事。白菜など大根以外の漬け物は「こうこ」とは呼ばず、単に漬け物と言った。 丁寧に「おこうこ」とも云う。

こーこ、ちょうでぇ(沢庵を下さい)。

ごーら・ごうら

石の事。おもに石といっても川にある石。また渓流の石。時には畑にある小石の事。

畑のごーらをひらわにゃーおえん(畑の小石を取り除かないといけない)。

こう

●買うの意。
従って右のような一見、買ったのか借りたのか釈然としないような場合でも意味は歴然としている。

●また「飼う」も同様に「こう」になる。
朗読で「猫をこーとるんじゃ」では飼っているのか買っているのか区別が難しかったりする。

(1) 鍬をかってきたよ。へじゃけど、どーせこうてこにゃ(鍬を借りてきたよ。でもどうせ買わなくちゃ)。
鍬を買ったのなら、「こうてきた」と云う。

(2) ぎょうせんこうてーな(水飴を買って)。

こうじく 頑固な、の意。

同じ意味なら、備前では「へんこつ」の方が一般的かもしれない。アクセントは「こう」にある。
こうじくな奴(頑固な奴)

こうしゃく

●こうしゃくしぃ(講釈をする人)」という使い方をする。

「口答え」とは意味が違う。
よく言えば「物知りだ」、悪く言えば「口数が多い」、もっと悪く言えば「へらず口ばかりたたく」。いずれの意味でも使うが、かならず一度は口でやり込められた経験者が使う言葉。

●えーつぁこうしゃくしぃじゃけーのぅ(あいつは口が達者だからなぁ)。
●そーいぅおめーはなんもいわめーが(そんな事を云うお前さんは何も反論しないだろ)。

「あいつは口がようもとおるからなぁ。」も同じ意味。

こぐ

何かを削り取る事。自動詞形は「こげる」。

(1) 脱穀する。
アクセントは「こ」にある。
名詞形は「いねこぎ」

(2) 木や石や草を削る。
アクセントは「ぐ」にある。もっぱら大工用語。

(3) 深林や深雪に分け入る事。
アクセントは「こ」にある。この場合、大自然の一部を削るという意味。これが「踏み込む」という意味に転化した。

*鉛筆を削るのを「こぐ」とは云わない。
*嘘を言うのは「こく」。
*おならをするのは「こく」「ひる」「くる」。
*舟を「こぐ」のは丸木舟を作るという意味。舟を漕ぐのは誤用で、正確には水を「こぐ」と云うべきだと思っている。

(1) あしたりゃー稲をこぐねぇー(明日は脱穀しよう)。

(2) 木のかわーこいどけー(木の皮を削っておきなさい)。

(3) がっそをこぐ(密林に分け入る)。

こげ

「こげる」という動詞の名詞形。
「欠損物」の意。焦げ付いた物、という意味ではない。
アクセントは「げ」にある。

こげが出来る、という風に使う。

昔、縁日でうまく型抜きできたら賞品を貰える遊びがあった。 大抵途中で型が欠けて失敗する。「あっ、こげができた。」と言って。

こげる

●欠ける、の意。「こぐ」の自動詞形。

●「こげる --> かげる --> かける」と変化したものか。
備前では「焦げる」ことを「くぎる」と言うので問題は発生しなかっただろうし。

アクセントは「る」にある。なお「こげる」と同じ意味で「こける」とも言った。この場合もアクセントは最後の「る」にある。転ぶという意味の「こける」は「け」にアクセントがあり容易に区別がついた。

あっ、歯がこげちゃった(歯が欠けた)。

こごむ

(1) 沈殿する、の意。

(2) かがむ・しゃがむ、の意。

(1) おりがこごむまでまたにゃーおえん(水中を漂う沈殿物が底に落ちるまで待たないといけません)。

こさげる

削り取る、の意。

「こさげる」と「こぐ」の使い分けが今一つ不明瞭のようだが、
およそ、以下のように言えるかも。
もともと別の物が一緒になった物を再び分ける場合は「こさげる」で、
元来、一体の物を削る場合には「こぐ」と言う。

●おこげは釜からこさげ取らんと(「おこげ」は釜から削り取らないと)。

●黒砂糖を使うにゃーまずこさげ取らんと(黒砂糖を料理に使うにはまず塊から一部をはぎ取らないと)。
この場合は「こぐ」を使った方がいい。
黒砂糖を使うにゃーまずこがんと。
なぜなら「こさげる」を使うと砂糖壺から黒砂糖を全部とり出してしまうような意味にもなるから

こざらかす 子供をあやす。なだめる。備前方言(*1)。  

こすい・
こしー

ケチ、の意

ぼっけーこしーなー(ひどいケチンボだな)

こずく

咳をする意。
アクセントは「ず」にある。激しく咳き込む場合には「こずきあげる」と云う。冬場の常套句でした。

備中の北部では「たぐる」と言う(*4)とあるが、実際には現地で聞かれない。 備中方面で「こずく」は使われていないよう。相手に叩く行為を「こづく(小突く)」と言うがこちらは標準語。

(1)こずくばーしょーりゃー、止まる咳も止まるまーぜー(咳ばかりしていると止まる咳も止まらないだろう)。

(2)こずくのに効くクスリゅくんせー(咳止め薬を下さい)。

こぜる

「こじる」の訛りだろう。
アクセントは「ぜ」にある。

ただ単にひねるというのでは無く、テコの原理で棒を使って隙間を押し広げる場合に使う。

無理にこぜりょーるとめげてしまうねぇ(無理にひねって押し広げようとしていると壊れてしまうでしょう)。

ごそ・
ごそっぱち

「がっそ」と同じ意味・用法。人が踏み込めない程に草木が繁った様。
アクセントは「ご」にある。

「ごそ」だけはさらに転用が進み、右記のような用法も。

例文は「がっそ」を参照の事。

●おえーぉごそにしてしもーてぇ(座敷を散らかしているなあ)。
これは次のように言い換えられる。
●おえーぉしろきまわしてぇ(「しろく」を参照)。

こそばす・
こそばかす・
こそばいー

●こそわす・こそわかす・こそわいー
●くつわす・くつわかす・くつわいー
●くすわす・くすわかす・くすわいー
以上はいずれも同じ意味で、順に「くすぐる・くすぐる・くすぐったい 」

  

ごた・
ごだ・
ごじゃ・
ごじゃくそ

無理・無茶、の意。「わや」とも云う。

アクセントは「ご」にある。「ごだ」あるいは訛って「ごじゃ」とも言う。

●ごたーゆーな(無理を言うな)。
●ごだばーしょーる(無茶苦茶している)。

ごちー
ごっちー

「ごつい」が訛ったもの。「大きな」と云う意味で使用される事が多い。
訛らずに「ごつい」と言う場合には本来の意味で「頑丈な」になる。
「ごつい」「ごっつい」「ものごっつい」と変化します。

ごちーあかちんぢゃ(大きなカサゴだ)。ごっちー(大きいなぁ)。

ごっつぉう

ごちそう。発音が難しいので。

ごっつぉうさま(こちそうさま)。

ごっとん

泥棒の事。

「取る」がゲットで「取った」はゴット、「取ってしもうた」はゴットンなんよ、と英語の教師がゆよーりました。

●なんでも、ゆんべ、ごっとんがへーったてー(なんでも昨夜泥棒が入ったのだそうな)。

こっぱん
コッパン

蕁麻疹の際に出来る白い大きめの丘疹を指す。
赤い皮疹は一般的に「ほろせ」と言う。
アクセントは「こっ」にある。

例としては、飲酒後に出てくる蕁麻疹。
高頻度に見かける症状では無いため、いつの間にか「ほろせ」と混同されるようになった。

ごてる

●不平不満を言う事では無い。
状態が悪化する・揉め事が発生する事。

ごてっしもーた(面倒な事になった)。

こねーだ

方言と云うまでもなく、「この間」が訛ったもの。日常会話では頻用される。

  

こびんちょー

小さな、という意味。
アクセントは「こ」にある。
暗に「動物」を対象にした言葉であり、通常「植物」や「無生物」には用いない。

例えば、子猫・子犬・小兎・子供などが対象になる。

この魚はこびんちょーじゃけーにがしたろー(この魚は小さいから逃がしてやろう)。

こま・ころ

おもちゃの車の車輪。自転車の補助輪もこの類。
アクセントはいずれも「こ」にある。

おもちゃの車のころが取れてしもーた。

こまい

小さい、という意味。「こんまい」とも言う。

アクセントは「ま」にある。ただし次のように訛る場合、アクセントは「こ」にある。普通は訛って「こめー」「こんめー」「こーまい」となる。【類】「ちまい」

これらの言葉のうち備前とは違い備中では「こまい」「こめー」しか使われないとか。

こまい犬じゃ(小さな犬だ)。

こまめ

小さめ、という意味。

アクセントは「め」にある。
一方「まめまめしい」という意味の場合のアクセントは「こ」にある。

「こまい(小さい)」からの派生語かと。同様に「ちまい」からの派生では「ちまめ」「ちんまめ」になるが、これはあまり使われなかった(使われなかったわけではない)。

漬け物は、もちーとこまめに切らんと、食いにくかろう(漬け物はもう少し小さめに切らないと食べにくいだろう)。

こまめる

小さめにする、という意味。

「こまめ」からの派生語かと。「ちまめ」からの派生語として「ちまめる」があってよさそうだが、それは無かった、と思う。
アクセントは「る」にある。

 

ごめんせえ・
ごめんせー・
ごめんさい

ごめんください。
他所の家を訪問した時の挨拶。

また、さようなら、の意味でも使う。

備前南部(玉野方面)では「げいさりませー」と言ったよう(*2)。

●「ごめんなさい」は「こらえる」という動詞を使って「これーてつかーせぇ」と言う。

こらえる

許す。

アクセントは「らえ」。

これーちゃらー(許してやるよ)。

ごろごろ

「かみなり」の意。
幼児語。

 

ころくに

「ろくに、ろくすっぽ」の意。
アクセントは「こ」にある。

●ころくに仕事もできゃーへんのに(まともに仕事もできないのに)。

ごろた

丸太の事でもいいのだが、もっと何にでも使う。両手で抱えるか、それ以上の大きさの物体。大きな木切れとか、ドラム缶、粗大ごみ。

このごろたをどねんかせー(この塊をなんとかしなさい)。

こうぇえ
【標準書式は「こわる」のようですが、意味と発音を勘案すれば「こゑえ」が正しい】

●水分が抜けて固くなった状態。
●旧仮名遣いでは「こうぇえ」を「こゑえ」と書く
●「こうぇえ」と 「こわい」はよく似た発音になるが、 備前では「ゑ」と発音しているので聞き分けは難しくない。
それに怖いと云う意には「きょうてえ」を使う。

【参照】ようぇえ

めしィこうぇえが。(ご飯が固めだよ)

ごんぎょー(ごんぎょう)

れんげ、正確には「れんげそう」の意。

美作の方では「ごんげ」、備前でも和気・長船では「ごんぎょう」、邑久・玉野方面では「ごぎょー(ごぎょう)」になる。

「ごんぎょう」は意味が勤行とあまりにも違うので、すぐに違いが判るのだが、春の七草の「ごぎょう」は植物なので、どちらの「ごぎょう」か区別がつかない。つまり春の七草には「れんげ」が含まれていると長い間勘違いしていた。

単に「れんげ」と言えば仏様が座る「ハス(蓮)の花」の事。

【植物】

ごんご

津山(美作地方)の方言でカッパの意。

一般的に妖怪を表現する言葉には「がんご、ごん、がご」等、中四国地方だけでも各種の言い方がある。
一般的な意味は恐ろしい化け物。個人的には「ごんごち」【注:左記は山口県の言い方で「河童」の意味は無く恐ろしい化け物】と云う言葉が気に入っています。
広島方面では「河童」を「エンコウ」と云うようです。

備前では少なくとも大正時代末には「かっぱ」といっていた。

こんこん

狐・きつね・キツネ。幼児語。

「こんこんずし」とは「きつねずし」のこと。

ごんた わんぱく、の意。

備前でも東の方言。
「ごんたくれ」とも。
ざい 在所の「在」。東備ではあまり聞かない。
南備の下津井辺りでよく耳にする。
ほぼ次のような文脈で使われる。

あんたぁどこのざいでー(どちらの出身ですか)?
じげのもんじゃーあるめー(地元の人間ではないでしょう)。
さいばる でしゃばる・口をさしはさむ。
備前でも少し東の地域が本場の言葉。アクセントは「ば」。
おめーはさいばらんでもえーの(お前は、口をさしはさまなくていいの)。
さかい (1) 急な・急峻な、の意。

馬の鞍のような地形では尾根筋に対して直角の方向に道がある場合、その道が鞍の底部の峠を越える場所を「たわ」と呼ぶ。この坂道で勾配が急で険しい場合などに「さかい」と云う。アクセントは「か」にある。アクセントを「い」に置くと「境」の意味になる。

東の備中方面、あるいは南の四国方面では同じ意味で「きぶい」と言うらしい。

反対語は「なるい」

(2) 厳しい、猛々しい、の意。
(1) この道ゃーさかいけー周りの山がひくぅーみえるんじゃ(この道は急峻だから周囲の山が低く見えるのだ)。

(2) あんたーさけー事を言うのー(あなたは厳しい事を言いますね)。
さかしな・
さかへこ・
さかとんぼ・
さかてんぼ
●あべこべ・逆・さかさま、の状態。
アクセントはいずれも、最初の「さ」にある。
個人的には「さかへこ」よりも古くから「さかしな」を使っていた。
或る時から急に「さかへこ」が流行り出した。
この「へこ」は物類称呼によれば西国言葉で「ふんどし」の意。
だから意味は「さかさふんどし」になる。
そういえば「さかふん」とも云っていた。
「さかさふんどし」--->「さかふん」--->「さかへこ」--->「へこさか」--->「へこ」

「さかとんぼ」は大人が子供に対して使う言葉で、上下が逆の状態だけを示す言葉。
●シャツの前後をさかしなに着とるがな。

●服の表裏がさかへこじゃ。

●溝にはまってさかとんぼになっとった(【普通、主語は子供】溝にはまり込んで頭と足が逆さまになっていた)。

さくい・さくゐ

●(1) 中身がスカスカだ、の意。
例えば岩が「さくい」となると「軽石」になる。

●(2) 「脳みそ」がスカスカだ、つまり「まぬけ」の意。
下品な表現でほとんど子供が使った。

●「さくぅいー」と聴こえる。
アクセントは「くぅいー」にある。

●このスイカーさくぅいーのぅ(スイカがたなおちしているよ)。

●「えーつはさくぅいーけぇのぉ(あいつは間抜けだからなぁ)。」

さげる

●下痢をする事。
アクセントは「げ」にある。アクセントを「げる」に置くと「手に荷物を(ぶら)さげる」になる。
●名詞形は「はらさげ」。

【付】物を持つ、という意味は標準語だと思うが、念のため記す。
●(い)「こりょーさげてー(これを持って下さい)。」
さらに誤解を避けるため、次の事項を記す。
●(ろ)「こりょーさげーてー(これを探して下さい)。」

はらーひぇーとるとはらさげょーするねぇ(お腹を冷やしていると下痢するよ)。

ざざ

●水が激しくしたたる様を表す接頭語。
アクセントは無い。
●使い方は右記のような場合に限定される。

【付記】「ざんざんぶり」つまり大雨という云い方があるが、省略して「ざざぶり」と云うことが稀にあった。これに対して「ざざもれ」を「ざんざんもれ」とは云わなかったような気がする。

ざざもれ(ひどい水漏れ -- 例えばタルからの水漏れ)。

天井からざざもれじゃが(天井からひどい雨漏り)。

ささらほさら

●(1) めちゃくちゃ。
アクセントは「さ」さら「ほ」さら、の二ヶ所にある。最初の「さ」を「ほ」よりも強く言う。

同じ「めちゃくちゃ」でもササクレだった壊れ方をした物に使う。
例えば、ホウキ・筆・紙が爪で引っ掻いたようにギザギザに破れている等。

●(2) 散々な目に遭う。

(1) 筆の先がささらほさらじゃ(筆の先が【つぶれて】めちゃくちゃ)。

(2) 今日は事故に遭ーてささらほさらじゃ(気もそぞろだ)。

さし/しな

●〜途中、の意味。

●くいさし(食べかけ)・のみさし(飲みかけ)・しさし(やりかけ)などと使う。

●一方で、きさし(来さし)とは云わず、「来しな」あるいは「来がけ」と云う。

●「さし」では無く「しな」を使う場合は「行きしな・いきしな」「帰りしな・かえりしな」「出しな・でしな」「入りしな・はいりしな」「来しな・きしな」「いにしな【帰る途中】」「上がりしな・あがりしな」「降りしな・おりしな」「寝しな・ねしな」がある。

●さらに「ねさし(睡眠が途中で妨げられた様)」「ねしな(入眠期のウトウトしている様 -- この場合の「しな」は動作の始めを意味する)」のように両方の言葉が使われる場合もある。

●「さし」を使う場合には標準語「かけ」を、「しな」を使う場合には標準語「がけ」を使って置き換えられる。

●しさし(やりかけ)の仕事があるけーいぬわ(やりかけの仕事があるから帰るよ)。

●きしなにひょんなげな物をみたが(来る途中で奇妙な物を見たよ)。

さし

物差し、の意。

 

さでくりかえす

タンスの中のような具体的な物でも、混み入った事情でもいいが、めっぽうほじくり返す事。

そねーにこめー事を、さでくりかえさんでもえーが(そんなに些細な事をほじくり返さなくてもいいでしょうに)。

さな

(1) 五右衛門風呂の底板の事。アクセントは「な」にある。

(2) 地名では、低湿地を意味したようだ。出典は忘れた。真田十勇士で有名な「さなだ」は、湿田という普通名詞地名なのかも。

風呂上がる時、さなぁ上げて、だびすぅ抜いてーて(風呂上がりに、風呂の底板は、上げて、風呂の水を落としておいてください)。

さばる

(1)(ドアの取手などに)つかまる 。抱きつく。
(2) ずっと接触した状態を保つ。標準語ではうまく表現できない。

いずれもアクセントは「ば」にある。

「さわる」は触るとは違う意味で使っていた(「さわる」を参照)。

(1) そけーさばりちぃーとけー(そこにつかまっておけ)。

(2) 犬がさばりつぃーとるがな(犬がまぶれついている)。

さら

●(1)「新しい」 という意味。
「さ」にアクセントがある。
「さらっぴん」とも云う。
関西方面でも使う。
古語。

●(2)「皿」という意味なのだがちょっと違う。
アクセントは「ら」にある。
カッパではないのだから、頭に皿は無いにもかかわらず、
あるように云う。
もっぱら頭部外傷の際に使う。

●膝蓋骨にもこれと同じような表現をする。
「膝のさらーせわーねーか。」

●(1)さらの服(下ろしたての服)。

●(2)あたまのさらーせわーねーか(頭の皿は割れていないか --- 頭はどうもないか)?

さらえる

(1) 食事を残らず食べてしまう。

(2) すくい上げなければいけない物を全部拾い上げる、の意

関西方面を中心に西日本一円で使われている言葉なので、方言といえるかどうかは?

 

さるこ

子供用の袖無し綿入れ上着。
ちゃんちゃんこ。
アクセントは無し。

子供用の丸袖の綿入れ上着は「はんちゃ」。

さわり

たたり。
アクセントは無い。
動詞形は「さわる」で「祟る」。

そねーな事をしょーりゃーさわりがあるんじゃけー(そんな事をしていると祟りがあるんだから)。
【例えばミミズにションベンをかけるとおちんちんが腫れる】

さわる

祟る。
アクセントは無い、あるいは「る」。

●お化けに祟られるのが典型。そのせいか、この動詞は受動態で使われる。

●標準語の「触る」という意味では「さわる」では無く「さばる」「いらう」「ふれる」と言うので勘違いする可能性は低い。

そねーな事をしょーりゃーさわられるんじゃけー(そんな事をしていると祟られるんだから)。

さんきち

5-6月頃、木の葉を食い荒らし、 触ると皮膚炎を起こす毒毛虫。
岡山では別名「いら」乃至「いらさんきち」の事。
アクセントは無し。

以下は想像です。
備前では明治から大正時代にかけて、納屋で蚕を飼っていた。そして「蚕」のことを「さんきち」と言った。そして蚕を飼わなくなってから「さんきち」は毛虫一般を指し示す言葉に転化した。

「さんきち」さんに刺されたか(毛虫に刺されたか)?

さんにょう

計算、考慮。

アクセントは無し。

そりゃーさんにょうにいれとかんと(それは考慮していないと)。

しきーつく・
しくいつく・
しくゐつく

くっついて離れない、の意。

何かの拍子にくっつくという意味。焦げ付くケースで多用されるため、焦げ付くという意味が付与されている事が多い。発音からすれば「しくゐつく」と書くのが正しいかと。

服にガムがしきーつぃーてとれりゃーせん(服にガムがくっついてとれない)。

じげのもの・
じのもの

これは方言ではないでしょうが、使い方が違うような気がするので。

●「じげのもの」とは地元の人間という意味。

●「じのもの」とは地元の農産・海産物という意味なのだが、時として地元の人間という意味でも使う。

例文は「ざい」の項を参照の事。

しで

接続詞、〜になってくると、の意。

としをとりしで、はがおろーなる(齢をとってくると歯がまばらになる)。

じぶ

篩(ふるい)の事。
アクセントは「じ」にある。

【農業】

しむ

「しみる」が訛ったもの。
ヒリヒリした痛み。
アクセントは「む」にある。

●傷にしむがー(傷が痛いな)。

しもぶくれ

しもやけ、の意。

アクセントは無い、敢えて云えば「れ」にある?

 指がかいーのぁしもぶくれのせいじゃ(指がかゆいのはしもやけのせいだ)

しもや

便所。
母屋の中に造られた便所では無く、別棟として単独に建てられた便所。 農家では土足で使える便所も必要だった。

 

じゃ

だ。(古語)

そうじゃ(そうだ)

しゃーけど

だけど、の意。
多分「せやけど」が訛ったものだろう。
アクセントは「しゃ」にある。

しゃーけど、そねーなことがあろーか(だけど、そんな事があるだろうか)。

しゃしゃらまご

玄孫。
「やしゃらまご」とも。

 

しゃーせんご・
さいせんご

いたどり。

アクセントは各々「しゃ」「さ」にある。
時々食べていた。
備前南部(玉野)では「しゃーじ(さいじ)」と言った(*2)。
しゃーず、とも言った地域もあるよう。

備前ではおよそ以上の三通りの云い方があったよう。

●「しゃじなっぽ」という云い方は多分、備中方面の云い方で、個人的には「しゃーじ」+「なっぱ(菜っ葉)」の合成語だろうと思う。

【植物】

しゃりき

荷車・大八車。
ちなみに「ねこ・ねこ車」は一輪車の荷車。

「あたりきしゃりきのコンコンチキ」と言う文句の中に「しゃりき」は 登場します。

しゃーりきひーてゴミひろい(荷車を引いてゴミ拾い)。

しゅう

衆の「しゅう」。
複数形を表現するための語尾。

おなごしゅう(女達)。おなごし。
おとこしゅう(男達)。おとこし。

最後の「ゅう」は、面倒くさいのか、はっきり発音しない事が多い。

例文は「よぼう」の項を参照の事。

しゅむ

【味がよく】しみている、の意。

それ以外にも、一般的に液体が「染み込む」事。

●でーこんに味がぼっけーしゅんどらぁ(大根にいい味がついているなぁ)。

●そのシミどねんしたんならー? 醤油がまけてしゅんだんじゃが(醤油がこぼれてシミになったのです)。

しょいこ

背負って荷物を運搬するための道具 。
「せこ」とも言う地方があったそうだ。

木の枝で作った割り木をかたぐための「しょいこ」や、編竹製の「まつご」をいれる「しょいこ」など、いろいろありました。

しょうやく・
しょーやく

サツマイモや大根のヒゲを取って収穫後のととのえをする事。

備前・備中とも南部で使われた言葉のようだが、個人的には聞いた事すら無かった。
邑久での使用は確認済み。
アクセントは「しょうや」にある。

 

症状を表現する反復言葉

●イジイジする(軽いかゆみ)
●ザクザクする(化膿性病変の痛みに)
●シクシクする(歯痛に使う)
ゾンゾンする
●ピリピリする
フクフクする
ムシクシする

 

しょっくん

諸君では無い。
食用ガエル・ウシガエルの事。

結構各所で通じる言葉だったのね。

じょー

間。

●【例】あさまのじょーにかたづけんと(朝の間に済まさないと)。
【注】「あさま」は朝の間という意味では無く、朝という意味。

 

しょたいば

台所、の意。板場とも言う。所帯場と書いて岡山訛で「しょてーば」と言う。

 

じょん

自由、の意。自由が訛った物。方言とも思えないが一応挙げておく。

じょんならん(自由にならない・自分の思い通りにならない)。

しょんべん草

「ギシギシ」という名前の野草。あるいは、それに似た「スイバ」という野草かも。

【植物】

じるい・
じゅるい

普通は訛って「じりー・じりぃ・じゅりー」等と云う。湿ってびちゃびちゃした様。

この道じりーが(道が【雨などのため】ぬかるんでいるよ)。おめーの鼻ちーと、じるーねーか?うんにゃ、いっこもじるーねぇ(お前、水鼻になってない【つまり風邪じゃないの】?いいえ、少しも水鼻ではありません)。

しろく

(1) 「拡げる」の意。
(2) 「ちらかす」の意。
(3) 田に水を引いた後、水田を平らにする事

アクセントは中央の「ろ」にある。

(1) 花見に行って「雨降りょーるけぇゴザぁしろかんと待っとこーえ。」(雨が降っているのでゴザを拡げずに待っていましょう)

(2) ゴミゅーしりぇーたらおえんよ(ゴミをちらかしたらいけないよ)。

(3) けーから田をしろかんとおえん(これから田を代掻きせにゃーならん)。

しわい・
しわぇ・
しゑえ

(1) しなってなかなか折れない様 。
(2) 一筋縄ではいかない様。

実際の発音は「しゑえ(しうぇえ)」。
ケチなのではない。ケチは「こしー」と言う。

●この生木はしおーてなかなか折れんが(この生木はしなってなかなか折れない)。
●するめはしわぇんで、年寄りにゃ食えん(するめは噛み切りにくいので年寄りには食べられない)。
●あいつはしわぇやっちゃ(あいつは煮ても焼いてもくえん)。

しわむ
しわる

「撓む(たわむ)」の意。
「しわむ」のアクセントは「む」、
「しわる」のアクセントは「わ」にある。

木の枝に乗っている子供を見た人が「えだがしわみょーるけぇあぶねぇーぞ(枝が曲がりつつあるから危ないぞ)」

〜しんさい
〜しんちゃい

●しなさい、の意。
●岡山では美作地方(津山)の方言で、動詞の語尾に「さい・ちゃい」をつけて命令形を表す。
●備前では「られー」、備中では「ねぇ」を動詞の語尾につけて命令形 を表す。
●備中の命令形「ねぇ」は備前ではまったく別の意味になる。
【参照】「ねぇ

備前の命令形は、
せられー(しなさい)、
みられー(見なさい)、
こられー(来なさい)、
「られー」が基本形。
【参照】「られー」

しんや

分家、の意。
アクセントは「や」にある。

●「しんたく」とも言った。

 

すえる

(1) 腐る。古い標準語らしい。備前ではちょくちょく使われていた。
アクセントは「え」にある。

(2) 神様にお供え物をする。
アクセントは「える」にある。

(3) 「やいと」をすえる(する)、と使う。
アクセントは無い。

(4) 据え付ける。これは標準語。

(1) めしがすえっしもーとる(ご飯が腐ってる)。
(2) おみきをかみだなにすえてぇて(お神酒を神棚にお供えして下さい)。

ずくし

柿の実が熟れて軟らかくなった物。 「ずくしがき」とも言う。
アクセントは「く」にある。

ここから一歩転用がすすんで、果実の柔らかい物を指して「ずく」と云う。

【農業】

すくも

モミスリ後のモミガラ。
アクセントは「も」にある。

【農業】

すける

物を「置く」事。
「る」にアクセントがある。

この櫃、棚の上へすけてーて(この櫃を棚の上に置いて下さい)。

ずたこ

びしょ濡れ。

泥田の意味があったようだ(*1)。

どしゃぶりにおーてずたこになってしもーた(ひどい雨のためにびしょ濡れになってしまった)。

すっぽん

ヤマブキの木。
物類称呼によれば、備前で「すっぽん」とは「アサザ」とあるが、それは聞いた事が無い。

茎ですっぽん鉄砲を作っていました。

【植物】

すねぼん・
すねぼんさん・
すねぼうず・
すねぼーず

膝の意。
アクセントは「ねぼ」にある。

すねぼんをすりむぃてしもーた(膝に傷を負ってしまった)。

すばびる

縮んでシワのよった様 。

「ほとびる(水でふやけてシワのよった様)」という動詞は「ほと(くぼみ)」+「びる」=「一時的にくぼみを作る」あたりが語源でしょうから「すばびる」という動詞も「すば」+「びる」でしょう。
しかし「すば」は意味不明です。個人的には「すば」は水分が抜けて縮んだ物を指すのではないかと思っているのですが。

以下は妄想です。「すば」の反対語を「つわ」あるいは「つや」という。単独で使う場合には「つや」。他の言葉にくっついて使う場合には「つわ」となる。意味は、水分をたっぷり含んでみずみずしい物。「つやつや」あるいは「つわもの」などと使う。

桃がすばびてしもーた(桃が食べられなくなった様)。
【ちなみに顔がすばびるのは老化現象。】

すばぶる

(主として乳に)吸いつく。

●はっきりとはしないが「すばぶる」が他動詞で「すばびる」が自動詞ではないかと。

乳がすばぶられて、すばびてしもーた。(意味は各自考えて下さい)

すばろーしー ・
すばろうしい

備中方言との事なのだが、備前でも使う。貧相な、と云う意味。

 

すわびる・すわぶる

それぞれ「すばびる・すばぶる」の意味らしい。辞書にはこちらの表記で載ってたりする。

 

ぜー

動詞(未然形)の語尾について(「うぜー」が接続)可能性の高い推定(発言者はほぼ間違いないと思っている)を表す。
形容詞や副詞の語尾にも接続すし、同様の意味を表す。

●否定の推定は「まー」を使う。

こねーにてんからぼしが続きゃー稲もかりょーぜー(こんなに日照りが続くと稲も枯れるにちがいない)。

せーせー

しばしば

せーせーせーそくせられー(しばしば催促しなさい)。

せーの

荷物を複数人で持つ時の掛け声なのだが、次第に変化した。

「せーの」---> 「せーのーで」--->「いっせーのーで」
次第に長くなった。
最後の「いっ」が入った言葉を初めて聞いた時には、
ガックリと力が抜けると同時に、此奴は手伝うのが嫌でふざけているのだ、と思った。

 

せぐ

(犬が)吠える、の意。
アクセントは「せ」あるいは「ぐ」のどちらか。
いずれのアクセントでも使っていた。

猫の喧嘩の聲は「いがる」と云う。
牛や鶏の聲は「鳴く」と云う。
犬以外の用例を知らない。

まーたせぎょーらぁ(また犬が吠えている)。

ぜぜ、ぜぜこ

銭、の意。幼児語。

祭りでぜぜこを落としてしもーたか(祭りで銭を落としてしまったか)。

せせる

いじる・触る。事態を悪化させる事が予測される場合に使う。「せせくる」も同じ意味で使う。
【参照】ひねくる

●せせりめぐな(いじって壊すなよ)。
●【犬を】せせるばーしょーるとかぶられるんじゃ(触るばかりしていると咬まれるぞ)。

せっとる

「せっとる」とは備前では「急いでいる」という意味になるから、それが方言とは思っていなかったのだが、備中(*4)では「混んでいる」という意味になるようだ。
備前では「混んでいる」という意味なら「つんどる」と云う。
同様に「急がせる」という意味なら「せかす」と云うのだが、備前の東端の日生では「せかす」とは「からかう」という意味になるとか(*5)。

「えれーせっとるのぅ(ひどく急いでいますねぇ)。」
「どねんかしたんか(何かありましたか)?」

せど

●狭い溝のような土地、あるいは裏庭の意。

「せど」は瀬戸に通じる言葉のようで、両側を山に挟まれた狭い地形を指すもののよう。
JR山陽線を岡山駅から幾駅か東へ行くと、明治時代には物理村(もどろいむら)と呼ばれ山陽鉄道とともに瀬戸駅が出来た場所から1kmほど東は両側を山に挟まれた狭い地形がある(光明谷)。
そういった場所が「せど」だったのでしょう。
【参照】かど

少なくとも岡山〜山口にかけ中国地方一円でかつては使われていた言葉のよう。

せな

背中。アクセントは「な」

せなーなげーてつけぇ(背中を流して【洗って】下さい)。

以下は意味不明の文章ながら比較用に:

●せなーなげてつけぇ(背中を投げて下さい)。
●せなーなごーしてつけぇ(背中を長くして下さい)。

せらう

「嫉妬する・うらやましがる」と云う意味。
小児に対して母親が使う動詞。
備前では南部の児島方言(*2と実地確認)。

せらわんの(【他人の持ち物を】欲しがらないの)。

せわ

面倒をみないといけない(助けが必要)状態。
普通、左記のように使う。

せわーねーか(大丈夫か)?

せわーねぇ(大丈夫だ)。

せんち 便所。 ***

せんばこぎ

長さ20cm程度の細い鉄の歯が櫛状についたもので脱穀に使った。
「かなこぎ」とも云う。

足踏み式でも脱穀機と名がつけば「せんばこぎ」よりも格段に脱穀の能率が上がった。

【農業】

せんばり

奪い合い・争奪戦
備前のかなり古い言い方。

一つしかねーおもちゃーせんばりえーこせんの(一つしなないオモチャを奪い合いしないの)。

そーけ・そおけ

竹で編んだザルで台所用品。
アクセントは「そ」にある。

【農業】

そーで・
そうで・
そーに・
そうに

「すぐに」の意。
アクセントは「そ」にある。

そーでみててしまうねぇー(すぐに無くなってしまうだろう)。

同じ意味で
そーにみててしまうねぇー。

そげ

指などに小さな木片が刺さったもの。
アクセントは「げ」にある。

備後では「そげら・そべら」という。

これとは別に栗や「ヒシ(池に育つ二棘を持つ味が栗に似た実を持つ植物)」の棘は「そげ」や「とげ」とは言わず、「いが」と言うなぁ。

とげ抜きでは無く、そげ抜き、となる。
そげがたって痛てぇけー抜いてぇーな(木片が皮膚に刺さって痛いから抜いて頂戴)。

そこいりまめ

落花生・南京豆の事。
南京豆は、草の枝から地面に下ろされた茎の部分に結実します。 ちなみに「そこまめ」とは足の裏にできるマメの意。

アクセントは「そこいり」あるいは「いり」にある。

【植物】

ぞぞけ

恐怖心を現す「身の毛」の事

ぞぞけが立つ(身の毛もよだつ)。

ぞな

断定・嘆息を表す。

おえんぞな(駄目です・駄目だよなぁ)。

そねーな

そんな。

●「そねーな」「あねーな(あんな)」「こねーな(こんな)」「どねーな(どんな)」という。

●「そがいな・そげーな」「あがいな・あげーな」「こがいな・こげーな」「どがいな・どげーな」は備前では使われず、備中の人からよく聞く。

 

そねーに・そがーに

そんなに 。

「そがーに」の方は備中の人から聞く。

そねーにせくな(そんなに急ぐな)。

【注意】「そんなに咳をするな」という誤解はまず発生しない。そう言いたいのなら「そねーにこずくな」と云う。

そばぇ・
そばえ

小雨。
雨雲を見ながら使う言葉なので「速く移動する雨雲」の意の方が適切かも。

発音からすれば「そべゑ」と表記するのが一番かも。

そべぇがきょーらぁ(雨雲が来ているなぁ --- 通り雨になりそうだ)。

そび 通常「そびをかう」と使って「反発をまねく」の意。 なにもそねーに、そびゅーかうよーなことをせんでもえーが(ことさら反発をまねくような事をしなくてもいいのに・寝た子を起こすようなマネをしなくてもいいのに)。

ぞんぞ

●「ぞんぞがする」「ぞんぞが立つ」「ぞんぞがつく」などと表現して、いずれも鳥肌がたつ、乃至、寒気がする、という意味。

ぞんぞがするけぇ、会社ぁ休まぁー(悪寒があるので会社を休みます)。

きょーぉてぇ映画じゃったけー、ぞんぞがたっとるがん(【これは感嘆文】鳥肌が立つほど怖い映画だったなぁ)。

ぞんぞん・ゾンゾン

●寒気がする、の意。
普通は「ぞんぞんする」と使う。

(1) 病気で発熱して悪寒がある時が典型的。
(2) 鳥肌が立つような怖い場面でも使う。

(1) ぞんぞんするけぇ、会社ぁ休まぁー(悪寒があるので会社を休みます)。

(2) きょーぉてぇ映画じゃけー、ぞんぞんするわ(怖い映画だから鳥肌が立つよ)。

たー

「とは」が訛ったもの。日常会話で頻用される。同じく「〜のは」は「なー」と訛る。

風邪たー言わん(風邪とは言わん)。自分なーやらん(自分のはあげない)。

たいぎ

普通は「てーぎ」と訛る。面倒な・やりたくない・退屈、の意。

「たいぎい」と言うのは倉敷弁。

(1) てーぎなわぁ(面倒だな)。

(2) 【手持ち無沙汰にして人に向かって】てーぎじゃねーか?(退屈ではありませんか)

たいこむし

タガメ。

【昆虫】

たう

空間的な意味で「足りている」、距離が足りている、の意。足りるが訛ったものかも。「たう」では無く、否定的な「たわん」と云う使い方が一般的。

足がたわん(足が届かない)。

たがう

(1) 筋骨系を外傷により痛める事。手足が急激な外力によって痛み出した場合に「たがう」と言う。従って、骨折もあれば脱臼・捻挫・腱断裂から単なる打ち身まで各種の状態を指す。
【参照】いたむ

(2) 間違い。

(1) ありゃ、足をたごーたがん(暗黙の内に足が痛いとも言っている)。
どねんしたんならー? すじぅたがえたんじゃがー(どうしたのですか? 【手あるいは足が】痛くなったんです)。

(2) 例文は「かたたがい」を参照。

たけ

きのこ、キノコの事。広島県では「なば」と云う。発音の微妙な差で「竹」の事にもなる。「きのこ」の方は「た」にアクセント、「竹」の方は「け」にアクセント。

個人的にはよく「タケノコ」と勘違いしていた。

「たけ」ぉひきーいこーえ(キノコ採りに行きましょう)。
と聞くと、つい唐鍬(とおぐわ)を取りに行くんですね。

だちん

ついでに、という意味。

これが「だちゅー」と発音される事もある。これは「だちん」+「とちゅう」=「だちゅー」。

●行くだちんにタバコをこうて来て(行くついでに煙草を買って来て)。

たった

(1) 足りた、の訛。
(2) 動詞の語尾に接続して「してやった」の意。

(1) よーけぇ飯ゅーついでくれたけーたったわ(たくさんご飯をよそおってくれたからおなかいっぱい)。

(2) 自転車が道の脇ぃ落ちとったけー助けたったわ(助けてやったよ)。

たてらかす

(1) 立て掛ける。
この意味では「よからす」とも言っていた。

(2) 立たせる。

(1) たけゃーかさがあるけー なやへでもたてらかしてーて(竹は嵩張るから納屋へでも立て掛けておいて下さい)。

(2) えーつぁーたてらかされとったぜ(あいつは立たされていたよ)。

たてる

(1) 立つ。

(2) 引き戸を「閉める」の意。最近の内外へ開けるドアに対して「たてる」を使用した記憶がない。

●「たてとけー」は「閉めておけ」になり、「たっとけー」は「立っていなさい」か「閉めておけ」かいずれかの意味になる。まぎらわしいので「たてっとけー」と言えば「立っていなさい」の意味になる。

(2) ふすまをたててーて(襖を閉めておいて下さい)。

【注】「てとけー」は「た」にアクセントを置く事により「閉めておけ」の意味になる。
「て」にアクセントを置くと「立てておけ」の意味になる。
しかし「たっとけー」ではアクセントでこの両者を区別の付けようが無い。

だびす

●「だびそ」とも言う。五右衛門風呂の下についている水抜き栓の事。樽酒や樽醤油の栓という意味でも使われた。

アクセントは無いか「す」にある。
備中の北部では「だべそ」と言った(*4)

「だぼ」から派生した方言のよう。
●「だぼ」-->「だぼそ」-->「だびそ」-->「だびす」

例文は「さな」を参照。

だまかす

●「だまくらかす(だます)」の短縮形だろう。
はっきりとしたアクセントは無い。
古い標準語かもしれない。

だまかしちゃーおえんぞ(騙してはいけないぞ)。

だらず・ダラズ

●岡山では美作地方から備後の中国山地にかけての方言で「怠け者・横着者」。

山陰方面が本場の方言。

だらずなやっちゃ(怠け者)。

だる

(1)「だるい」は形容詞だが、これは動詞。くたびれる・疲れる、を意味する動詞。古語。
形容詞ならば「だるくなる」と使うが、動詞では単に「だる」と言う。

(2) 天井の梁などが、下に向かってたわんでくる事。

(1) だってだってしょうがねー(疲れて疲れて仕方がない)。
だるばーで、へにもならん(疲れるばかりで一文の得にもならない)。

(2) 天井の柱がだってきょーる(垂れて来ている)。

たるき

屋根を支える木では無くて、作物を干すために使う長い木。

アクセントは「き」にある。

冬場、軒下に大根やタマネギを「たるき」に架けて干していました。

だんごばち

スズメバチ。

【昆虫】

たんころ

単車・バイク。
もうとっくに死語なのでしょうが、、、

アクセントはありません。方言というより符牒のような気がします。

「バタバタ」という言葉もバイクを意味する場合がある。ただ「ばたばた」という(空冷エンジンの)音をたてて走る物を指す言葉だったので、オート三輪やミゼットや原動機付自転車(言葉通りです。みかけは自転車です。)や陸王など、いずれも「バタバタ」でした。

だんだら・ダンダラ

(1) 服が泥や墨などでマダラ模様になる。綺麗な横縞や新撰組の服の模様のだんだらでなくてもよい。

(2) 山陰の方言でイシダイの幼魚の事。山陽方面ではサンバソウと言う。

泥水をかけられて服がだんだらこになった。

たんびゅーに

その度に・毎回・そのつど。

たんびゅーにみずーかえんとおえん(そのつど水を変えないといけない)。

ちーと

「ちょっと」が訛ったもの。少し、の意。
同様の意味で他にも「ちょびっと・ちょぼっと・ちょびーと」がある。
「少しは」という意味で「ちーとは(ちーたぁ)」と言う。

アクセントは「と」にある。

もちーと前へでられー(もう少し前へ出なさい)。

ちーたーあるこーえ(少しは歩きましょうよ)。

ちーときま

少しの間、の意。

ちーときま、まちょーりゃーバスが来るねぇ(少しの間、待っていればバスが来るでしょう)。

ちかまわり

近所、の意。

標準語かもしれないが、近頃聞かないので。
アクセントは「まわり」にある。一方「近道をする」の意味では「まわ」にアクセントを置く。

ちかまーりぅさがしてみらぁ(近所を探してみるよ)。

ちごう

違う、の意。
単なる訛りなのか否かは不明。

アクセントは「ご」乃至「ごう」にある。

まちごーてばー(間違ってばかり)。

そりゃーちごーとろー(それは違っているだろ)。

ちっこい

小さい、の意。

アクセントは「こ」にある。

ちっこいうおじゃのー。

ちばける

ふざける、の意。

アクセントは「ばける」にある。

「ちゃーける」とも云う。

●ちばけるな(ふざけるな) 。

●ちばけるばーしょーると、はりまわすぞー(寝とぼけた事ばかり言っていると、【顔を】平手打ちにするぞ)。

ちびる

すり減る。

中国地方一縁で使われている言葉なので、あまり方言とは感じられない言葉。
アクセントは無いか、「る」にある。

同様の意味で「へたる」も使う。

靴底がちびてしもーた(靴底がすり減った)。

ちまい

小さい、という意味。「ちんまい」とも言う。

アクセントは「ま」にあるが、次の訛の場合アクセントは「ち」にある。普通は訛って「ちめー」「ちんめー」「ちーまい」となる。【類】「こまい」

備前とは違い備中ではこれらの言葉が全て使われているわけではないようで「ちんまい」「ちんめー」しか使わないとか。

ちんめーうおじゃ(小さな魚だ)。

ちゃ

岡山県では美作地方から備中の山間部で使われているとか。

まるで「ラムちゃん」のような言葉使いになる。
個人的には山口方言だと思っていて、今でも使ってしまう山口方言の一つ。

おえんちゃ(駄目だっちゃ)。
念のため、山口方言では「いけんちゃ」になる。

ぢゃーてー

だそうだ。伝聞の意を表す。

嘘ばーぢゃーてー。(嘘ばかりだとさ)

ちゃらかす

ごまかす。

ちゃらかすばーすなぁ(誤魔化すばかりするな)。

ちゃんちゃん

一般の「おじさん」という意味なのだが見知らぬおじさんではない。子供が自分と仲良しの「おじさん」に対して使う言葉。 女子も同じ言葉を使ったのかどうかは不明。「ちゃんちゃん」は父親を指す言葉ではない。後の「ちゃん」の方にアクセントがある。

【父親が子供に】さー、ちゃんちゃんが来たけー、一緒に遊んでもらえ。

ちゅー・ちゅう

空、という漢字が一番近い意味になる。
視覚を使わずに物事を為す事。

●ちゅーで喋る(書かれた物を見ないで喋る)。

●あさまのくれー中でちゅーででんきのスイッチを押した(朝の暗い中で【スイッチが見えないのに】電燈のスイッチを押した)。

ちょー・ちょぅ

発音は「ちょぅ」の方をよく使う。
少し、の意。
「ちょい」の訛りか。
最近の若者言葉の「超」とは意味が異なる。

●ちょぅ下げる(少し下げる)。

ちょびっと・
ちょぼっと・
ちょびーと・
ちーと

少ない。
少し。

●ちょびっとばーな(少しだけね)。

ちょんぎーす

きりぎりす

 

ちりばね・
しりばね

服に飛び散った泥の飛沫。

靴を履いて未舗装の泥道を歩くと泥がズボンに飛び散った。「しりばね」ともいった。傍を通った自転車や自動車にかけられる場合でも「ちりばね」といった。

 

ちんちんばらばら

爆発により粉々になる様。先頭のちんちんがどのような意味なのかは不明。推測だが「珍々」ではないかと。元々は手品あるいは見せ物用語だったのかもしれません。悪乗りしてもう一つ。「ちんちんかいかい」これは「珍々怪々」。意味は読んで字の如し。

多分、いんちきおじさんが居た頃に、そういった人々が広めたのではないかと。だから方言とは言い難いような。例えば後の言葉では。「さーさ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい、親の因果が子にむくい(たたり)、生まれてきたのが、この子でございます。ちんちんかいかい、ききかいかい(奇々怪々)。お代は後でいいよ。」

ちょっきし・
ちょっきり

ちょうど 。ちょっきし、の方が普通に使用された。

ちょっきし半分(丁度半分)。

ちんぎる

ちぎる・ちょん切る、の意。
アクセントは「ぎ」にある。発音しにくかったためか、次第に使われなくなりました。

 

つえる (形が)つぶれる、崩れる、という意味。備中の山間部での使用は確認済み。

アクセントは「え」にある。
備前では聞いた覚えが無い。
大きな対象物に使用するようで「山がつえる(崩れる)」とか「橋がつえる」は言うけれど、
「プリンがつえる。」とは言わない、との事。

つく

「【魚を銛で】突く」の「つく」と同じく、「く」にアクセントがある。

意味は、土手を築く、石垣を築く、畔を築く、等のような「築く」という意味。

備前・備中・備後で使うようだ。

たのあぜょーつかんとおえん(田の畔を泥で【水漏れしないように】固めないといけない)。

この川岸ぁどねーして岩でついとんかのう(川岸をどうして石垣にしてあるのかな)?

つくり

刺し身の事。
普通は「お」を付けて、「おつくり」と言う。

 

つけぇ
つけー

●動詞の後に付いた丁寧語。

以下はいづれも「赤ん坊を背負って下さい」という意味の文章です。
【例1】あかごをおぶってつけぇ。【あかごをおぶってくんせぇ】も同じ意味
【例2】あかごをおぶってつかんせぇ。
【例3】あかごをおぶってつかーせぇ【備前ではあまり聞かない】

【参考】りんさる

●てごーォしてつけぇー(手伝って下さい)。

●食べてつけぇー(おあがんなさい)。

●ゆぜーたソーメンを「そうけ」へ「とりゃーげて」つけぇ(茹でたソーメンをザルに取り上げて下さい)。

つどう

予定が重なる。
最近の言葉では「ダブルブッキング」。
アクセントは「ど」にある。
中国地方全域で使われているよう。

そりゃーつどうけーあさってにまわそーえ(そうすると【行事予定が】重なるから【一方を】明後日に変更しましょうよ)。

つねきる

爪などで「つねる」事。
「ひねきる」とも言う。

なんもそねーつよーつねきらんでもえーが(なにもそんなに強くつねらなくてもいいのに)。

つみきる

爪か、あるいはハサミで物を切る、事。
アクセントは「つみ」にある。

花をつみきってちょーでー(花を【ハサミで】切り取って下さい)。【ハサミで無く、爪で花弁だけを取るのだと解釈する人がいるかも】

つむ

(1) 混雑する。岡山以外にも関西方面を中心にかなり使用されているよう。
(2) 切る。岡山方言で「爪をつむ」「髪をつむ」などの用法がある。

アクセントは (1) が「つ」に、(2) が「む」にある。

【(1)の意味で】前の方、車がえれーつんどるな(前の方で車がひどく混んでいるな)。
【(2)の意味で】よーさり爪をつみょーると親の死にめに会えんよーになるんぞな(【岡山の言い伝え】夜中に爪を切ると親の死にめに会えなくなるぞ)。

つめる

はさむ、の意。アクセントは「め」。何かに指などが挟まれた時に使う。ヤクザ映画などで当たり前のように使われているので標準語かと思ってました。

タンスの隙間で指をつめてしもーた(【箪笥を動かしていて】隙間で指を挟んでしまって【痛い】)。

つれなう・
つれのー

一緒に、の意。

のみのみー話もできゅーけぇ、つれのーてのもーえ(飲みながら話もできるから、一緒に飲みましょう)。

同じ動詞を二回続けて「〜をしながら」を表現する事は結構ある。「歩き歩き(歩きながら)・見ぃ見ぃ(見ながら)」等。

でーしょう・でぇしょう

「多少、少しだけ」の意。

でぇしょうすずしゅーなりました(少し涼しくなりました)。

てー・てや

文末に置いて依頼文を表す。

てごーしてー(手伝ってよ) 。芋ーくべてや(芋を火に入れてよ)。

てーてぇ・てーてえ

(1) 並大抵。

「大抵」の意味の「てーてぇ」と区別するため「てーーてぇ」と約1.5倍長く延ばして発音する。

しかし、そんな表記法は日本語には無さそうなので、仕方なく「てーてぇ」と表記した。
文末は否定形+推定(ないだろう)で終わる。

(2) いいかげん。

この場合は「て」と「て」の間を長く延ばさない。用法は右記のような場合に限られる。

(1) てーーてぇじゃあ済むまぁ(並大抵の事では済まないなあ --- 苦労しないと問題が解決しないだろう)。

(2) てーてぇにしとけーよ(いいかげんにしておきなさい)。

でーてぇー

(1) だいたい、およそ。

(2) 一体全体。

(1) てーてぇーの事ぁそれでええ(大抵の事はそれでよい)。

(2) でーてぇーでーがそねーな事をゆーた(一体全体誰がそんな事を言った)?

でがけ

出口、の意 。別に出口と決まっていない。入口でも「でがけ」という。出入口を家の中に入った場所。

でがけにおいとろーが(出口の所に置いてるはず)。

てごー ・
てごう

手伝い、の意

てごーしてー(手伝ってよ)

でこひこ

でこぼこ、の意

逆に「平坦・のっぺりした」という意味で「べったらこ・べっちゃらこ」と言う。
「べったらこ」の項を参照の事。

道がえろーでこひこしとる(道がひどく凸凹だ)。

でーれー

関西弁のどえらい、の意、あるいはそれが訛ったもの 。類:ぼっけー。

  

てっきゅう

魚を七輪で焼く時の鉄製焼き網。

これは標準語だと思うが、念のため。

  

てっぱらぽー

無一文・スカンピン。「でまかせ」という意味の「てっぽう」と同類かと。
アクセントは「てっ」にある。

●備前では「てっぽう」は「でまかせ」になるが関西辺りでは「っぽう」は無一文の意味になる。
また関東方面では「おけら」となる。

●麻雀で負けて「てっぱらぽー」になってしもーた(文無しになってしまった)。

●賭場では腹巻きの中に札をしまっていたので「はら」という言葉が「てっぽー」の間に入りこんだのだろうと想像している。

つまり「はらがてっぽーじゃ(腹巻きの中の札がなくなった)。」---「はらてっぽー」---「てっぱらぽー」

あくまでも金銭に対して使う言葉なので、頭がからっぽ、の意味での使用例は知らない。そのような場合は「あたまがさくい(実際の発音は【さきぃー】」とか「のーたりん」という言葉を使った。

てっぱる ●張り合う、競り合う、反目する、の意。

アクセントは「ぱる」
●(1) 【つっぱりな人に】そねーなてっぱり髪をせんでもえーがん(そんなにつっぱった髪形をしなくてもいいじゃないの)。

●(2) ロミオとジュリエットの家は「てっぱりおーとった」。

●(3) そねーにてっぱらんでもえーがな(そんなに意地を張り合わなくてもいいじゃない)。

(3)【注意】上記の意味は、発言者以外に相手と第三者がいる場合。そうでは無く、発言者と相手だけなら「そんなに俺の【言う】事が気にくわないのか」くらいの意味になる。

てっぽう・てっぽー

(1) でまかせ、ホラ話、の意。
次のような使い方をする。
●てっぽうをうつ ---- でまかせを言う。

(2) 「てっぽうとどき」。以下のような使い方。
●てっぽうとどきもせん----まったく足りない。

アクセントはいずれも「ぼう」にある。

●どーせてっぽーにきまっとらぁ(どうせホラ話にきまっている)。

●夏のたんぼにゃーなーんぼ水ぅやってもてっぽーとどきもすりゃーせん(夏の畑にはいくら水を撒いても足りる事は無い)。

てっぽううち

「ほら吹き・うそつき」の事。

 

てにあわん

手におえない。

大抵は「あのくそガキゃー」の後に続く言葉です。

昔は、警察ざたや、学校ざたにする事は無かったので「相手にしても仕方がない」という意味。

(1) てれんこてれんこ
(2) てれこてれこ

のんびりしている状態。

比較的若い人だけが使っていたので当時の流行語だったのでしょう。

てれんこてれんこしょーりゃー日がくれるねぇ(のんびり仕事をしていると夜が来るだろう)。

てんからぼし・
てんから

日照りで、水が無い状態。
アクセントは「からぼし」・「から」にある。

「干物」のような状態になる事を「てんからになる」と言う。

●こねーにてんからぼしが続きゃー稲もかりょーぜー(こんなに日照りが続くと稲も枯れるにちがいない)。

●マラソンすりゃーせーごはてんからになろーぜー(マラソンをすれば最後には脱水状態になるだろう)。

てんくら

瘋癲、の意。

(1) マトモじゃない、の意。
村の社会生活に馴染めない者(役立たず・ごくつぶし)。

(2) ある種の精神疾患を患った者、きちがい。「しんけい」とも云った。

以上のような意味なので、対象人物には聞こえないように小声で囁かれた。あえて対象人物に対して使用すると、当然ながら、相手を罵倒する最強の言葉になる。

●以下は憶測です。
この言葉の語源は「てん(癲)」にある。「てんくらい」の語尾が欠けて「てんくら」になった。「癲をくらう」とは癲というヤマイに冒されるという事。癲とは語義を調べれば分かるように「癲癇」や「瘋癲」をさす。「てんくら」の本来の意味は(1)ではなく(2)だったが、役立たずという意味では同じなので(1)の意味も持つようになった。岡山県では「てんくら」が「うそつき」という意味で使われるという書物が多いが、近年になり「てんくら」と「てんごう」を取り違いしたものだろう。

卑近な例ですが、近年に造られた言葉「ひきこもり」や「フーテンの寅さん」は典型的な「てんくら」です。

●さらに暴走します。
「てんくら」--->「てんから」--->「てんで」。こういう変化があったのでしょう。「てんから」とは『てんから駄目じゃ(まったく駄目だ)』という風に使い、後に否定語が来ます。何故否定語が置かれるのか、上記の説明で判るような気がしませんか。「てんから」の時代になると「てん」の本義は忘れ去られ「天から」という駄洒落的な解釈が為されるようになったが、本来は比喩表現であり「気違いほど・馬鹿ほど」という意味なのです。

えーつぁてんくらじゃけー(あいつはマトモじゃないから【近づかない方がいい】)。

てんごー(てんごう) (1) いたずら、の意。
アクセントは「て」。

(2) いたずら、から派生して「うそ」の意味としても使われる。
例文は「ほん」を参照の事。
てんごーばーしょーりゃーいがやってしまうねぇー(いたずらばかりしていると将来は不良になるだろうな)。

てんころ

小さな車輪の意。
アクセントは無し。

カタカタはてんころがついとるけーよーころがる(子供の玩具のカタカタは小さな車輪が付いているからよく転がる)。

てんころづち

きぬた、砧

木製のツチで、藁を叩いて軟らかくして縄や「むしろ」を綯う前作業などに使った。

 

てんころばし・
テンコロバシ・
天狐ころばし

岡山では比較的ポピュラーだった妖怪。

個人的には天狐(てんこ)と「てんころ」の語呂合わせと思う。
多分、坂道などで「てんころ」が勝手に動くのを何物かが動かしているのだろうと。

岡山のキツネは、この他にも「宙狐(ちゅーこ --- 狐火)」

てんごろやすい・てんごろやしー

備前下津井の方言で「簡単」とい意味。

 

てんばさー

「でたらめな・きちんと整理されていない」の意。名詞形は「てんば」。
アクセントは「てん」にある。

慣れていない人が田植えをしたりすると右のように言われた。
本来、きちんと並んでいなければならない物がそうなっていない場合に使われた。

●おしとやかでない女性をさす「おてんば」と語源は同じだろう。

(1) なょーてんばさーにうえてしもーて(【田植えの時】苗をデタラメに植えてしまってからに)。

(2) かみがてんばさーじゃが(【お前】髪がバサバサに乱れているぞ)。

(3) なにゅーてんばばーいょーりゃー(なにを出鱈目ばかり言ってるの)。

てんまる

鞠の意。
アクセントは無し。

てんまるをよーつきょーてじゃ(鞠をつくのが上手だねぇ・よくついていますねぇ)。

とーから・とうから

ずっと前から。

●そねーなこたぁ、とーからしっとったわ(そんな事は以前から知っていたよ)。

とーちか

ザリガニの意。本来トーチカとは塹壕戦の重機関銃座。ザリガニは水田の土手に穴を開けるので困りものだったが、その穴がトーチカを連想させたためだったかと。このザリガニは99%アメリカザリガニの事を意味する。日本ザリガニは体型も小さいためか、水田の土手に穴を開ける事は滅多になかった。

●塩茹でにすると結構うまい。

【動物】

どーちん

どんこ。

【魚類】

とーに

とっくに。

●とーにすんだわ(とっくに済んだよ)。

どうぞこうぞ

どうにかこうにか、なんとか、やっとのことで。

●よーすぅどーぞこーぞしめーた(モミスリがやっと終わった)。

●どーぞこーぞやりょーらー(ぼちぼちですわ/なんとか元気にやってます)。

とうや

神社の祭礼や講の行事にあたってその中心となる人又はその家、と云う説明が辞書などにはある。

確かにその通りの意味なのだが、実際は「とうや」に当たった家が行事の日を決めて周囲の家から手伝いを出してもらい、集まった人々に食事を振る舞い、行事を実行する会合を意味するようになった。普通は語頭に「お」を付けて「おとうや」と云った。

「おとうや」にしろ「とうや」にしろアクセントは「とう」にある。

 

どしゃげる

ぶつかる・衝突する

通りのかどで自転車と、どしゃぎょうーった(通り道の角で自転車と衝突しそうになった)。自動車同士がどしゃげて、へしゃげてしもーとった(自動車同士がぶつかって、つぶれてしまってた)。

とそんぞく

●いきなりな・軽率な、の意。

備前南部では聞かない。旧磐梨郡辺りから和気にかけて聞く。
アクセントは「そん(ぞ)」。言葉の由来などは不祥。

にーさんはとそんぞくなんじゃけー(兄さん【若い男性を意味する二人称】は何も考えずに行動するんだから)。

どたこ

泥足・土足

泥まみれ

どたこのままえんだへあがっちゃーおえんぞ(泥足のままで縁側に上がってはいけません)。

どっちねーと

「どちらなりと」の訛り。

どっちねーとすりゃぁえーが(勝手にせい)。

どってんしゃ

「じーてんしゃ」「じーてん」「じいてん」「どってんしゃ」、果ては「どってん」とも。
最後の「どってん」は単に「どってんはどってん(自転車はどこ)」などと駄洒落のために使われただけです。
いずれも自転車という意味です。

「どてんしゃ」が関西弁だったとは、、、。

どっと

「大した物・素晴らしい物」という意味。
大抵「どっとせん」という言い回しで使われるのみになった。つまり「大した出来じゃない・素晴らしい結果じゃない。」という意味。

どっとした事をしたのう(素晴らしい事をしたねぇ)。

とっぺん

「頂上」の事。「てっぺん」ともいう。「ひょっこりひょうたん島」というTV番組で「てっぺんかけたか」という名前が出ていたので「てっぺん」が標準語だと気付いた。

頂上の他の言い方を尋ねてみたが、みつからず。

山のとっぺん。
ビルのとっぺん。
屋根のとっぺん。

どどくる

「どもる」の意。

アクセントは強いて言えば「く」にある。

●どどくるばーしてなにゅーいよんなら(吃りながら何を言ってるんだ)?

どねん・どねー

「何・如何」の意。

●どねんしょん(何をしているの)?
●どねーなら(調子はどうだい)?
●【慣用句】どねんこねんならん(どうにもこうにもならない ---> どうしようもない)。

とばかす

●途中を省略する「とばす」の意。

●はっきりとしたアクセントは無い。

●はなしゅーとばかすばーしちゃーおえまー(話を省略するばかりしては駄目でしょう)。

どびる

●「うんのびる・死ぬ」の意。

●確か「びる(失敗する)」の最上級だったかと。

●もう半世紀以上も耳にしていないので、 はっきりとしないが、当時の子供連中が 流行らせようとして造った言葉だったかと。

●自然、使い方は遊びの中で使う事が多かったような。
例えばチャンバラでは切られ役は「どびる」事になる。

どびんご

●鳥のヒナ、の意。

鳥類

とらげる

片づける、仕舞う、の意 。
アクセントは「げる」。

●おしこみにてんまるをとらげてーて(押し入れに鞠を仕舞っておいて下さい)。

●「どけーとらげーたんかのぅ」(どこに仕舞ったのかなぁ)?

●県外の人には確実に「取り上げる」と勘違いされる(た)。
「取り上げる」は単に訛るだけで、最初の「と」にアクセントを置き「とりゃーあげる」になる。

とれいる ・
とれーる

仕舞う、の意 。
アクセントは「とれ」。

「とらげる」とよく似ているので一緒の箇所に記述していましたが、ニュアンスがちょっと異なるので分けてみました。家の外にある物を家の中にしまい込む時によく使う。「とりいれる」が変化したものか。

「干し物をとりぇ(れ)ーてーてーよー」(洗濯物を仕舞っておいて下さいね)

とんぎる・
とぎる

「とんがる・とがる」の意。単なる訛りか否かは不明。

あぶねーけぇ、とぎった棒ー振り回すなぁ(危ないから先のとがった棒を振り回してはいけません)。

どんきゅう
どんきゅー

泥鰌、ドジョウ、どじょう。

握ると「キューキュー鳴く」のでドンキューだったかな。

【魚類】

どんけい・どんけー

どのくらい、の意。

こっから駅までどんけーかかる(駅までの所用時間は)?

駅までどんけーある(駅までの距離は)?

どんごろす

黄麻袋。

脱穀後の籾を入れるのが「かます」で「よーす」(籾摺)後の玄米を入れるのが「どんごろす」でした。
「かます」3〜4袋で「どんごろす」1袋【これが一俵】になってました。

とんさき

先端。

●岬のとんさき(岬の先端)。

●鉛筆のとんさきがこげた(鉛筆の芯の先端が折れた)。

どんつき

道の行き止まり。
本当の袋小路でも使うが大抵の場合はT字路の交差点。
道を教える時に使う。
アクセントは「どん」にある。

牛窓辺りまでの備前南東部以東で使われるが、かなり北西部まで通用する。

この道をどんつきで右へ曲がる(道の行き止まりで右へ曲がる)。

どんど

たき火。
アクセントは無し、あるいは最後の「ど」にある。

こねーに、さびー朝にゃ、どんどが一番(こんなに寒い朝にはたき火が一番いい)。

どんなげな

方言とまでは言えない。慣用句。
「どないですか?」と同じ意味。

備中方面では「どがいな・どがーな」と聞く。

釣り人に「どんなげな?(釣れますか?)」

ながや

「納屋」の事。物置小屋とも言う。
アクセントは無し、あるいは「や」にある。

 

なきみそ

泣き虫。古くは全国区で使われていた言葉のよう。
アクセントは「きみ」にある。

 

なしる・
なする・
なしりつける・
なしくる・
なせくる

いずれも、擦り付ける、の意。

鼻なすりつけりょるけー袖がてかるんじゃー(青鼻を擦り付けるから【黒い】袖口が白く光るんだ)。

なまける

湿気る、の意。アクセントは「る」にあり、かたや「怠ける」のアクセントは「まけ」にある。

例文・解説は「めたる」を参照の事。

なめらすじ・
ナメラスジ・
なめらつじ・
ナマメスジ・
なまめすじ

●嘗て神様の通り道だったものが、信心が薄れて、魔物の通り道になったものだとか。

●家などを建ててはいけないとされているよう。岡山の諺に「ナマメスジにゃ家は建てられん」という。

●さる本によれば岡山市内にもあったそうな(そういった事を云う古老がいたとか)。

【同類】丑寅みさき

古い神様が魔物にされるのは日本に限った事では無く耶蘇教などでもあったようだ。

なら

疑問文の最後に接続させて、発言者の恐怖・不安・不審を表現する。意味は「いったい〜だい?」と同じ。
その後、発言者の不安の裏返しから相手を威圧するような言い方に変化した。

どちらかというと不良言葉に近いが、親しい者の間でタメ口に使われる。

●(1) なにゅーいよーんなら(何を言ってるのだい【お化けでも出たのか】)?

●(2) でーなら(何者だい【いきなり殴り掛かってきやしないだろーな】)?

これらを普通に言うと
(1) なにゅーいよー(る)んでー?

(2) でーなんでー?

なるい

坂道の傾斜が緩やかな事(1)。力などがゆるい事(2)。手ぬるい事(3)。

通常「なりー」と云い、「りー」にアクセントがある。

岡山県では備前・美作・備中北部での使用は確認。備中南部での使用は未確認。

●逆に傾斜が急な場合は「さかい」と云う。

●意味が平地に転化した使い方をする場合があるようだ(4)。

(1)なりー山じゃ(傾斜がゆるやかな山だ)。

(2)なりー球ばー投げられなー(【野球で】緩い球ばかり投げないで)。

(3)なにゅーなりー事ばー云よーるん(何を間の抜けた事ばかり云ってるの)。

(4)足がわりーけーなりーとこばー歩くんじゃ(足の具合が悪いので平らな場所を歩きます)。

なんば

トウモロコシ。

 

なんぼうにも

何といっても、まったくもって、ほどの意味。

方言であるかどうかは疑わしいが、この言葉が入ると俄然岡山弁らしくなる。

わしゃーなんぼうにも不思議でおえんのじゃ。

うちゃーなんぼうにも不思議でおえんのよ。

にえぶとり

にわか太り、
急に体がデブになった。

しんちゃん:「にえぶとりじゃのー。」
ねね:「まあ、しんさんたら。うちゃーまだ嫁にもいっとらんのに、いけずやわー。」

にお

背中に荷物を結わえるための紐。自転車の荷台に荷物を結わえる紐。等

アクセントは「お」にある。

●「臍の緒」と同様、「荷の緒」という意味。

におーするのー忘れとったけーしょいこからわりきがまけてしもーた(背中に背負う荷物運び装置にひもをかけるのを忘れていたので、背負っていたまきが落っこちてしまった)。

にがる

腹の痛みを「腹がにがる」と言う。
腹痛専用の言葉。
アクセントは「が」にある。

【参照】いたむ

足の痛みを「足がにがる」とは言わない。
その場合「足がたごーた。」と言う。

にぎり

「にぎりずし」の事。
「にぎりめし」では無い。「にぎりめし」は「むすび」と言う。

 

にだえる

●蒸し暑い、の意。
アクセントは「だえ」にある。

●また、もっぱら暑いのみの場合は「にえる」と云う。

●えろーにでぇーるのー(ひどく蒸し暑いなぁ)。

●畑のすいかがにえてしもーた(すいかが暑さでゆだったようになってしまった)。

●にえとるなー(暑いなー)。

にやす

(1) 煮る、の意。

アクセントは「す」。古語の部類か。湯は「わかす」を使う。自動詞は「にえる」。

(2) 殴る、の意。こちらは備前北部限定。

(1) 芋をにやしょーたら、くぎてしもーてな(芋を煮ていたら焦げてしまってね)。

(2) にやしつけちゃろーか(殴りつけてやろーか)。

にわ

●玄関を入った場所にある土間。
アクセントは「わ」にある。

標準語では「たたき」か。

ぬけぶり

大雨。
天の底が抜けたように降る雨の事。
アクセントは「ぬ」にある。

 

ぬらりひょん

岡山では瀬戸内海に出る妖怪とされる。
タコの妖怪のようなのだが、直接聞いた話もないので詳細不明。

「ぬらり」は「うなぎ・なまず」や「たこ」のようにつかみ所が無い様子。
「ひょん」は「ひょんなげ【奇妙】」から、海の場合なら「奇妙なタコ(海坊主)」という妖怪。

瀬戸内海に出るものではむしろ舟幽霊(ふなゆうれい)の方が有名かと。
「ひしゃく」で船を沈められるか、穴の開いた「ひしゃく」で沈没の難を逃れるかするお話で、
その昔には大変に「おそらかされた」お話でした。

ねぇ・ねー

●「〜では無い」あるいは「備中弁で命令を表す「ねぇ」」と云う意味とは違い、動詞の語尾に付いて、話者の意志あるいは未来を表す。
3人称の場合、勘違いされ易いが、決して傍にいる人に同意を求めているのでは無い。

●英語の未来形を表す「will」と同じ。

●アクセントは動詞の終止形の「る」を弱く言った後で「ねぇ」全体をかなり強く発音する。

二人称での使用ではいろいろな意味があるようなので、まとめてみました。

(1) 単純な未来
(2) 「すればいいでしょう」右の例文はこの例に近い。この使い方が備中方言の「ねー」によく似ている。
(3) 軽度の謙譲語として 「さきーいくねぇー(お先にどうぞ)」
(4) 許可「してもいいよ」。

●(一人称)どべにわーら、切り込むねぇー(泥の中にワラを切って入れなくちゃ)標準語に同じ表現が無いので「なくちゃ」で代用。

●(二人称)くすりゅーやめておえにゃーまたのむねぇー(薬を止めて調子が悪くなればまた飲んだらいい)。

●(三人称)ちーときま、まちょーりゃーバスが来るねぇー(少しの間、待っていればバスが来るでしょう)。
そうだねぇ、などと同意する必要は無い。

●【例えば「する」という動詞ならば、一人称で「わしがするねぇ(私がしなくちゃ。)」、二人称で「おめぇーがするねぇ(お前が - するだろう・ - するがよかろう)。」、となる。】

根元、の意。
アクセントは「ね」にある
木の根元だけとは限らない。

木のねきの本(木の根元に置いてある本) 。
柱のねき。
机のねき。
水屋のねき(食器棚の根元)。

ねずみとり

青大将・アオダイショウ。蛇の名前。

家の守り神なので、天井の節穴から「ねずみとり」が顔を見せても驚くには及ばなかった。

ねぶか

ねぎ、の意。
どうも釈然としません。断面の直径が5mm程度の細ネギは「ねぶか」と云わず、「ネギ」と云いました。

「ねぶか」は断面の直径が10mm以上あるような、太い「ネギ」の事なのです。

タマネギの事も「ネギ」と云いました。

植物

ねぶち(根鞭)

竹の根。
タケノコとは違う。
子供の遊具で、ねぶちを30-40cmばかり切り取って、ムチとか刀代わりにして遊ぶために使った。
よくしなるので、当たるとかなり痛い。

ぶってーねぶちじゃ(太い竹の根だ)。

【注意】「ふとい(太い)」 -> 「ぶっとい」 -> 「ぶってー

ねんごう

「くちごたえ」あるいは「生意気な物言い」

アクセントは「ねん」あるいは「ん」にある。

***

のおなす・のおす

「失う」

●「のおす」は「のうなす」の省略形。アクセントはいずれも「の」にある。
この自動詞が「のうなる/ねえなる」。

【私が】鉛筆ぅのおしてしもーたんじゃ(鉛筆を失ってしまった)。

のーなる・
のうなる・
ねーなる・
ねえなる

いずれも無くなると云う意味。
アクセントは各々「のー」と「ねー」にある。
【参照】みてる

「みてる」が消費して無くなるのに対して「のーなる」は 第三者が盗んで無くなった場合にも使う。

「のうなる」と較べ「ねえなる」はブロークンな表現で子供がよく使った。

のーなるまー(無くならないだろう)。

自転車がのーなってしもーた(自転車が無くなってしまった)。【この場合「みてる」は使わない。】

あの人の旦那ぁ去年のうなってしもうたんじゃ。

のに

「なのに」の「な」を省略してしまう。
アクセントは「の」にある。

以下の意味は同じです。

【い】新品の服なのに汚れた。
【ろ】さらの服のにきちゃのーなった。
【は】さらのにーきちゃのーなった。

のふうぞ

岡山の方言として有名になっているようだが、

「のふうぞ」の使用が確認できたのは備後(広島県)の北部だけであり、備前・備中・美作(岡山県)では未確認。

その意味も「えらっそーする(偉そうにする)」で、あまり良い意味では無い。

 

のぶとい

大胆、荒々しい、の意。

標準語のようでもあるが、一応挙げておく。

●のぶてー声じゃ(荒々しい声だ --- 声に使うのは標準語用法かも)。

●のぶてーことぉよーる(ずうずうしい事、あるいは大胆な事、を言っている)。

のる

(1) 背筋を伸ばす、の意。アクセントは「の」。

(2) 傘に「のる」と使う。傘に入れてもらう、の意。アクセントは「る」。

●九州方面では「傘をかぶる」と言うそうだが、備前では笠は「かぶる」、傘には「のる」と言う。

(1) ちゃんとのって歩かにゃ、腰ぃ痛とーなるんじゃけー(ちゃんと背筋を伸ばして歩かないと、腰が痛くなるんだから)。

(2) 傘にのせてー(傘に入れて)。

のーん

乳児に母親が使う言葉。ミルクなど飲ませる時に「のーん」して、と使う。上を向いて、という意味。

何となく「のる」という言葉から派生した言葉だという気がする。伸びをして軽く顎が上がった状態だろう。

 

のんのんさん

仏様。
幼児語。
アクセントは「の」と「の」にあって次第に弱く発音する。

 

はぁ・はー

「早くも」を意味する副詞。

【例】はぁ着いてしもうた(早くも到着した)。

●「はや(早)」の訛ったものではないかな。

ばー ・ばぁ

(1) ばかり・だけ。
(2) 直後

(1) 食うばーしちゃーおえん(食べるばかりではいけない)。

(2) 食うたばーで寝たら牛になるけー(食べてすぐに寝ると牛になるよ)。

はいとりがみ

蝿取紙と書くとわかる。
それを「はいとりがみ」と読んでいただけの話。
夏でも「はい」が少なくなった昨今では蝿取紙も見かけなくなりました。

蝿のことを「ハエ」とは言いません。
ハエ」というのは淡水魚の一種で関東地方で「オイカワ」と呼ばれる魚の事です。

はさがる

はさまる、の意。

「はさげる」は他動詞形。

ズボンのチャックにパンツがはさがって閉まらんのよ。

はしかゆい・はしかいー

かゆい、の意。くすぐったいような軽度のかゆみ。

通常「ゆ」を抜いて「はしかいー」と発音する。
アクセントは「いー」にある。

ようすの後じゃけー背中がはしかゆーておえん(籾すり作業の後だから背中がちくちくとかゆくていけない)。

はじかい

棒や棚などを両側から支えている物の事で、木に彫られた穴だったり、くさび形の木片だったりする。

アクセントは「はじか」にある。

そこのはじかいをはずして(棒や棚などを取り去る時に行う)。

●ピリピリする痛み 。
アクセントは「し」にある。

【参照】いたむ

●傷がはしる(傷が痛い) 。
ズキズキする痛み等は「はしる」とは言わない。
従って、カラシを(皮膚に)塗ったらはしるのぉ、とは言うが、頭痛がする事を、頭がはしる、などとは言わない。

はじし

はぐき・歯茎の事。
アクセントは「は」にある。

 

はずむ

「はずむ」のが心であれば楽しかろうが、ここで「はずむ」のは膀胱や直腸。つまり便所へ行きたくてしかたが無い状態を指す。

アクセントは「ずむ」あるいは「む」にある。

高速道路のバスの中でビールばー飲みょーると、はずんでも便所にゃすぐに行けんよ。

はぜ

秋に田で稲刈りをした後、稲を1束にして棒に掛ける「稲掛け」に関連する言葉。

●三股の木に支えられた棒(これに稲を掛ける) ---> はぜの木
●稲掛け ---> はぜかけ

コンバインが農作業に導入されて以後は使われない言葉になりました。

はせる

はさげる・はさむ、の意。
単に「はさげる」が訛ったものかも。
アクセントは「せ」にある。

この紙ぃドアにはせてぇーて(この紙をドアにはさんでおいて下さい)。

はたけ

顔面の部分的な肌荒れ。
子供の頬によく出来ていた。
「へも」と違い、真皮まで達する事は無いので跡を残す事は無い。
医学用語は無いかと。

アクセントは無いか、最後の「け」にある。

●はたけができとるがな。やせーをくわんけーじゃ(野菜を食べないからだ)。

はたげる

和服などのすそが風などで開いている事。

 服ぅはたげてどけーいきゃー(服の裾が開くほど急いでどこへ行く)?

はちまん

おてんば、の意。

備中南部で使われる。備中北部では使わない。
備前方面では聞かない。

 

ぱっちん・パッチン

おめこ、の項を参照の事。

 

はっとーじ

●触ると臭い「かめむし」との事。備中から備後にかけての言葉のよう。美作では「がいだ」と云う。

●備前では「かめむし」あるいは「屁ひり虫(へひりむし)」と言っていた。

 

はつめーな

利口な、の意。
もっぱら婆さまが孫を自慢する言葉。
アクセントは「めー」にある。

はつめーな子じゃ(利口な子だ)。

はつる

●ビンタ・平手打ち、の意。
【参照】はりまわす・はりまーす。

「はりまわす」が男女を問わず使用されたのに対し、「はつる」は若者の不良言葉としてよく用いられた。

●個人的には「はつる」を「けずる」の意味で使った、あるいは聞いた記憶は無い。
そのような意味では「こぐ」という言葉を使う。

●アクセントは「つ」にある。

はつったろーか(「いてもーたろか」と同じ意味・用法)。

はな

端、の意。

●はなから(最初から)、という慣用句に残るものは標準語。
アクセントは不定。強調する場合「は」にあり、普通は「な」にあり。

●机のはなーもてー(机の端を持て)。

●じゃーけーはなからはなまでーどんけーある(だから端から端までどのくらい【の長さ】があるか)?

はなずり

右記のような使い方をする。

幼児に対して使う言葉であり、 少し成長すると「けっぱんずく」を使う。

アクセントは無し。この「はな」は「鼻緒」の「はな」ではないかな。

●はなずりをくう(足を引っかけて転んで膝などにケガをする)。

●えーおせのにはなずりなんぞくーもんか(りっぱな大人なんだから【つっかけ等で】転んだりするものか)。

ばば

●うんこ、の意。

アクセントは後ろの「ば」にある。
幼児語。
関西から岡山辺りまで使われるようだ。

 

はばしこい

●すばしこい、の意。これから語頭の「は」がなくなり、二番目が清音化して「はしこい(すばやい)」になった。

 

はぶさる

うつ伏せになる、の意。
最初の「は」を抜いた言葉
「はぶさる」-> 「ふさる」
「ふさる」の方が一般的に使用される。
これは「はぶてる」-> 「ふてる」と云う言葉と同じ構造をしている。
思うに、本来「はぶてる」・「はぶさる」と云っていたものから「は」が取れて、それぞれ「ふてる」・「ふさる」になったのだろう。

アクセントは「はぶさ」乃至「ぶさ」にある。
【参照】はぶてる

●九州方言で「掃く」ことを「はばく・はわく」と云い、山口県下関辺りでも使っている。
●はばく -> ははき -> ほうき 【注意:「ははき」は古語で箒。】
「掃く」という動詞が名詞化して訛ったものが「ほうき」になったようです。

●悪乗りすれば「はばたく」-> 「はたく」になるけれど、この場合はおたがい意味が少しちがったので両者が残った、とも考えられるなぁ。

はぶてる

すねる・ ふてる・立腹。

アクセントは「ぶて」。
備前の方言では無いが、時々聞くので。
【参照】はぶさる

岡山ではあまり聞き慣れない言葉だが備前から西の広島になると「はぶてる・はぶたれる」と云う。広島方言

はま

二輪・三輪・四輪車の地面と接触して回転する部分。車輪・タイヤを意味する。
アクセントは「は」にある。

例文は「ひーる」を参照の事。

はみ

●マムシ(毒蛇)の意 。
アクセントは「み」にある。

●美作地方では「くちはみ・くちゃめ」という。

  

はらあたり

●腹痛ないし下痢をきたす疾患の総称 。

子供はよーはらあたりゅーする(子供はよく腹痛を訴える)。「子供はよーはらーめぐ」は同じ意味。もっとも下痢が主体の場合は「子供はよーはらさげょーする」。

はらいばり

●腹が膨らんだ状態 。ほとんど『はらあたり』と同義語として使われた。

はらいばりゅーしょーんか(腹が痛いのか)?

はりまわす
はりまーす

●はりまーす・はりまわす(平手打ち)
●ぶちまーす・ぶちまわす(拳で殴る)

●【系】ぶちくらわす(子供用語。あまりに下品なので学校で使用が禁止された)。
●【参照】はつる

●余談だが「どしゃげる」も下品とされ、学校で使用禁止になったとか。

ばんがた

夕方 。

「ばんげ」は古い言葉になる。
「ゆうげ」が近年流行っているよう。

個人的な感覚では、「ばんげ」--->「ばんがた」--->「ゆうげ」--->「ゆうがた」と新しくなる。

●ばんがたになりゃー冷え込む(夕方になると冷え込む)。

●ばんげになりゃー冷え込むねぇー(夕方になれば冷え込むだろう)。

ひこずる

引きずる、の意。

西日本方面ではかなり広く使われている。しかし関東地方では通じない。

 

ひーご・ひいご

つばめ、の意。

【鳥類】

びーび・ビービ

虫のカナブン。幼児語。

【昆虫】

ひーる・
ひぃる・
ひいる

【水面などを】跳ねながら滑る、の意。
水面以外にも地面などでも使われた。
アクセントは、靴のハイヒールの「ヒール」と同じで、ヒーに置く。

「跳ねる」の意味でウサギやカエルが「ひーる」と使う用例は知らない。

時として名詞として使い「蛭」の意味を表す。
この場合のアクセントは「ーる」に置く。

●【河原で小石を投げて遊ぶ水切りは】よく「ひーる」石を選ばんと跳ばんよ。

●くるまのはまがひーりょーりゃせんか(自動車の車輪【タイヤ】が【上下に揺れながら】滑ってないかい)?

ひじゃーから・ひじゃから

だから、の意。

アクセントは「じゃ」にある。
「ほじゃから・へじゃから」とも、さらに省略して「じゃから」とも言う。
「ひじゃから」の場合アクセントが「ひ」にある場合がある。それを右記に示す。

ひじゃからゆーたろーが(だから言ったでないの)。

ひじゃーけど・ひじゃけど

だけど、の意。

アクセントは「じゃ」にある。
「ほじゃけど・へじゃけど」とも、さらに省略して「じゃけど」とも言う。

個人的な感想だが「ひじゃけど」「へじゃけど」「ほじゃけど」「じゃけど」「だけど」と変化したような気がする。

ひじゃーけど間に合うまぁ(だけど間に合わないでしょう)。

びしょ

水に濡れた様。
アクセントは「び」にある。
他にも

●びしょびしょ
●びしょんこ
●びしょこ
●びしょこた
●びちょ

にわか雨に降られてびしょになった(にわか雨に降られて濡れてしまった)。

ひすね

●いぼ。医学用語では尋常性疣贅の事でウィルス感染症の一つ。

●アクセントは「ひ」にある。
●分布域は「ひずらしい」と重なるようで、主に備中から備後の中国山地で使われる。
未確認ながら、場所によっては「ひしね」ともいうようだ。
備前の方言では無い。

 

ひずらしい・ひづらしい

まぶしい。
古くは全国的に使われていた言葉のよう。
備前方面では聞いた事が無い。
備中の山間部では現役の言葉。

 

ひちゃげる

平らになる・つぶれる、変形する、という意味。
アクセントは「ちゃげる」にある
「へちゃげる」とも言う。

四角にひちゃげたスイカがあるんじゃてー(四角形に変形したスイカがあるんだとさ)。

ひっさ

長い間
アクセントは「ひっ」にある。
ひっさ事、ひっさり、ひっさり事、とも言う。
備中の人は「ながしゅう・ながしゅー」などと言うようだ。

●ひっさ入院しとったんよ(長い間入院していたのよ)。

●ひっさりぶり/ひっさ事ぶり(いずれも「久しぶり」という挨拶)。

ひっちゃぐ

●つぶす、の意。
アクセントは「ちゃぐ」にある。
●自動詞として「ひっちゃげる」という言い方もあるが、
「ひしゃげる・へしゃげる」と言う方が普通。
●この系の言い方は他にも多数あり、

ひっちらかす(取り散らかす)、
ひっちゃぶく(全国的に普通に使われているかと。破る、の強調形)、
ひっぱたく、
ひっぺがす。

かんからをひっちゃぐばーしても、かたづけにこまらー(空き缶をつぶすばかりしても、後片づけに困るよ)。

ひっちらかすばーして、とらげられんのかのー(散らかすばかりで、片づけができないのかなぁ)。

ひっつきもち

●犬などの動物の毛にくっつく植物の実。
備前では大抵
(1) オナモミ
(2) ヌスビトハギ

のいずれかだった。オナモミは河原のような場所によく生えており、秋になるとその実をぶつけあって遊んだ。

植物

ひなえる

●委縮する・力が入らないの意。
アクセントは「なえ」乃至「なえる」にある。

●これも「はぶさる」「はぶてる」と同様に、最初の「ひ」が欠落してゆく言葉なのだろう。
最初の「ひ」を除いてみれば、意味がよく分かるかと。

●なごー水ぅやらんかったけぇ花がひなえてしもーたが(長く水をやらなかったから花がしおれてしまったよ)。

●手がひなえる(手が麻痺する)。

●なごぅおっちんしとったけぇ足がひなえてしもーたか(長く座っていたから足がマヒしてしまったか)。

ひねきる

つねる。ほぼ女性専用動詞。
アクセントは「き」乃至「きる」。
「ひね」は回す、という意味の「ひねる」から。
「つねきる」とも言う。

  

ひねくる

●いじり回す。同じ、いじる、にしても「せせる」のは物を壊したりする方向、「ひねくる」のは物を「作る」あるいは「直す」方向。
【参照】せせる

ろくろを回して土をひねくる。壊れたラヂオをひねくってもなおりゃーせん。

ひねりだし

チューブを押さえて内容を出すようにした製品。

例えば、歯磨き、軟膏、チューブ入りチョコレート、等。

せなーかいーときゃ、ひねりだしゅーぬりゃーえー(背中が痒い時には軟膏を塗ればいい)。

ひりつく

水分が無くなってくっつく事。

アクセントは「ひ」にある。
なお「ヒリヒリする」と云う意味ならアクセントは「りつく」にある。

●のどがかわぇーて舌がひりつく(のどが渇いて舌が口腔にくっつく)。

●【チャーハンを作りながら】めしぃかきまぜんとかんとすぐにひりつくけぇのう(コメを掻き混ぜていないとすぐにコメが下のフライパンにくっつくからなぁ)。

ひりつける

虫が卵を「産み付ける」事。

アクセントは「ひ」にある。

蝶が卵をキャベツにひりつけとる(産み付けている)。

びる

●「びり(最下位)」を転化させて造った言葉のようだ。
あるいは、その逆で「びる」--->「びり」だったのかもしれない。
この場合、最後の事を「尻」と云うので、そこからの連想かもしれない。
くじ引きで「スカ」を引いたり、
物事に失敗したりする場合に使われた。

●同様に当時造られた言葉には「へこる(期待外れの結果でがっかりしている様子)」
「へのけ(仲間はずれ)にする」
「へこさか(逆さま ---- これはかなりのヒット作)」
がある。

一寸見れば分かるように「へ」が付く言葉が多いですね。
近年は東京方言では「みたく(見たい ? --- 意味不明)」「なにげに(なにげ無く、から無くを消去して、意図的に、わざと、という意味)などあるようですが、地方での新語はほとんど無くなったようです。

当時の学童言葉で符牒かと。
大人は使っていなかった。
用法は学校関係に多かった。
●試験にびったゆーてへこってばーじゃおえまーが(試験に落ちたからといってがっかりしてばかりでは駄目じゃないか)。

ひょろどう

足下がふらつく

そねーなとこでひょろどーとったら川にはまるぞ(そんな場所でふらついていたら川に落ちるぞ)。

ひょんなげな

変な、の意。

備中〜備後の方では「いなげな」と言うが「ひょんなげな」という言い方もあったようだ。
美作の方では「へちげな」と言う。

ひょんなげな事ばー云われなー(変な事ばかり云わないで)。

ひんがらめ

斜視、の意。

全国的な広がりがある言葉のようなので今まで書かなかったが、一応挙げておく。

 

ふーまん

●おおばんやき(昭和40年代中頃に最初に聞いた)。
●おたけまんじゅう(昭和50年代中頃に最初に聞いた)。
●いまがわやき(書物の噂です、今だに見たことは無いので嘘かも)。

確か「夫婦饅頭」の短縮形だったはず。
値段が高くて一日のおこずかいでは買えなかった、、、。

ふう

世間体

ふうがわりー【ふうが、わりー】(世間体が悪い - 村の皆様に対して申し訳が立たない)。

ふくふく・フクフク

幸福感を表現する言葉ではない。
腹満感を表現する言葉。
【注意:満腹感と間違えない事】

腹がふくふくするけぇトイレへ行てくらぁ(おなかが張るのでトイレまで)。

ぶげんしゃ(分限者)

●本来、田畑を沢山所有している者の意であろう、転じて、金持ち 。

●井原西鶴によれば「ぶげんしゃ」の上を「ちょうじゃ(長者)」と呼び、両者の境目には明確な定義があるとの事。

あそこは、ぶげんしゃじゃ(あの家はお金持ちだ) けぇなぁ。

ふご

●竹ないし藁(わら)で編んだ籠。
枯れ草集め等に使った。

重い石は構造上「ふご」では運べない。
藁フゴは三度笠をさかしなにした形にて、四ヶ所に縄を通して天秤棒に掛けられるようなっている。

【農業】

ふすもる

● (煙が)こもる。

けむりがふすもりょーるけぇまどぉあけてー(煙がこもって来たから窓を開けて下さい)。

ぶち

●備前では「ぶち」というと
「ぶちまわす」
「ぶちくらわす」
「ぶちめぐ(ぶちこわす)」

などと動詞を修飾する副詞にしか残っていない。
岡山県では県北の美作から西の中国山地で形容詞を修飾する副詞として「ぼっけー」の代わりに「ぶち」を使う。山口県の方へゆくと同様に形容詞の修飾に ごく普通に使用されている。なお動詞の語尾につかう「ちゃ」は「ぶち」と同じ地域で使われる。

今日はぶち暑いーっちゃ。

ふなめし

江戸時代に書かれた書物の中で備前の名物の一つに上げられている。
個人的にはあまりおいしいと思った事はない。
現在では衰微したようで、備前で「ふなめし」は名物ならず。備中方面、高梁川に残るのみ。
ぶに 分け前、という意味。
備中方言。児島・玉野方言。
備前では普通に「分(ぶん)」という。
この前のぶには、つこーてしもーた(前回のぶんは使ってしまった)。

ぶり

(1) 雨
(2) 勢い

(1) おろぶり(小雨)・けぶり(大雨)

(2) ぼっけーぶりばーつきょーても、どーせ川にはまるばーじゃ(【川を飛び越えようと】強く勢いをつけていても、どうせ川に落っこちるだけだよ)。

ぶる

備前の方言では無いが「ぶり」を動詞化したと思われる言葉。備後方面で使われる。漏れる・こぼれる、の意。

バケツから水がぶった(こぼれた)。

ふるう

振り払う。
アクセントは「う」にある。

服のゴミぐれーふるーとけぇ(服に付いたゴミくらい振り落としなさい)。

へーで・
へーから
へてから

それで、それから、の意。「へてから」は古い言い回し。
アクセントは「へ」にある。

へーで、へーで、へーからですんだ(相手に物事の説明をしたくない時の子供用常套句。おせは使わん。)。それでね、それでね、それからでお終い。 

へぇと・
へえと
へいと

●「乞食」と「目の周りの吹き出物」の二種類の意味がある 。

●アクセントは「へ」にある。

●「ものもらい」と云う言葉と同じ。
●標準語では「ほいと」と云うようです。

●へえとみてーな格好すな、ふうがわりー(乞食のような格好するな、かっこうが悪いぞ)。
●へえとができて、いてーがぁ(目に吹き出物ができて痛い)。

●麦粒腫に限って云えば、他にも、「めべぇと」・「めいぼ」などという言い方があったかと。

べか・ベカ

小さなイカで「ヒイカ」の事。
アクセントは「べ」にある。

【備前南部では「べーか」という風が一般的】

へこさか

逆さま、の意。
アクセントは「こ」にある。
備前ではあまり使われない。
主に備中から備後にかけて使われた。

 

へしゃぐ・へしゃげる

つぶす・つぶれる、の意。
アクセントは無い。
「ひしゃぐ・ひしゃげる」とも言う。

 

へずる
へづる

減らす。上前をはねる。へつる、と云う言い方はあまりしない。
アクセントは無い。

給料が税金でへずられるばーする(給料が税金で減らされるばかり)。

へた

(1) 食パンの耳 ---> つまり端、の意。「パンのへた」と言う。
(2) 牛乳瓶のフタ ---> 「牛乳瓶のへた」と言う。
(3) 柿の実についているガク。これは標準語でしょう。

アクセントはいずれも「た」にある。

(3) の柿の「へた」は煎じて服用すると「しゃっくり」に効果があるとの噂。
「しゃっくり」に対する医学的治療は無いので、此の事ユメユメおろそかにめさるな。

 べた

地面。
アクセントは「べ」にある。

べたで話さんでも、おえへあげ(agoe?)ーてぇ(土間で話しないで、座敷へ上がって下さい)【注:「げ」と「ご」の中間音、ドイツ語のoウムラウトの発音になる。ちょうどゲーテと同じ。】

へたる

(1)疲れ果てて、座り込む事。

(2)電池とか車のタイヤなどが消耗して今にも使えなくなりそうな状態。

(1)ずーっと道ばたぇへたりこんでぇーてもおえまー(いつまでも道傍で座りこんでいても駄目だろう)。

(2)タイヤがへたってしもーとるけー交換せにゃー(タイヤがすり減ってしまっているので交換しないと)。

へちゃげる

平らになる・つぶれる、という意味。
アクセントは「ちゃげる」にある
「ひちゃげる」とも言う。

蛙が道ばたでへちゃげとったぞな(蛙が道で【車に轢かれて】潰されてたよ)。

べったらこ・
べっちゃらこ

ぺちゃんこ・平らになる、の意。
アクセントは「べっ」にある。

●餅がべったらこになる(餅がべちゃんこになる)。

べっとこ、
べと、
どべ

●最後、最下位、の意 。

●アクセントはそれぞれ「べっ」、「べ」、「ど」と最初の語にある。
ただし、泥の意味の「どべ」のアクセントは「べ」にある。

●べっとこ --> べと --> どべ、

と変化したものだろう。
●これらの内、「どべ」は「どろ」と同じ意味を持つ。

●「げっとこ」は悪ガキ連中が「べっとこ」から仲間内用に創作した言葉。大人は誰も使わず。

●運動会じゃ、いっつもべっとこ(いつもビリ)。
●どべの中を探してもどぜうはおらん(泥の中を探してもドジョウはいない)。
● どべにわーら、切り込むねぇー(泥の中にワラを切って入れよう)。

べっぴん

方言とまで言えるのかどうかは不明ながら、一応ここに挙げておく。美人の意。

じょうちゃんはべっぴんさんやなぁ(【女の子供に対して】君は奇麗だねぇ)。

蛇足ながら、女子の二人称が「じょうちゃん」で、男子の二人称は「ぼく」と言う。

へばる

(1)【トイレの中などで】りきむ。
アクセントは「ば」あるいは「ばる」にある。
「りきむ」という意味では「いばる」も同様の意味で使う。

(2) 疲れ切る。標準語だと思う。この意味で備前では「へたる」と「へたばる」を使う。

(3) ゲル状の物体がくっつく事。多分「へばりつく」の短縮形。聞いて意味は分かるが、備前で聞くことは無かったと思う。

●いずれにしても備前での標準的な意味は(1)。

(1) バリュームちゅうなートイレでへばってもらくにゃーでんなぁ。

へも

●顔面に多発する丘疹を指すもののよう。
単発性の「にきび」や「吹き出物」では無いとの事。
尋常性狼瘡の事ではないかと思われる。

●アクセントは「へ」にある。

へもができて顔にあばたがよーのこっとった(顔面に多発性の吹き出物が出来て【治った】跡のあばたが残った人がよくいたものだ)。

へん・変

この場合は「怪異」ほどの意味。
ほぼ右のような文脈で使用される。

【肝試しを前にして】何のへんがありゃー(こわくないぞー、平気だぞー)。「へともねー」とも言う。

へんこつ

頑固な。「へんくつ」とはあまり云わない。備前方面では「へんこつ」が一般的だが、備中方面では「こうじく」と云うようだ。

へんこつなやつじゃ(頑固者)。

ほーかす

そのまま放置しておく。ほったらかす、に近い意味合いだったかと。
アクセントは「ほー」にある。
かなり古い言い方で今では使っている人はいないかも。
この言葉が使われた当時、家の外に捨てるようなゴミは無かったため「ゴミを捨てる」意味で「ほーかす」とは使わなかったと思う。
現代関西弁の「ほかす・ほる」とは違う。
これは説明が難しい。例えば、土葬で死体を埋めてしまうのを「ほーかす」と使うが、関西弁の「ほかす」にそんな使い方は無いと思う。

そもそも、ゴミは「しろく」ものであっても「ほーかす」ものでは無かった。
標準形式は「ほーかる」のようだが、そちらは聞いた覚えが無い。

そんなもん持って帰らんでも、ほーかしときゃえーんじゃ。

ほーる

投げる。同様の意味で「ほーり投げる(投げ投げる)」と言う場合がある。
アクセントは「ほー」にある。

「ほーる」には「捨てる」という意味は無い。

ほうず・ほーず

際限、の意で「ほーずもない」という使い方をする。

アクセントは「ほー」にある。

●ほーずもねぇーことばーよーる(際限も無い事【途方もない事】ばかり言っている)。

これは次のように言い換えられる。
●のほーずなことばーよーる。

ぼうずり

亀の子タワシに三十センチばかりの長さの竹の柄がついた便器磨きの道具。

ぼうずりの写真
柄がプラスティックです。

ぼうち・ぼおち

●一説にいう。山中の境界に傍示(ぼーじ)を建てたので、それが「ぼうち」となった。

●また一説にいう。「坊地」と記し「村の境界地」を意味する。

いずれにしろ「人があまり行かない場所」ではある。

【個人的には「ぼう」のみで「村外れの境界地」といった意味ではなかろうかと。
だから「ぼうのくち」は長く伸びた境界地の端っこになるか。】

転じて、遠方・他国の事を意味するようになった。
岡山の備中から広島の備後にかけて使われるようだ(*4)。

●備前では聞いた事がない。
方言としては子供に対して使う言葉です。
【例】これぼうちの(これは他人のものよ)。
以下は妄想です。

一般庶民の墓は江戸時代以前には無く、江戸時代の檀家制度とともに墓ができたと。
墓ができる以前には人が死ぬと「ぼうち」に放置された。
それが訛って、墓の成立とともに、「ぼち」になったとか。

ぼうりょう・ボウリョウ

美作地方の古い方言で「蓑笠」の事。
「もうりょう(魍魎)」に似ている言葉なので面白い。

薄暗い土間の柱に蓑笠が掛けられているのをみれば、それなりの気分が味わえるのかもしれない。

ほかる

体が暖まる。「火照る」。自動詞のみ。
アクセントは「か」にある。

同じ暖まるにしても外部からでは無く、体の内側から暖まる場合に使う。
外部から暑くなる場合には「にだえる(7月)」「むせる(6月)」「にえる(8月)」などの言葉を使う。

もっとも西の備中になると外部から暑くなる場合に「ほかる」を使うようだ。

●【冬場で寒く暖房にも事欠く時】はしりゃーほかってええよ(走れば体が暖まっていいよ)。

●おなごがそばーとーっただけのにーかおーほかっとるのう(女性が傍を通っただけなのに顔が真っ赤になっとるのう)。

ほき

●保木あるいは歩危と書く事が多い。
古語としては「崖」との説明。
単なる崖でなく 「険しい崖が川に迫り、そこを通っている道がある場所」を指す。古来より崖崩れの危険があり、そのような場所に家を建てると危ない、あるいは 交通の難所だという事を示すために地名をつけた。

言葉としては、美作地方に残されているとの噂なのだが。
備前の方では、言葉としては確認できないながら、地名に複数の例が確認できる。
アクセントは「ほ」にある。

●JR山陽本線で東へゆくと 吉井川の鉄橋を渡る事になる。鉄橋北側の吉井川西岸を保木という。

ほけ

湯気。あくまで暖かさを伴ったものなので、霧やもやをほけとは云わない。
アクセントは「ほ」にある。

●(冬の寒い日に息をはくと)ほけが出るなぁ。

●めしが炊き上がってくれゃーほけが出てくるけー(ご飯が炊き上がってくれば【お釜から】湯気が出てくるからね)。

ほぜる

何かを掘り出す、の意。
アクセントは「ぜ」にある。

●鼻・耳の孔のゴミをほぜる。

●【火鉢の】へぇから火をほぜぇてつけぇ(【炭火が灰に隠れてしまったので】灰から火を掘り出して下さい)。

ほだ

焚き付け用の細い木。椎茸栽培に使うような太い木ではない。
アクセントは「だ」にある。

【タバコに火をつけるために】火のついたほだをとってん(火のついた細い木を取って下さい)。

ほーだま

ほっぺた
アクセントは無い。

「くちる」を参照の事。

ほたえる

●喜び騒ぐ、の意。

出典は忘れたが、「ほ」+「絶える」で「ほ」は魂という意味。つまり魂がつぶれそうになる程の喜びを表現しているのだとか。

久しぶりに帰ってきた御主人に飼い犬がまぶれつく様子を表現する言葉。

犬がほてぇーとるがん。

ほたほた

皮膚のたるみ。たるんでプリンとした物。
アクセントは無し。

例えば「お腹のたるみ・ほっぺたのたるみ・二の腕のたるみ」等。

●おなかーほたほたじゃけーメタボをしんぺーせんとのぅ(お腹がたるんでいるから成人病を心配しないと)。

ぽち・ポチ

犬の名前ではない。服のボタンの事。
アクセントは「ぽ」にある。

服のポチが取れとるねぇ。

ぼっけぇ・
ぼっけー・
ぼっこう

●大変に、ひどい、すごい、偉い、の意、
【類】でーれー・もんげー。
アクセントは不定。例えば「ぼっけぇ」では「ぼっ」あるいは「けぇ」の一方にアクセントを置く。どちらのアクセントでも使う。

●ぼっこう < ぼっけえ < でーれー < もんげー。感覚的にはこのようなものではないのかな。

●「ぼっけえ」は形容詞・副詞として使うが、「ぼっこう」は副詞だけ。

●この系に「ぼーれー」がある。
これは「ぼっけー」と「でーれー」を合成した言葉で「流行らそう」としたものの不発だった。

●ぼっけえやつじゃ(すごい奴だ) 。【注意:「ぼっこうやつ」とは言わない】

ほっちらかす

●放置する・途中で投げ出す。
●アクセントは「ほっ」にある。
●「ほっぽる」と同じ。
●よく似た「ひっちらかす」は「取り散らかす」の意。

てごーをほっちらかしたままーどけーいたんけーの(手伝いもせずに、どこへ行ったのかいな)。

ほてる

●死ぬ。
●多少ぞんざいな言い方なので、死者の親族は使わない。
●墓掘りの若衆などが使った。
アクセントは「る」にある。

●標準語の「火照る」という言葉の代わりに「ほかる」を使っていた。もっとも「火照る」のアクセントは「て」なので簡単に区別はついた。

以下は想像です。「ほたえる」が変化して「ほてる」になった。魂がどこかに飛んでしまうという意味では同じですから。

えーやつじゃったにーほてっしもーて(いい人だったのに亡くなってしまって)。

えー人じゃったにーのうなってしまわれて【丁寧!】

ほとびる

「水に浸かってふやける」の意。
アクセントは無いか、「びる」にある。
これは自動詞で、他動詞は「ほとびらかす」。

●こめょーほとびるまで水にかしてーて(米がふやけるまで水につけておいて下さい)。

ぼとぼと・
ぼつぼつ・
ぼちぼち

ゆっくり・そろそろ。

ぼとぼと(ゆっくり)歩こう。
ぼつぼつ(そろそろ)仕事を始めよう。
よう釣れとるんかな?ぼつぼつじゃな。

ほどよう

●「ほどよく」では無く「すっかり」の意。
●アクセントは「よう」にある。
この言葉の後ろには大抵の場合、不幸な出来事が続く。
【参照】「あんばよう」と使い方は同じ。

【例】ほどようみててしもーた(すっかり無くなってしまった)。

ぼーれー

ものすごい、ひどく、の意。
アクセントは「れー」。
「ぼっけー」を変化させて創った言葉かと。つまり「ぼっけー」よりももっと程度が激しいという意味。
相当に古い言い方で、しかも子供が符牒用に創った言葉だろう。だからオトナは誰も使わなかった。

このバットはぼーれー高かったんぞな(もの凄っく値段が高かった)。

ほろせ
ホロセ

皮疹 。
アクセントは無い。
確認したわけでは無いが、赤い小皮疹を「ほろせ」と言う。
赤い大皮疹を「ほろせ」と言うのか「こっぱん」と言うのかは不明。

例えば、虫刺され、風疹・麻疹等の小皮疹 をほろせと云う。

ほ(んま)じゃのう

本当ですねえ。

括弧内は省く亊が多い、あるいは、最初の、ほ、まで省く亊もある。じゃー・じゃーじゃー(そう・そうそう)。

ほん

「はい」英語で"Yes."の意。
アクセントは「ほ」にある。

語尾を揚げて「ほん?」と使うと「えっ?」という意味になる。

これと同じ使い方をするのは「おん・ふん・うん」があるが、後の二者は共通語だと思う。

(1)「きにょーごっとんがでたんじゃてー(昨日泥棒があったんだってねぇ)。」

「おん(えっ)? そねーなこたーなかろー(そんな事実はなかっただろう)?」

「ほん(そう)。てんごじゃ(うそじゃ)。」

ほん

本当に、という意味の副詞で後に来る語句を強調する。特定の動詞や名詞に接続し慣用句的に使われる。
アクセントは「ほ」にある。

(1) うちゃーあんたがほん好きじゃ(大好きです)。

(2) ほん、こねーだ(つい先日)/ほん、この先に(ちょっと、この先に)

ほんこ

本番。
アクセントは「ほ」にある。
子供が使う言葉で、じゃんけん等の勝負事で使った。
また本番では無く、これは練習だからという意味で「じゃらこ」と言った。

 

ぼんてん

帽子の先に丸いものがついていれば、それを「ぼんてん」と呼ぶ。

また、竹製の耳かき棒の後ろにある丸い綿毛も「ぼんてん」だね。

アクセントは無い。

確かカムイ伝という漫画の中に 、長い丸太の先端に御幣や白い玉を付けて引きずり廻す秋祭りが描かれていたような。それを「(梵天)ぼんてん」と云っていたかと。
だからこれは昔の標準語で、木の先などに丸い玉をつけた縁起物を指すものと思っていた。

ほんま

本当、の意。

関西弁ではあるのだが、備前では50年以上前から使われていたので岡山弁と言っても差し支えないだろう。

 

まー

推量を表す助詞(否定推量)

●「まー」に「ぜー」を後置して意味を強める。

(1) そねーなこたー、なかるまー(そんな亊は無いだろう)。

(2) あるまー(ないだろう)。

(3) おるまーぜー(居ないだろうよ【ちゃんと知ってんだから】)。

まえる

●熱い液体をぬるくする 。差し水をする。
●アクセントは無いか、「る」にある。
備前訛りでは「めーる」となる。
【参照】うめる

●茶ぁまえてー(【熱い】お茶に【水を入れて】さまして下さい)。

● 風呂ぉまえてー(風呂ぉめーてー)。

まくう

●「巻く」の意。類語【「まくいつく・まくゐつく(巻き付く)」、「まくいあげる・まくゐあげる(巻き上げる)」等】

アクセントは「くう」。

●むすびにゃー海苔をまくうんがええんじゃ(握り飯には味付け海苔を巻くのがいい)。

●スカートを風がまくいあげよーたぞな(スカートが風でめくれていた)。

まくばる

均等に(分ける・配置する)。
アクセントは「くば」あるいは「くばる」にある。

【田植えで稲を植えるには】もうちーとまくばってうえにゃーおえんが(あまり乱雑に苗を植えないように)。【子供にお菓子を与えて】まくばって分けてーよ(みんな同じように分けるんですよ)。

まける

「こぼれる」の 意。
●「まる」 と中央の「け」を強く発音する。
なお「【漆に】かぶれる」という意味の場合は「る」にアクセントを置く。

他動詞は「まかす」。
●「まける」が一度にどっと液体がこぼれるのに対して「うだる」はダラダラと液体が垂れる様。
●広島方面では「ぶる(こぼれる)」という。

【参照】かやす

●バケツの水がまけてしもうた(バケツの水がこぼれてしまった) 。
● バケツの水をまかしてしもうた(バケツの水を【誤って】こぼしてしまった)。
●バケツの水をまいた(バケツの水を【意図して】こぼした)。
●バケツの底から水がうだった(バケツの底から水が滴り落ちた)。

まつ・松

岡山では嘘をつくと体から生えてくる植物。

岡山の諺に曰「嘘ばーつきょーると尻から松が生えるぞ」。

【植物】

まつご

松の枯葉。

【植物】

まつみどり

松に寄生する植物。宿木(ヤドリギ)の事。その実を口で噛んで鳥モチとする。
アクセントは「つみ」にある。

【植物】

まとう

(1) 人の性質で「(反応が)鈍い」の意。
「またい」というのが本来の表現らしいが岡山訛りで「まてぇ」となり、さらに「まとう」と変化したようだ。
備前では旧岡山市内が本場、少し東に行くと使わないので備中方言が侵入したもののよう。
アクセントは「と」にあるが、時に「ま」にある場合もあるようだ。
意味が転化して「のろま」という意味で使ったりする事があったようだ。

(2) 老人などに使って「気が弱い」の意。

としゅーとりゃーなにゅーするんもまとーなる(老人になると何事をするのもゆっくりとしかできなくなる)(あるいは、気が弱くなって何事もしようとは思わなくなる)。

まなり

作物で二種類の形質を持つもの、あいのこ。
アクセントは無し。
転じて動物にも使われるようになった。混血という意味では無く、男女両方の形質を持つ者という意味。現在では死語でしょう。

 

まばいい・まぶい

●まぶしい。
●普通は訛って、まばゆぃ・まびぃ、と言う。
「まびぃ」の方は明治生まれの人がよう言よーりました。

●アクセントはそれぞれ「ば」「ぶ」にある。

1980年頃に若者言葉で「まぶい」が流行った時には、変なリバイバルもあったもんだと思うておりました。
その時に「まぶい」に「まぶしい程美しい」の意味が加わった。もっともこれはテレビの影響なので全国区の表現。

暖こぅーなりましたなぁ。へぇ、まばゆぅなりました。【春の挨拶】

まひげ

●まぶたの約2-3cm上にある毛を「眉毛(まゆげ)」と言い、
まぶたについている毛を「睫毛(まつげ)」と言うのだと思っている。
●しかし、ずっと以前からそうだったかどうかは薮の中。

●古くは「眉毛」を関東では「まつげ」と言い、関西では「まゆげ」と言ったらしい。
●そうだとすると現代の「睫毛」を昔にはどのように言っていたのだろう?

このヶ所、根拠が確認できず。
物類称呼によれば関西で「まゆげ」は間違いない。
●アクセントは「ひ」にある。

●以下は妄想です。
昔は眉毛も睫毛も一緒にして「眉毛」と書いていた。
備前ではそれを「まつげ」や「まゆげ」とは呼ばず「まひげ」と呼んでいた。
だから「まひげ」とはどこにあるか?との質問に
現代の「眉毛」を指す者と現代の「睫毛」を指す者が半々だったのではないのかな。

●結論としては、昔は「睫毛」を単独に指し示す言葉は無かった、ということになるかな。

●昔の話だが、「ヒゲ」の話が出た折りに、ヒゲには顎髭と口髭がある、との話に、私達一同は異を唱えた。
「まひげ」もあると。
では、まひげとはどこにあるかとの問いに、一同、眉の辺りを指した。
この時、眉毛を指した人と睫毛を指した人が相半ばした。
すると、眉毛はヒゲなのですか?、との質問に、
え、ちがうの?、と一同お互いに顔を見合わせた事がある。

●以上から、備前には、髭は二種類しかなかったが、「ヒゲ」は三種類あったと思って良い。

まひょうしにあわん

「役に立たない。」

仕事の手伝いをさぼっているとよく言われた。

まひょうしにあわんやっちゃー(役に立たない奴だ)。

まぶれる

(1) まとわりつく

(2) 群がる

(1) 犬がまぶれついとるがん(犬がまとわりついているよ)。

(2) 飴にアリンコがまぶれついとる(飴に蟻が群がる)。

まや

●備前では牛小屋の事。
アクセントは「や」にある。
●正確には「牛のまや(馬屋)」と云うが、その省略形。

牛小屋が「まや」とは変なのだが、恐らく牛を飼う以前は馬が飼われていた事が あったのだろう。

 

まん

運、の意。
アクセントは無い。

まんがわりー(運が悪い)

まんが

大きな鉄の爪(30cm程度)が4-5本ついた木を牛に引かせて、鋤で掘り起こした土を細かく砕く道具。

標準語では「かいぐわ」と言う、との書物もあるが、写真等で見る限り馬鍬(うまぐわ)が似ているよう。

【農業】

まんどう ・まんど

お盆の行事。迎え火・送り火。

ぼににゃーまんどぅせにゃーおえん(お盆には迎え火・送り火をしないといけない)。

みさき

●備前では江戸時代(明治時代では無い)の廃仏毀釈運動のあおりで民間信仰が弾圧されたためか、あまり見かけない。
備中では「みさき信仰」が盛んだったようで、梁塵秘抄の中に現れる備中の「艮御崎(うしとらみさき)-- 温羅の事とされている」は有名。
●玉野では田井港南方海上に干潮時のみ姿を現す岩礁で騙されて七人の座頭・瞽女さんが溺れ死にさせられたとの「七人みさき」の話がある(*2)。

 

みずかさ

肌を長く水の中に浸けた後、手指などに出来る「シワシワ」の事。

「水瘡」と書くかと。

●なお、このような「シワシワ」ができる意味で「ほとびる」という動詞を使うことがある。

 

みずかさぐも

うろこ雲。大して意味は無いのですが、懐かしい言葉なので。

他にも「たかかさぐも」もありました。積乱雲だったかな?この「かさ」は多分「笠」でしょう。

みてる

【消費して】無くなる、の意。out of stock.
アクセントは「て」にある。
他県の人には「満てる(いっぱいになる)」と誤解される事が多い。
【類】のーなる

お菓子がみてたから、こうてこい(お菓子が無くなったから、買って来い)

みやすい

備中方言で「簡単」の意。訛って「みやしー」と発音する。simple

●備前では「みやすい」は見るのが簡単という意味になり普通は使わない。
●「簡単」という意味なら備前では「やしー(やすゐ)」という。

●備前南部の下津井では「てんごろやすい・てんごろやしー」となる。
これはひょっとして「てんご+やすい(だましやすい)」という意味からかな。

●やしーことばーいわれな(簡単な事ばかり言わないで、もっと難しい事を言って下さい)。

むぎわらすずめ

ひばり・ヒバリ・雲雀、の意

春、むぎわらの間から飛び立つ鳥は「ひばり」でしたから。

【鳥類】

むさんこ むちゃくちゃ、の意。absurd

備中方言。備前北部の一部で使われる。備中の方では「むさんこう」と表記されているようだ。

「むちゃ」-->「むちゃこ」-->「むちゃんこ」-->「むさんこ」-->「むさんこう」このような変遷があったのではないかな。

同じ意味で「ごた」「ごじゃ」という言葉も使われる。
そねーにむさんこなことしちゃおえんぞな。

むしくし

チクチクとした痛み。

腹がむしくしする。

歯がむしくしする。

むしくれ

虫、の事。この「くれ」というというのは「土くれ」のように塊の意味だろう。

むしくれにも五分の魂。

むせる

煙などに「むせる」のでは無く、蒸し暑い、という意味。
「むせる」は初夏の頃の蒸し暑さの表現で、盛夏の頃の蒸し暑さは「にだえる」を使う。

きょうはむせますなぁ(今日は蒸し暑いですねぇ)。

むちゃこ・めちゃこ

めちゃくちゃ、の意。「むちゃ・むちゃんこ」「めちゃ・めちゃんこ」とも言った。

以下、想像。
「むちゃんこ」--->「むさんこ」

田の畦をむちゃこにしてしもーた。

むつごい

脂濃い・しつこい。料理の味を表現する言葉のようで、香川県辺りの言葉。

近年になって岡山の瀬戸内沿岸に四国から伝播したのかも。

個人的には昔から稀に聞く事はあったのだが、最近まで「残酷な」という意味だと思っていた。

めぐ・
めげる

壊す、壊れる、の意

アクセントはそれぞれ「ぐ」・「げる」にある。

機械をめいだな?しゃーけーど、めーからめげとったよ(機械を壊したな?でも、前から壊れてたよ)

めたる

湿気る、の意。
おおむね現在の瀬戸内市から児島半島にかけて使われる。
瀬戸内市以北の備前市では使われず、代わりに「なまける」が使われる。

アクセントは「た」にある。

(1) 砂糖・塩がめたる、と言う。

(2) このお菓子はなまけとるけー食えん(しけっているので食べられない)。

めばちこ

麦粒腫

関西弁だが、昭和40年頃に岡山まで到達した言葉。この意味で備前では「へえと」と言った。その標準語形は「ほいと」。

 

もぐらもち

もぐら、の意。備前でも岡山市に近いとこの言い方になるが、備前の北と東では「むぐろ」という言い方になるようだ。

アクセントは先頭の「も」。

でーこんがもぐらもちぃに取られるばぁする(大根がもぐらに取られるばかりする)。

もげる

(1) (音程が)外れる。音痴の表現に。

(2) (かさぶたが)外れる、等。

声が、ぼっけー、もげるのー(声がひどく調子外れだな)

もちーと

もう少し、の意。

もちーとはよーあるきょーが(もう少し速く歩けるだろう)?

もとおる

動作が滑らかな様。

近年、関西方面より入った「口が達者」という意味で多用されるようになったもの。

●よう、もとおるのー(よく喋るなぁ)。

●足がもとおらんよーになった(足がうまく動かなくなった)。

もっとで

もう少しで、の意 。

アクセントは「と」にある。

もっとで、ひかりょーった(もう少しで、轢かれる所だった)

もどける

巻が緩む事 。

アクセントは「どけ」にある。固く巻いた縄が緩む、ゼンマイが緩むなどに使う。

他動詞形は「もどく」

●この柱時計はネジがもどけて動かんのじゃ(柱時計はゼンマイが緩んで動かないのだ)。

●縄のもつれょーもどきょーんじゃ(縄のもつれをほどいているんです)。

ものごっつい

ものすごい、ものすごく大きい、の意。

ものごっちーやっちゃなー(ずば抜けた奴だな)

ももける

服にほつれができる・服がケバ立つ、の意。

アクセントは「け」にある。

 

ももた

膝より上の脚部。「もも」の事。

アクセントは「もも」にある。
「ももたぶら」とも言う。

子供が生まれるのは「ももた」の間から、という言い回しがある。
若い人は露骨過ぎる表現のせいか、あまり使わなかったが、ばーさん連中は平気で使っていた。
だから「ももたろう」は「桃太郎」では無く「ももた郎」だったけれど、駄洒落で「桃太郎」になったのだと思っている。

●桃が岡山で有名になったのは明治時代も後半のこと。それまで甘味に乏しかった桃を大久保重五郎という人が改良して苦心の末に甘味の強い白桃を作り出した明治34年以後のこと。と昔の道徳の教科書に書いてあった。

●桃太郎の話はずっと古くからあって江戸時代には中井履軒の【昔昔春秋】等にも桃太郎がある。

もんげー

ものすごい、の意。別の箇所に記述しているが流行語になったのでここにも記載しておく。

 

若い女性専用言葉。備前では言葉の最後が「じゃ」で終わるのが一般的だったが、若い女性の場合はよく「や・やわー」を使った。

 

ーん

「止めた -> やーめた -> やーんぴ」と変化したかと推定される。夕方になって遊びを止める時などに使われた。子供専用言葉。

 

やいと・ゐえと

お灸。
普通「ぃえーと (yeeto) 」と訛る。
アクセントは「ぃえ」にある。

わりーことばーしょーるとやいとーすえるぞ(悪さばかりしているとお灸をするぞ)。

やくに わざと、の意。
アクセントは「く」にある。

備前北部の表現。

わざに」を参照の事。
やくにしんさんな(わざとしないように)。

やげろーしい・
やげろうしい

わずらわしい、の意。
新見(南は高梁辺り迄)〜備後の中国山地にかけて使われる。

やげろーしい奴っちゃ。

やこー

●名詞の後ろについて、その意味を強調する。「なんか」の意。副助詞。

●後ろには否定的な文が接続する事が多い。

●おめーやこーいねー(お前なんか帰れ) 。

●塩や砂糖やこー持ってくな(塩や砂糖なんか持って来るな)。

やすい・やすゐ

簡単、の意 。
アクセントは「や」にある。

備前方言。卑しい、という意味や、「いやし(食いしん坊)」という意味は無い。
「値段が安い」という意味にも使うが、それは文脈や発音の違いで区別する。

発音からすると「やすゐ」と書くのが正しいかと。

そねーな仕事はやすーすまぁ(そんな仕事は簡単に済むよ)。

やす

人を行かせる。
物を移動させる。
アクセントは「す」にある。

●おなごーやすけーよーゆーて(家内を行かせるので、しっかり話をして下さい)。

●とーみゅーながやのねきぃやすけーちーとけーてくれー(唐箕【とおみ --- 農機具の一種】を納屋の側に移動させるので一緒に持ってくれ )。

やたて

婿を迎えた女性の意。「家立て」
アクセントは「たて」にある。

おとこきょーでーがおらんのじゃけー、おなごがやたてをせにゃーのぅ(男兄弟がいないのだから女性が婿を迎えないとねぇ)。

やっちもねー

「らちもない」の強調形かと。「しょうもない・つまらん」の意。
アクセントは「やっ」にある。

 

やちがねー

「やっちもねー」とよく似ている言葉だが、意味は違う。意見が食い違い、いくら議論しても平行線をたどる場合に、このように言う。いくら頑張っても意見の一致をみない、程度の意味になる。らちがあかない。

 

やねこい・やにこい

しつこい、の意。岡山では田舎にわずかに残っているかも。備前では聞かない。備後地方では、まだ現役の言葉。

やねこい男やねー。

やまいぎたない

病気に神経質だ。たいした症状でも無いのだが、それが気になる。

備中玉島の古い言い方。

 

やますずめ

ホオジロ。

【鳥類】

やまなすび

なつはぜ
アクセントは無いか「やまなす」

【植物】

やゑえ・やうぇー 「やわらかい」の意。

アクセントは「うぇー」。
現代表記では「やわい」となるのかな。
備中以西では「やおい」と云う。
山口県で「やおい」を聞いた時には当初意味が分からなかった。
このかきゃーやうぇーのー(この柿は柔らかいなぁ)。

ゆー

(1) 「言う」を「ゆー」と発音する。

(2)「 ゆっくり」

(1) よーゆーた(よく言った)。

(2) ゆーにしょーるとバスに遅れるよ(ゆっくりしているとバスに遅れるよ)。

【遠路の客に】よーきんさった、ゆーにせられー(よく来てくれました。くつろいで下さい)。

ゆーかす

言い聞かせる。
「ゆーてきかす(言って聞かす)」から「てき」が脱落したもので
どちらの言い廻しも使用していました。
アクセントは「ゆー」にある。
【隣の家の窓ガラスを割った子供と一緒に母親が隣家の人に謝りに来て】
よーゆーかしとくけぇこらぇーてつかーせぇ(よく言い聞かせておきますから許してやって下さい)。

ゆぜる

ゆでる、の意。
アクセントは「ぜ」にある。

麺をひっさゆぜょーるとのびるけー(麺を長くゆでていると伸びてしまうんだから)。

ゆだつ

沸騰する。
アクセントは「だ」にある。

さゆがゆだちょーるがな(白湯が沸騰しているから何とかしなさい)。

ゆび

「べにさしゆび」は薬指。

「たかたかゆび」は中指。

 

よーけぇ・ようけえ

数が多い、の意。
他にも「ぎょーさん」「よーさん」などとも言った。

昼にようけぇ食べたぞな(昼飯をたくさん食べました)。

よーさ・
よーさり

夜、の意。
アクセントは「よー」にある。

よーさり、出歩くな、あるいは、よーさに、出歩くな

よーす・
ようす

籾摺(もみすり)の作業。
アクセントは「よー」にある。
備中では「とーす」。

【農業】

よいたんぼ

よっぱらい、の意。
アクセントは「たん」にある。

昭和40年頃まではよく聞いた言葉だった。
最初の「酔い」は判るけれど、後は不祥。個人的には「たんぼ」は「たんぽ」、つまり「ゆば(湯婆)」の事で「ゆたんぽ」のことではないかと思っている。

ようよう

なんとかかんとか、ようやく、やっと

よーよー治った(やっと治った)。

よき

【病気の】影響
【台風の】影響

アクセントは「よ」にある。

●風邪のよきか、めまいがしてのう(風邪のせいかめまいがしてねぇ)。

●台風のよきか、風がつよーなった。

よくぼる

よくばる・欲張る。
アクセントは「ぼる」にある。
「欲どおしい」とは欲張りの意で備前でも聞く。

不当に高額な料金で利益をあげる事を「ぼる」と言うが、「よくぼる」から「よく」を省略したものではなかろうか。

よくぼるばーするけーバチがあたったんじゃ。

よこし

横。アクセントは「し」にある。

 

よざん

余計な、の意

「何を言いましたか?」と尋ねられて、「よざんごとじゃ(どうでもいいことだ)。」と使う。

よす・よせる

【仲間に】入る/入れる
アクセントはそれぞれ「す」「せる」にある。

 

よだつ

これから先にしなければならない事を考えると大変だなと思って出る言葉。いろいろと準備をして、片づけなければならない。わずらわしい。

アクセントは「だ」にある。

●よだつなー(いろいろと準備が必要だな)。

●よだつけー、えーわ(煩わしいから、しなくてもいいよ)。

よばね

ねしょんべん。備前でも南東部の言い方。

アクセントは「よ」にある。

●そねーにみずものばーのみょーりゃーよばねょーしょーぜー(そんなに飲み物ばかり飲んでいては寝小便をするでしょう)。

●よばにょーせまーか(寝小便をしはしないだろうか)。

よぼう ●岡山では備中方言で「液体が垂れる」という意味。

備前では同じ意味なら「うだる」を使う。個人的には「よぼう」を「液体が垂れる」という意味で使った事は無い。

●備前で「よぼう」というと「夜這いする」の意味で使っていた。
そのためか山口県などで「よぼう」を聞く機会が多いと、気恥ずかしくなってしまう。
恐らく、そのために備前では「よぼう」を使わなくなったのかと。
アクセントは「ぼ」にある。「ぼう」にアクセントを置くと「予防」になる。

言葉の適用範囲は「よぼう」よりも「うだる」の方が一般的で広い。「うだる」を参照の事。
わかものしーはちばけてばーでよぼーての事ばー話しょーる(若者連中はふざけてばかりで夜這いの話ばかりしている)。

*古語で人を呼ぶ意味の「よばふ」に「夜這う」とあて字をした物らしい。

よぼり

毎年六月の梅雨時分の夜、増水した川や水田のほとりをカーバイトランプとヤス(三又の銛(もり))を持って歩き廻り、大型の魚を取る遊び。

ランプに魚を集めるのでは無く、出水した水田に流れ込んだ魚を探すもの。

アクセントは「よ」にある。

確か1961年からでしたか、農薬が水田に散布されるようになったのは。それ以後、よぼりは行われなくなりました。

ようぇえ

●標準語なのですが、発音が昔のものなので。
●現代漢字仮名遣いで書くと「弱い」となります。
●これを旧仮名遣いで書くと「よゑえ」になります。
「ゑ」が使えないので「うぇ」となります。
●アクセントは「うぇ」にある。
備前では「ゑ」の発音が保存されています。

●これ以外にも「こゑえ」「やゑえ(柔らかい)」「あゑえ(青い)」などがあります。

 

よる

選ぶ。
アクセントは「よ」にある。
「える」とも言う。

よるばーしょーるけー、えーもんぉさらわれてしまうんじゃ(選ぶばかりしているから良い物を他人に奪われてしまうのだ)。

らく 時間的な余裕がある。
アクセントは「く」にある。
【家を訪ねるのに際して】「楽ですか?(訪問しても時間いいですか?)」

らくな時に肩ぁ揉んでもらうーねー(時間がとれた時に肩を揉んでもらおう)。

らっしもねー

(1) らしくもない。

アクセントは「らっ」にある。

「らしくもない」を格好つけて(不良ぶって)言い始めたもの。
それがいつの間にやら「やっちもねー」と混同されてしまったもの。

(2) 「だらっしもねー(だらしもない)」という言葉から先頭の「だ」が抜け落ちたものという説もある。

らっしもねー格好すな(不格好なマネをするな)。

られー

動詞の後ろについて、命令形となる

云われー(云いなさい)、
せられー(しなさい)、
こられー(来なさい)。

【参照】せぇ
【参照】しんさい

らんちん

ビー玉、あるいはビー玉を使う遊び。
ラムネの壜の中に封入されたビー玉もらんちん。
昭和三十年代の子供の遊びを参照の事。

らんちんしょーえ(ビー玉遊びをしましょう)。

らんとー(らんとう)

正式には蘭塔墓と云い、美作から備前にかけて、戦国時代(元亀年間)から江戸時代(およそ亨保年間)の頃まで流行したお墓の形。豊島石と呼ばれる石で造られた観音開きの扉と上に屋根を乗せた墓石。加工しやすいが、もろい石で、値段も花崗岩よりも安かったとの言い伝え。時代の古い物ほど形が巨大になる傾向がある。時代が下るに連れて小型化し、一般庶民の墓として流行した。初期の物には文字の刻印は無いが、やがて蘭塔の内部に名前(正面)と没年(側面)を記載するようになった。幾つか考えられる理由があるが何故、蘭塔墓が廃れたのかはっきりとしない。時代が質素倹約を旨とする亨保の改革があった故かもしれないが、その頃から蘭塔を潰して単なる中空の六面体として、その上に大きな石柱を立て、その石柱表面に大きな字で故人の名前と没年を刻印する風が見受けられるようになった。

左記は一般論。個人的には、江戸時代も終わりの頃、嘉永年間くらいから蘭塔墓では無く、同じ豊島石で現在のような四角柱の墓石となる物をよく見かけた。

発音が同じでも「卵塔墓」とはまったく別物。
蘭塔墓の形は「蘭」という漢字にそっくりで、さらに語呂合わせもいい事から、本来僧侶の墓の「卵塔墓」をもじって出来たものかと。

りっちんたー

「じゃんけん」をする時のかけ声。つまり「じゃんけんぽん」。

「りっけんたー」とも言っていたかと。

半世紀ほど昔に聞いた、それも数回だけの事なので、どの程度の拡がりを持った言葉なのか不明。
通常は「じゃんけんぽん」と言うので、初めて聞いた時には目が点になった。
その後、「じゃいけん、じゃらすか、いん、じゃん、ぽん」などという言い方も一時的な流行をみせたことがあった。

りんさる

●動詞の後ろに付いて尊敬を表す。
【参考】つけぇ

●きょうりんさる(来ておられる)。
●みょうりんさる(見ていらっしゃる)。
●しょうりんさる(していらっしゃる)。

れんぎ

●すりこぎ、の事。
アクセントは無い。

 

わざに

(1) 備前南部では「わざと」の意。
(2) 備前北部では「わざわざ」の意。

(1) の方は次のような変化があったのだろう。「わざと」 --> 「わざとに」 --> 「わざに」

備前北部では「わざと」という意味では「やくに」と言う事がある。

(1) わざにしょーるとばちがあたろーぜー(ワザとしていると罰が当たるだろう)。

(2) よーこねーなものーわざにもてきてもろーて(よくこんな【立派な】物をわざわざ持って来て下さって【ありがとう】)。

わや・わやく

●むちゃくちゃ、の事。
わやくそ、わやくちゃ、とも言う。

「わやく」は「わや」の古い言い方のようで、備前北部に残る。

わやばーゆーな(無茶を言わないで)。

わるい
わりー

岡山では頭の鈍痛を「頭がわるい」と言い、これを「ズキズキする」頭痛とは区別していたようだ。そして後者の頭痛は「痛い」と表現した。

【参照】いたむ

頭ぁわりーんかぁ(頭が重たいのか)?
ほん、そうじゃ。
そんなら頭痛じゃな?
うんにゃ、頭はいとーねー(いいえ頭は痛くありません)。

んせぇ・んせー

●古い備前の言い方で動詞の連用形について命令を表す。
●比較的新しい命令形は「られー」なのですが。
●稀に聞くかもしれない「つかんせぇ」は例外的に依頼を表す。

●しょいこをおぶっていきんせぇ(しょいこを背負って行きなさい)。
●てごーォしんせぇ(手伝いをしなさい)。
●ぎょうさんたべんせぇ(しっかり食べなさい)。

●否定形は「ぎょうさんたべんさるな。」
●参考のため丁寧語では「ぎょうさん食べてつけぇ(しっかり食べて下さい)。」

んでぇー

例えば標準語で「鳥になりたいんだい。」とは自分の意見を強調している。
それとは異なり、自分の意見を自慢したい場合に動詞の語尾に付ける。
暗に「お前さんは知らんだろうが」という意味になる。
アクセントは「でぇー」にある。

飯ごうでめしぃうむすにゃーこつがあるんでぇー(飯ごうでご飯を炊くにはコツがあるのよ)。



番外の方言

岡山の方言として取り上げられる言葉ではあるが、尋ね歩いても実際に確認できない言葉や、岡山で稀に聞かれる近隣の方言を以下に記す。

方言 意味 用例
あだくれる 落ちる、の意。

未確認(南備中)
***
えずく 嘔吐する、の意。

関西弁。岡山弁では「あげる」と言う。
***
がじる 何かを相手から取る・上前をはねる、の意。
以下の理由でこちらに記述。

どこで聞いたのか思い出せない。
【トランプで】あっ、そのカードがじらせて。
すらんこう がめつい・人情味に欠ける、の意。

未確認(南備中)
***

たちまち

「すぐに」という標準語としての意味では無く「とりあえず」という意味。

近年は引越が多いので岡山市内でも稀に耳にすることがある。広島方言。岡山の方言では無い。

●居酒屋にて「たちまちビール」(とりあえずビール【を下さい】)。

とっぱあ いきなりな、軽率な、の意。
以下の理由でこちらに記述。

未確認(美作)
***
とんぶ 急、の意。
以下の理由でこちらに記述。

どこで聞いたのか思い出せない。
とんぶな話じゃ(急な話だ)
ばんこ ●ひじょうに、の意。

かなり新しい岡山発の方言。40代以上は知らないのぢゃないかな。

***

ひょーたくる ●冷やかす・からかう、の意。

かなり古い岡山の方言のようで、備前では聞いた記憶が無い。
「いらまかす」を参照。
まどう 弁償する。
備前では聞かない。
関西方面から中国地方を経て九州地方まで広範囲に使用された。古語。
***


参考文献
(*1) 岡山県邑久郡方言 岡山民俗叢書 時実黙水 1934年
(*2) 玉野市史続編 昭和47年
(*3) 日本の民俗33 岡山 土井卓治
(*4) 備中町史 民俗編 昭和45年
(*5) 日生町誌 昭和47年